同人活動で経費になるもの一覧|印刷代・家賃・PC・資料代の判断方法

同人活動で経費になるもの一覧|印刷代・家賃・PC・資料代の判断方法

「同人活動でこれは経費になりますか」という質問に、一覧表だけで答えるのは危険です。同じ支出でも、その作品や頒布のために使ったと説明できるかどうかで結論が変わるからです。

この記事では、まず判断の手順を2ステップで示し、そのあとで科目ごとの一覧を出します。特に迷いやすい印刷代・家賃・PC・資料代・イベント費用は、個別に詳しく書きました。

目次

経費になるかを決める2つのステップ

ステップ1:収入を得るために必要だったか

必要経費とは、その収入を得るために直接必要だった支出です。「創作に関係あるから」では足りません。「この本を作るために」「この頒布のために」と言い換えられるかを確認してください。

ステップ2:私用部分を切り分けられるか

家賃・電気代・スマホ代・PCのように、生活にも創作にも使うものは家事関連費と呼ばれます。これらは、業務に必要な部分を記録に基づいて明らかに区分できる場合に限り、その部分だけが経費になります(所得税法45条1項1号、所得税法施行令96条)。

ポイントは「記録に基づいて」の部分です。なんとなく半分、では要件を満たしません。作業時間の記録、使用している部屋の面積、通信の使用状況など、あとから説明できる根拠を残してください。逆にいえば、根拠さえ残しておけば堂々と経費にできます。

科目別の一覧

科目具体例注意点
仕入・製造原価同人誌の印刷代、製本、表紙加工売れ残った分は在庫になる(後述)
外注工賃表紙イラスト、デザイン、翻訳、校正の依頼相手が個人なら源泉徴収の要否を確認
荷造運賃通販の梱包材、送料、書店への発送、搬入費買い手負担の送料も売上と経費の両方に立てる
支払手数料販売手数料、決済手数料、振込手数料、書店の委託手数料売上は手数料を引く前の総額で計上する
旅費交通費イベント当日の交通費、搬入、遠征の宿泊費観光を兼ねた場合は按分(後述)
新聞図書費・資料費資料用の書籍、雑誌、写真集、映像作品私用との区分が必要(後述)
消耗品費画材、ペン先、トナー、用紙、周辺機器(10万円未満)10万円以上は資産として償却
通信費インターネット、スマホ、サーバー、ドメイン私用部分を按分
地代家賃自宅の家賃、作業場、トランクルーム(在庫保管)自宅は按分。倉庫は全額のことが多い
水道光熱費電気代(作業時間分)按分。水道・ガスは通常は難しい
支払出展料イベント参加費、サークル参加費、カタログ代参加目的が業務であること
減価償却費PC、液タブ、iPad、カメラ、机(10万円以上)金額で扱いが変わる(後述)

印刷代は、刷った年に全部は経費にならない

これが同人活動の申告で最も多い間違いです。印刷代のうち経費になるのは、その年に売れた分だけです。売れ残った在庫にかかる印刷代は、翌年以降に繰り越されます。

印刷代(300部)180,000円
1冊あたりの原価600円
その年に頒布した数170冊
その年の経費(売上原価)102,000円
期末在庫(130冊)78,000円 ← 翌年に繰り越す

1冊あたりの原価は、印刷代だけでなく表紙の外注費や引き取り時の運賃も部数で割って含めます。刷りすぎた年ほど、思っていたより所得が大きく出ます。詳しい計算は別記事で書きます(関連記事:同人誌の在庫と棚卸)。

なお、ダウンロード販売は在庫が発生しないため、この処理は不要です。紙とDLを両方やっている場合は、紙だけを棚卸します。

家賃・電気代・通信費の按分

自宅で作業している場合、家賃の一部を経費にできます。按分の方法は主に2つです。

  • 面積で按分:作業スペースの面積 ÷ 部屋全体の面積。間取り図に作業場所を書き込んで保存しておく
  • 時間で按分:1週間あたりの作業時間 ÷ 168時間。作業記録やタイムスタンプが根拠になる

電気代は時間按分、通信費は使用状況で按分するのが一般的です。水道代とガス代は、創作活動との関連を説明するのが難しいため、通常は経費にしません。

在庫を保管するために借りたトランクルームや、創作専用に借りた作業場は、私用部分がないので全額経費にできます。按分の根拠の残し方は別記事で詳しく書いています(関連記事も順次追加します)。

PC・液タブは金額によって扱いが変わる

1台あたりの金額扱い
10万円未満買った年に全額経費(消耗品費)
10万円以上20万円未満通常の減価償却のほか、一括償却資産として3年で均等償却する方法も選べる
20万円以上耐用年数にわたって減価償却(PCは4年)

青色申告をしている場合は少額減価償却資産の特例が使えて、一定額未満なら買った年に全額経費にできます。金額の基準は令和8年度税制改正で引き上げられており、令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満(それ以前の取得は30万円未満)が対象です。白色申告では使えません。

金額の判定は、私用部分を按分する前の購入価格で行います。18万円のPCを事業割合50%で使う場合、判定は18万円で行い、計算した償却費に50%を掛けます。

資料代はどこまで入るか

資料用の書籍・雑誌・映像作品は、その作品の制作に使ったと説明できる範囲で経費になります。判断を助けるのは記録です。

  • 何のために買ったかをメモに残す(「〇〇の背景資料」「衣装の時代考証」)
  • 実際に作品のどこに反映されたかを紐づけておく
  • 趣味で読んでいるものと、資料として買ったものを混ぜない

「創作をしているから買った本はすべて資料」という整理は通りません。逆に、記録が残っていれば、一見趣味に見えるものでも説明できます。線引きの考え方は別記事で掘り下げています(関連記事:イラストレーターの経費一覧)。

イベント関連の費用

サークル参加費、カタログ代、当日の交通費、搬入搬出の費用は、頒布のための支出なので経費になります。遠方のイベントの宿泊費も、参加のために必要であれば経費です。

注意が必要なのは観光を兼ねた遠征です。イベント参加が主目的で、前後に観光を足したのであれば、観光にかかった分は経費から外します。日程表を残しておくと説明しやすくなります。

一般参加(頒布せず買いに行くだけ)の費用は、資料収集としての説明が必要です。頒布していないイベントの交通費まで全部入れると、説明が苦しくなります。

経費にならないもの

  • 自分への給料。個人事業では、自分に払う給与という概念がありません
  • 所得税・住民税。事業税や消費税は経費になりますが、所得税と住民税はなりません
  • 私用部分。按分後の私用分は経費になりません
  • 健康保険料・国民年金。経費ではありませんが、社会保険料控除として所得から引けます
  • 推し活・趣味の支出。創作の題材にしたというだけでは足りません

記録の残し方

経費で困るのは、たいてい「あとから思い出せない」ことです。次の3つだけ習慣にしておけば十分です。

  1. レシートに用途を一言書いて保存する(「〇〇の資料」「冬コミ搬入」)
  2. ネットで買ったものはPDFやスクリーンショットを電子のまま保存する(電子取引は電子保存が原則)
  3. 按分するものは割合と根拠を年1回まとめて記録する

まとめ

  • 経費かどうかはその収入を得るために必要だったかで決まる
  • 生活と共用するものは、記録に基づいて区分できる部分だけが経費
  • 印刷代は売れた分だけが経費。売れ残りは在庫として翌年へ
  • PC・液タブは10万円・20万円が分かれ目。青色なら少額特例(令和8年4月1日以後の取得は40万円未満)
  • 資料代とイベント費用は、用途のメモが最大の防御になる

在庫の計算と按分の記録は、年末にまとめてやろうとすると必ず崩れます。1冊あたりの原価から期末在庫、決算書への転記までを自動化したExcelを用意しています。

年末の在庫数と原価を整理する

紙の同人誌やグッズが残っている場合は棚卸が必要です。計算方法と記入例を別記事で確認できます。

この記事は一般的な情報の提供を目的としています。経費の判断は活動の実態によって変わります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。

参考にした公式情報

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