確定申告の画面に「職業」「業種名」「種目」と似たような欄が次々に出てきて、手が止まった方は多いと思います。漫画家、VTuber、配信者。どれも申告書の記入例には載っていません。
先に結論を書きます。実態が伝わる名称であれば、何と書いても問題になりません。この欄の記載で税額が変わることもありません。ただし、個人事業税の業種判定だけは金額に影響しますので、そこだけ後半で説明します。
どの欄に何を書くか
| 欄 | どこに出てくるか | 書くもの |
|---|---|---|
| 職業 | 確定申告書 第一表の上部 | あなたの職業。「漫画家」「イラストレーター」など |
| 屋号・雅号 | 確定申告書 第一表の上部 | サークル名・ペンネーム。なければ空欄でよい |
| 業種名 | 青色申告決算書・収支内訳書の上部 | 事業の種類。「イラスト制作業」など |
| 種目 | 収入の内訳を書く欄 | 収入の中身。「原稿料」「広告収入」など |
| 事業の概要 | 開業届 | 何をして稼ぐかを1行で。「イラストの受注制作」など |
「職業」は人、「業種名」は事業、「種目」は収入の中身です。この3つを区別しておくと迷いません。
活動別の書き方の例
| 活動 | 職業 | 業種名 | 種目 |
|---|---|---|---|
| 同人誌の頒布・DL販売 | 同人作家/漫画家/文筆業 | 出版業/同人誌制作販売業 | 頒布収入/販売収入 |
| 企業からのイラスト受注 | イラストレーター | イラスト制作業/デザイン業 | 原稿料/イラスト制作料 |
| 漫画の連載・単行本 | 漫画家 | 漫画制作業/文筆業 | 原稿料/印税 |
| VTuber・ライバー | 動画配信業/VTuber | 動画配信業 | 広告収入/投げ銭収入/メンバーシップ収入 |
| YouTubeでの動画投稿 | 動画配信業/YouTuber | 動画配信業 | 広告収入/企業案件 |
| 動画編集の受注 | 動画編集業 | 動画制作業 | 制作料 |
| グッズ・ボイスの販売 | (主たる活動に合わせる) | 物品販売業 | 物品販売収入 |
複数の活動をしている場合は、いちばん収入の大きいものを職業欄に書けば足ります。収入の内訳は種目で分けられます。
ペンネームは書いてよいか
氏名欄には戸籍上の氏名を書きます。ペンネームやサークル名は屋号・雅号の欄に書きます。屋号がなければ空欄で構いません。
なお、屋号で銀行口座を作りたい場合や、インボイスの登録名として使いたい場合は、開業届に屋号を記載しておくと手続きが進めやすくなります。
「無職」「フリーター」と書いてよいか
事業所得や雑所得として収入を申告するなら、その活動を書くほうが自然です。会社員をしながら創作をしている場合は、本業を書いても、創作活動を書いても差し支えありません。毎年同じ書き方でそろえておくほうが、後から見たときに分かりやすくなります。
金額に影響するのは個人事業税だけ
ここが本題です。個人事業税は、法律で決められた業種にだけかかる地方税です。どの業種と扱われるかで、課税されるかどうかが変わります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業主控除 | 年290万円(営業期間が1年未満なら月割) |
| デザイン業 | 第3種事業として課税される(税率5%) |
| 文筆業・画家など | 法定業種に明示されておらず、課税されない扱いになることがある |
つまり、同じイラストの仕事でも「デザイン業」と見られるか「文筆・芸術活動」と見られるかで、結論が分かれます。クライアントの指示に沿って商業用の図案を作る仕事はデザイン業に近く、自分の作品を発表する活動は芸術活動に近い、というのがおおまかな感覚です。
ただし、これは活動の実態と都道府県の判断によります。この記事で「あなたは課税されない」と言い切ることはできません。次のように考えてください。
- 所得が290万円以下なら、事業主控除で課税されないので気にしなくてよい
- 290万円を超えてきたら、都道府県税事務所に活動内容を伝えて確認する
- 個人事業税は自分で申告しなくても、確定申告の内容をもとに通知が来るのが通常(8月・11月納付)
- 納めた個人事業税は翌年の必要経費になる
職業欄の書き方で課税を避けようとするのは筋が悪い方法です。判断されるのは実態なので、実態どおりに書いて、金額が大きくなったら確認するのが正解です。
迷ったときの決め方
- 収入がいちばん大きい活動を軸にする
- その活動を、知らない人が読んで想像できる言葉にする(「創作活動」より「イラスト制作業」)
- 収入の中身が複数あるなら種目で分ける
- いったん決めたら毎年同じ言葉を使う
「VTuber」「YouTuber」といった言葉をそのまま書いても差し支えありませんが、より一般的な「動画配信業」のほうが、税務署でも金融機関でも通りがよいです。
まとめ
- 「職業」は人、「業種名」は事業、「種目」は収入の中身
- 実態が伝わる名称なら何でもよい。所得税額は変わらない
- ペンネーム・サークル名は屋号・雅号の欄へ。なければ空欄
- 金額に影響するのは個人事業税だけ。事業主控除290万円までは課税されない
- デザイン業は課税、文筆・芸術活動は課税されない扱いのことがある。290万円を超えたら都道府県税事務所に確認
職業欄で迷うのは、たいてい申告書の入力まで来たときです。そこまでの集計が終わっていれば、あとは書くだけです。売上と経費を入力するだけで収支内訳書まで作れるExcelを用意しています。
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。個人事業税の業種判定は活動の実態と都道府県の判断によります。個別の判断は都道府県税事務所または税理士にご確認ください。
