同人活動やBOOTHの収入を申告していなかった。調べているうちに不安になって、この記事にたどり着いた——という方に向けて書いています。
最初に落ち着いてほしいことが2つあります。期限を過ぎていても申告はできます。そして税務署から指摘される前に自分から申告するほうが、負担は軽くなります。この記事は、その手順だけを淡々と書きます。
なお、源泉徴収されていた人は、申告したら税金が戻ってくることも珍しくありません。「申告していない=必ず追加で払う」ではありません。
手順は4つ
- 何年分、いくらだったかを確定させる
- その年に本当に申告が必要だったかを判定する
- 期限後申告をする
- 納付する(または還付を受ける)
手順1:何年分、いくらかを確定させる
過去の記録を集めます。プラットフォームの履歴は残っていることが多いので、慌てずに1年ずつ拾ってください。
- 各サービスの売上履歴(BOOTH・FANBOX・Skeb・DL販売サイトなど)
- 通帳の入金記録
- 印刷代・イベント参加費・画材などの経費の記録(レシート、クレカ明細、メールの領収書)
- 企業案件がある場合は請求書の控えと、源泉徴収されていた金額
経費の記録を探すのを面倒がらないでください。所得は「収入 − 経費」なので、経費が出てくるほど税額は下がります。レシートがなくても、クレジットカードの明細や通販サイトの購入履歴で支出を示せることがあります。
手順2:本当に申告が必要だったかを判定する
集計してみたら、そもそも申告が不要だった、ということもよくあります。
| その年のあなた | 申告が必要だったライン |
|---|---|
| 会社員・アルバイトで年末調整済み | 創作の所得が20万円超 |
| 給与がない(専業・学生など) | 所得が控除の合計を超えていたら |
判定するのは売上ではなく所得(売上 − 経費)です。売上が50万円でも、印刷代とイベント費で40万円かかっていれば所得は10万円で、会社員なら申告不要だったことになります。
ただし所得税の申告が不要でも、住民税の申告は必要です。20万円ルールは所得税だけの取扱いだからです。所得税の申告が不要だった年については、市区町村に住民税の申告をすることになります(関連記事:同人活動の確定申告はいくらから?)。
手順3:期限後申告をする
やり方は通常の確定申告と同じです。その年分の申告書を作って提出します。e-Taxでも、紙でも提出できます。
- 年ごとに1通ずつ作ります。まとめて1通にはできません
- 使うのはその年分の様式です。控除額や税率は年によって違います
- 複数年ある場合は、古い年から順に作ると混乱しません
どこから手をつけてよいか分からない場合は、資料を持って税務署に相談に行くこともできます。「申告していませんでした」と正直に言って大丈夫です。自分から申告しに来た人として扱われます。
手順4:かかるお金
本来の税金に加えて、次のものがかかることがあります。
| 内容 | |
|---|---|
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対するもの |
| 延滞税 | 納付が遅れた期間に応じてかかる利息にあたるもの |
早く動くほど軽くなる
| いつ申告したか | 無申告加算税 |
|---|---|
| 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告(+一定の要件を満たす) | かからない |
| 税務署の調査の通知を受ける前に、自主的に申告 | 5% |
| 調査の通知を受けた後、または調査で指摘されてから | 税額に応じて10%〜30%に上がる |
差は小さくありません。「まだ何も言われていない」今が、いちばん負担の軽いタイミングです。
期限から1か月以内の場合に無申告加算税がかからないのは、次の要件をすべて満たす場合です。自主的な申告であること、納めるべき税金の全額を法定納期限までに納付していること、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されていないこと、などです。
※ 加算税・延滞税の率は改正されることがあります。具体的な金額は国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。
何年分さかのぼるか
申告していなかった年について、税務署が処分をできる期間は原則として5年です。意図的に隠していたなど悪質と判断される場合は7年になります。
一方、還付を受けるための申告(還付申告)も、翌年1月1日から5年間できます。源泉徴収されていた年があるなら、5年以内なら取り戻せる可能性があります。
還付になるケース
企業からイラストや原稿の依頼を受けていた人は、報酬から10.21%が源泉徴収されています。これは前払いした税金なので、申告すると精算されます。
| 年間の報酬(源泉徴収前) | 600,000円 |
| 源泉徴収された税額 | 61,260円 |
| 経費 | △350,000円 |
| 所得 | 250,000円 |
| 基礎控除などを引いた後の課税所得 | 0円 |
| 還付される金額 | 61,260円 |
「申告していない」と聞くと追徴を想像しますが、源泉徴収されている人は逆に戻ってくることが多いのです。まず集計してみてください(関連記事:漫画家・イラストレーターの確定申告)。
やらないほうがよいこと
- 売上を実際より少なく書く。プラットフォームの記録は残っており、後から差が出ます。意図的に隠すと重加算税の対象になり、遡られる期間も伸びます
- 経費を水増しする。説明できない経費は認められません。実際に使ったものを、記録とともに積み上げてください
- そのまま放置する。時間が経つほど延滞税は増え、自主的な申告として扱われる余地も小さくなります
- 住民税を忘れる。所得税の申告が不要だった年も、住民税の申告は必要です
来年から繰り返さないために
無申告になる原因は、たいてい「知らなかった」ではなく「集計が面倒で先延ばしになった」ことです。次の3つを習慣にすれば、来年の申告は集計するだけになります。
- 月1回、各サービスの売上をメモする(売上総額・手数料・入金額)
- レシートに用途を一言書いて保存する
- 12月末に在庫を数える(紙の同人誌・グッズがある場合)
記帳を続けていれば、事業所得として申告できる余地も広がります(関連記事:創作活動は事業所得か雑所得か)。
まとめ
- 期限を過ぎても申告はできる。指摘される前に自分から出すほうが軽い
- まず売上と経費を集計して、本当に必要だったかを判定する(判定は所得で)
- 調査の通知前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%。通知後は上がる
- さかのぼるのは原則5年。還付申告も5年できる
- 源泉徴収されていた人は還付になることが多い
- 所得税の申告が不要だった年も住民税の申告は必要
過去の年をさかのぼって集計するときこそ、1枚の表に落とし込む形が効きます。サービスごとの売上・手数料・源泉徴収額・入金額を並べて、通帳と突き合わせられるExcelを用意しています。
過去の売上と経費を年ごとに集計
期限後申告では、まず年ごとの売上・手数料・源泉徴収・入金を分けることが重要です。管理用Excelをまとめています。
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。加算税・延滞税の率や課税の判断は、状況や改正によって変わります。金額が大きい場合や不安がある場合は、早めに税務署または税理士にご相談ください。
