イラストレーターの経費一覧|資料代・機材・家賃・外注費の判断方法

イラストレーターの経費一覧|資料代・機材・家賃・外注費の判断方法

イラストレーターの経費で必ず出てくるのが「資料として買った漫画・映画・ゲームは経費になりますか」という質問です。

答えは「なることもあるし、ならないこともある」です。歯切れが悪く聞こえますが、これは制度が曖昧だからではありません。同じ支出でも、記録の残し方で結論が変わるからです。この記事では、その分かれ目をはっきりさせたうえで、科目別の一覧と、機材の減価償却まで整理します。

目次

資料代の分かれ目は「作品との紐づけ」

必要経費とは、その収入を得るために直接必要だった支出です。資料代の場合、鍵になるのはどの仕事のために買ったかを説明できるかという一点です。

状況扱い
大正期を舞台にした案件のために、時代考証の資料集を買った経費になる。案件名をメモしておく
背景作画の参考にするため、風景写真集を買った経費になる。どの作品に使ったかを残す
キャラのポーズ研究のために格闘ゲームを買い、実際に資料として使った経費になりうる。使った箇所を紐づける
好きな作家の新刊を、いつもどおり買った経費にしない
話題作だから一応買った(仕事では使っていない)経費にしない

「イラストレーターだから、見るものはすべて仕事の糧」という説明は通りません。一方で、記録さえ残していれば、一見趣味に見えるものでも堂々と経費にできます。争いになるのは、たいてい記録がないケースです。

残すべき記録は3つだけ

  1. 買った目的:レシートの余白に「〇〇案件の背景資料」と一言
  2. 使った結果:どの作品のどこに反映されたか(ラフに付箋、作業ログに1行でも十分)
  3. 私用と混ぜない:仕事用と趣味用は、買い方か保管場所を分けておくと説明しやすい

ゲームや映像作品のように、私用でも楽しめるものほど記録の重みが増します。「全部は経費にせず、実際に資料として使ったものだけを拾う」という運用にしておくと、判断が安定します。

科目別の一覧

科目具体例注意点
新聞図書費・資料費資料集、写真集、画集、雑誌、映像作品、資料用のゲーム目的と使用結果を記録する
消耗品費液晶保護フィルム、ペン先、インク、用紙、外付けSSD(10万円未満)10万円以上は資産になる
減価償却費液タブ、PC、iPad、モニター、机(10万円以上)金額で扱いが変わる(後述)
通信費インターネット、スマホ、クラウドストレージ私用部分を按分
地代家賃自宅の作業スペース、アトリエ、コワーキング自宅は按分、専用の場所は全額
水道光熱費電気代(作業時間分)按分。水道・ガスは通常入れない
外注工賃背景・仕上げ・3D素材の外注、アシスタントへの報酬自分が源泉徴収する側になることがある
支払手数料Skeb等の手数料、振込手数料、決済手数料売上は手数料を引く前の総額で計上
旅費交通費打ち合わせ、取材、原画展の視察目的を記録する
研修費講座、ワークショップ、オンラインスクール技術習得の内容を記録
ソフトウェアペイントソフト、フォント、素材サイトの月額年額のサブスクは期間按分の検討も
広告宣伝費ポートフォリオサイト、名刺、展示の出展料

機材は金額で扱いが変わる

1台あたりの金額扱い
10万円未満買った年に全額経費(消耗品費)
10万円以上20万円未満通常の減価償却のほか、一括償却資産として3年均等償却も選べる
20万円以上耐用年数にわたって減価償却(PCは4年)

青色申告をしていれば少額減価償却資産の特例が使えます。基準額は令和8年度税制改正で引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満(それ以前の取得は30万円未満)が対象です。白色申告では使えません。

判定は私用部分を按分する前の購入価格で行います。24万円の液タブを事業割合80%で使うなら、判定は24万円で行い、計算した償却費に80%を掛けます。「按分後が10万円未満だから全額経費」という処理はできません。

本体とペン、スタンドなどを同時に買った場合は、一体として使うものは合計額で判定するのが原則です。金額を10万円未満に収めるために明細を分ける、という処理は通りません。計算方法は別記事で詳しく書きます(関連記事も順次追加します)。

自宅で描いている場合の按分

家賃・電気代・通信費のように生活と共用するものは家事関連費と呼ばれ、業務に必要な部分を記録に基づいて明らかに区分できる場合に限り経費になります(所得税法45条1項1号、所得税法施行令96条)。

  • 面積で按分:作業スペースの面積 ÷ 部屋全体の面積。間取り図に作業机の位置を書き込んで保存
  • 時間で按分:週の作業時間 ÷ 168時間。作業ログやファイルの更新履歴が根拠になる

イラストレーターは作業時間が長く、面積按分より時間按分のほうが実態に合うことが多いです。どちらを選んでもかまいませんが、毎年同じ方法で計算し、根拠を残すことが大事です(関連記事も順次追加します)。

外注したときに気をつけること

背景や仕上げを他の人にお願いした場合、その報酬は外注工賃として経費になります。ただしあなたが源泉徴収をする側になることがあります。個人事業主でも、従業員に給与を支払っていれば源泉徴収義務者にあたります。

また、外注か給与かの区別も問題になります。作業場所や時間を指定し、指揮監督しているなら給与と判断されることがあります。人に頼み始めたら一度整理してください(関連記事も順次追加します)。

経費にならないもの

  • 自分への給料。個人事業では自分に払う給与という概念がありません
  • 所得税・住民税。個人事業税や消費税は経費になりますが、この2つはなりません
  • 健康保険料・国民年金。経費ではなく、社会保険料控除として所得から引きます
  • 洋服・美容。撮影用の衣装など明確な業務用途がなければ通りません
  • 私用部分。按分後の私用分は経費になりません

まとめ

  • 資料代の分かれ目はどの仕事のために買ったかを説明できるか
  • 残す記録は目的・使った結果・私用と混ぜないの3つ
  • 機材は10万円・20万円が分かれ目。青色なら少額特例(令和8年4月1日以後の取得は40万円未満)
  • 金額の判定は按分前の購入価格で行う
  • 外注したら、自分が源泉徴収する側になっていないか確認する

経費の集計と同じくらい面倒なのが、企業案件で引かれた源泉徴収税額を1年分積み上げる作業です。明細行ごとに源泉の有無を切り替えて請求書を発行し、年間の源泉徴収集計まで出せるExcelを用意しています。

請求と入金の記録をまとめる

案件ごとの請求額・源泉徴収・入金状況を整理したい方は、テンプレート一覧から用途に合うものを選べます。

この記事は一般的な情報の提供を目的としています。経費の判断は活動の実態によって変わります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。

参考にした公式情報

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