12月30日に同人誌が売れて、入金は1月20日。この売上は、どちらの年のものでしょうか。
答えは12月、つまりその年の売上です。プラットフォームからの入金は翌月以降になるのが普通なので、通帳を見ながら集計していると、毎年12月分が翌年にずれ続けます。
この記事では、創作・配信の収入をいつの年に計上するかを、収入の種類ごとに整理します。年末年始の1点だけの話ですが、ここを外すと毎年ずれ続けるので、最初に決めておく価値があります。
原則:お金が動いた日ではなく、権利が確定した日
所得税では、その年に収入すべき金額を計上します。実際に受け取った金額ではありません。「代金を請求できる状態になったか」で判断すると考えてください。
| 取引の種類 | 計上する日 |
|---|---|
| モノの販売(同人誌・グッズ) | 引き渡した日 |
| 仕事の依頼(原稿・イラスト・動画制作) | 納品して完了した日 |
| 継続的な役務(支援プラン・メンバーシップ) | その役務を提供した期間 |
「入金日」はどこにも出てきません。入金は、確定した売上が後から回収されるだけの出来事です。
収入の種類ごとの判断
| 収入 | いつの売上か | 年末に起きること |
|---|---|---|
| 即売会の現金頒布 | イベント当日 | 年内のイベント分は全部その年 |
| BOOTH(紙・自宅発送) | 発送した日 | 12月発送・1月入金 → その年 |
| ダウンロード販売 | 購入された日 | 12月販売・1月入金 → その年 |
| FANBOX等の月額支援 | その月 | 12月分 → その年 |
| Skeb・個人からの依頼 | 納品した日 | 未出金の残高でも納品済みならその年 |
| 企業案件の原稿料 | 納品した日 | 12月納品・翌月末払い → その年 |
| YouTube等の広告収益 | 収益が確定した月 | 支払基準額に届かず繰越中でもその年 |
| 書店委託(紙の同人誌) | 書店が販売した日 | 下の「委託販売」を参照 |
委託販売だけは例外がある
同人誌書店に委託している場合、原則は書店が読者に販売した日です。ただし委託販売については、売上計算書が到達した日で計上する方法も認められています(継続して適用することが条件)。
ここで大事な注意があります。この取扱いは棚卸資産の委託販売に限られます。ダウンロード販売には使えません。「サイトの集計が出た月で計上していい」と読み替えないでください。
なお、書店が買い取り(買切)で仕入れている場合は委託販売ではありません。書店に納品した時点が引き渡しなので、卸値がそのまま売上になります。契約がどちらかを確認してください。
年末年始の具体例
| できごと | 売上の年 |
|---|---|
| 12月29日の冬コミで頒布、現金で受領 | その年 |
| 12月28日にBOOTHで注文、12月30日に発送、1月20日に入金 | その年(発送日) |
| 12月31日にDL販売、1月20日に入金 | その年(購入日) |
| 12月20日に原稿を納品、1月末に入金、源泉徴収あり | その年(納品日)。源泉徴収税額もその年に計上 |
| 1月5日にBOOTHで注文、1月7日に発送 | 翌年 |
| 12月に受注し前払いを受けたが、納品は1月 | 翌年(前受金として扱う) |
最後の行に注意してください。先にお金をもらっていても、納品していなければ売上ではありません。入金日で処理していると、ここを逆に間違えます。
源泉徴収税額も同じ年に
企業案件で源泉徴収されている場合、収入を計上した年に、その源泉徴収税額も計上します。12月納品・1月入金なら、収入も源泉徴収税額もその年です。
翌年に届く支払調書は、支払った側の基準で作られているため、あなたの計上した年とずれることがあります。支払調書の金額に合わせて自分の帳簿を書き換える必要はありません。自分の請求書と納品日で確定させてください(関連記事:漫画家・イラストレーターの確定申告)。
現金主義が使える場合
小規模な事業者には、現金主義(入金・支払のあった日で計上する方法)の特例があります。ただし条件があります。
- 前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下であること
- 青色申告をしていること
- あらかじめ届出書を提出していること
事業所得でこの特例を使う場合、青色申告特別控除は10万円となり、事前の届出が必要です。届出をしていない事業所得を入金ベースで処理するのは誤りなので、原則どおり権利確定ベースで計上します。
なお、業務に係る雑所得では、前々年のその業務の収入金額が300万円以下なら、現金主義を選択できる取扱いがあります。事業所得の特例とは要件が異なるため、所得区分を確認して適用してください。
年末にやっておくこと
- 12月分の未入金を洗い出す:各サービスの12月の売上と、まだ入金されていない金額をメモしておく
- 未納品の前受金を分ける:受注済みで納品が翌年のものは、その年の売上に入れない
- 12月末の在庫を数える:紙の同人誌・グッズは棚卸が必要(関連記事:同人誌の在庫と棚卸)
- 源泉徴収の年間合計を確定させる:12月納品分を含める
この4つを年末にやっておけば、確定申告の作業はほぼ集計だけになります。
まとめ
- 計上するのは引き渡した日・納品した日。入金日ではない
- 12月販売・1月入金はその年の売上。毎年ずれ続けるのを止める
- 前払いを受けても未納品なら売上ではない
- 委託販売の売上計算書到達日基準は棚卸資産の委託販売に限られる。DL販売には使えない
- 源泉徴収税額も収入と同じ年に計上する
- 事業所得の現金主義は青色+届出+前々年の所得300万円以下が条件。業務に係る雑所得は別の要件がある
年末の未入金と前受金の切り分けは、サービスが増えるほど手作業では追えなくなります。売上を発生日で並べて、入金額との差を自動で見せるExcelを用意しています。
売上日と入金日を分けて管理
年末の未入金や前受金を追いやすい請求・入金管理用Excelを用意しています。
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。契約内容によって引き渡しの時点が変わることがあります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
