プラットフォームが教えてくれるのは、たいてい手数料を引いたあとの振込額です。その金額を売上として書くと、確定申告書はきちんと完成します。所得も合っています。だから誰も間違いに気づきません。
けれど、その申告書には本来より小さい売上高が載っています。そして売上高が小さいと、消費税の課税事業者になるかどうかの1,000万円の判定を誤ります。
この記事では、手数料をどう記帳すればよいのかを、仕訳の形とサービス別の実額の拾い方まで具体的に説明します。
所得は同じ。変わるのは売上高
| 総額で記帳(正しい) | 振込額を売上にした場合 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000,000円 | 944,000円 |
| 支払手数料 | 56,000円 | 0円 |
| その他の経費 | 300,000円 | 300,000円 |
| 所得 | 644,000円 | 644,000円 |
所得は同じ644,000円です。納める所得税も変わりません。だから「どちらでもいい」と思われがちですが、次の3点で差が出ます。
- 消費税の1,000万円判定。課税売上高で判定するので、手数料を引いた金額で見ていると、超えているのに気づかないことがあります
- 決算書の見え方。金融機関や補助金の審査で、事業規模が実際より小さく見えます
- 手数料の把握。年間いくらプラットフォームに払っているかが分からなくなります。値上げにも気づけません
基本の式
- 売上高 = 振込額 + 販売手数料 + 振込手数料 + 源泉徴収税額
差し引かれたものを全部足し戻す、というだけの話です。引かれたものはそれぞれ経費(または前払いの税金)として別に立てます。
仕訳で書くと
10,000円の商品が売れ、手数料605円が引かれて9,395円が入金された場合です。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売れたとき | 売掛金 10,000 | 売上高 10,000 |
| 入金されたとき | 普通預金 9,395/支払手数料 605 | 売掛金 10,000 |
簡易な記帳(白色申告など)で仕訳を切らない場合も、考え方は同じです。売上帳には総額、経費帳には手数料を書きます。
サービス別の手数料の拾い方
| サービス | 手数料の構造 | 注意点 |
|---|---|---|
| BOOTH | (商品価格+送料)× 5.6% + 45円 ※DL商品は商品価格 × 5.6% + 45円 | 1件45円の固定額があるので率だけの逆算は合わない |
| FANBOX | 支援額の10%(R-18設定は12.9%) | 年の途中で設定を変えると率が変わる。月別の実額を拾う |
| Skeb | リクエスト金額から手数料を控除 | 明細の実額を拾う |
| YouTube等 | 取り分が決まったうえで配分される | 下の「レベニューシェア」を参照 |
| 振込手数料(共通) | 1回の振込ごとの固定額 | 売上の大小と無関係。率で逆算すると必ずずれる |
ポイントは固定額の存在です。「年間の売上に5.6%を掛ければ手数料が出る」と考えると、件数が多いほど大きくずれます。300円の商品を1,000件売れば、45円の固定額だけで45,000円になります。
※ 手数料の条件は変更されることがあります。申告前に各サービスのヘルプで最新の内容をご確認ください。
総額にならない場合もある
すべてを総額で記帳するわけではありません。あなたが売り手なのか、収益を分け合う立場なのかで変わります。
| 立場 | 例 | 売上高 |
|---|---|---|
| あなたが売り手 | BOOTH、FANBOX、DL販売、Skeb | 総額(手数料は経費) |
| レベニューシェア | YouTubeの広告・スパチャ・メンバーシップ | 明細に表示される収益額 |
また、委託販売については、消費税の取扱いとして、継続して適用することを条件に手数料を控除した純額で処理することが認められる場合があります。ただしこれは委託販売についての取扱いであり、すべてのプラットフォーム販売に広げて使える話ではありません。
迷ったときは総額で記帳しておくのが安全です。総額なら1,000万円の判定を誤ることがありません。そして、いったん決めた方法は毎年そろえてください。年によって変えると、売上の推移が説明できなくなります。
送料はどう扱うか
購入者から受け取った送料も売上高に含めます。そして実際に支払った配送料を経費(荷造運賃)に計上します。差し引きしてゼロにするのではなく、両建てで記録してください。
BOOTHのサービス利用料が「商品価格+送料」に対してかかるのも、送料を含めて取引金額と見ているからです。
消費税の区分について
免税事業者のうちは気にする必要はありません。課税事業者になったら、手数料の消費税区分を確認してください。プラットフォームの販売手数料と、決済にかかる手数料とで区分が分かれることがあります。
また、仕入税額控除を受けるには、手数料についても適格請求書(インボイス)が必要になります。各サービスがインボイスをどう発行しているかは、ヘルプに案内があります。
記帳の実務
1件ずつ仕訳を切るのは現実的ではありません。月ごとにまとめて1本にすれば十分です。
| 月 | サービス | 売上高 | 販売手数料 | 振込手数料 | 入金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | BOOTH | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 1月 | FANBOX | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| … |
右端の入金額は検算用です。合計が通帳と一致していれば、集計に漏れがないと分かります。この一致を確認する手間を惜しまないでください。集計ミスは、ここでしか見つかりません。
まとめ
- 売上高 = 振込額 + 販売手数料 + 振込手数料 + 源泉徴収税額
- 所得は変わらない。変わるのは売上高と1,000万円の判定
- 固定額の手数料があるので、率だけの逆算は合わない
- あなたが売り手なら総額、レベニューシェアなら明細の収益額
- 送料は売上と経費の両建て
- 月ごとの集計表を作り、入金額の合計を通帳と突き合わせる
この集計表を、サービスごとに数字の粒度が違っても埋められる形にしたExcelを用意しています。売上総額・手数料・振込額のうち分かっているものだけ入れれば、残りが自動で埋まります。
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。消費税の取扱いは取引の実態によって結論が変わります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
