制度の解説記事はもう十分読んだ、という方が多いと思います。困っているのはその先です。**「で、うちのサーバーのどこに、どんな名前で、誰が保存すればいいのか」**が決まらない。
この記事は、制度の再解説ではなくフォルダ設計と日々の運用に絞って書きます。3区分のうちどこから手をつけるか、受け取り方ごとに紙でよいのか電子が必要か、階層とファイル名をどう決めるか、そして続けるための当番と月次チェックまでを扱います。
この記事の前提(必ずお読みください) 電子帳簿保存法は改正が続いている分野です。この記事は2026年8月時点の一般的な理解にもとづいて、フォルダ設計と運用の考え方を整理したものです。要件の適用範囲、猶予措置の扱い、検索要件が緩和される条件などの細部は、事業者の規模や状況によって異なります。最新かつ自社への当てはめは、国税庁が公表している資料と顧問税理士で必ず確認してください。 この記事では、確認が必要な部分は「確認が必要」とそのまま書いています。
この記事を書いた人:中小企業の経理実務と、税理士事務所向けの実務ツール制作をしています。会計ソフトでは埋まらない「現場の手作業」を減らすテンプレートを作っています。
まず結論:凝った仕組みより「全員が同じ場所に同じ名前で置ける」ことが先
先に結論を書きます。中小企業の電子保存でうまくいかない原因は、要件の理解不足ではありません。運用が続かないことです。
- 保存場所が人によって違う
- ファイル名がバラバラで、後から探せない
- 保存するのが月末にまとめてになり、そのうち溜まって止まる
この3つを潰すだけで、状況は大きく変わります。だから最初に決めるのは、次の3点だけで構いません。
- どこに置くか(共有フォルダの1本の道筋)
- どんな名前で置くか(日付_取引先_金額の型)
- いつ置くか(受け取ったその場)
高機能な文書管理システムを入れるかどうかは、この3つが回り始めてから考えても遅くありません。
3つの区分の違いと、中小企業が手をつける順番
電子帳簿保存法は、大きく3つの区分に分かれています。ここを混ぜて考えると、話が一気にややこしくなります。
| 区分 | 対象になるもの | 位置づけの一般的な理解 | 中小企業の優先度 |
|---|---|---|---|
| ① 電子帳簿等保存 | 自社が会計ソフト等で作成した帳簿・決算書類 | 一定の要件を満たせば電子データのまま保存できる、選択できる制度 | 低〜中(会計ソフトの設定次第) |
| ② スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書をスキャンした画像 | 紙の原本を電子化して保存できる、選択できる制度 | 中(紙を減らしたいなら) |
| ③ 電子取引データ保存 | メール添付・Webダウンロードなど、最初から電子でやり取りしたデータ | 電子取引を行っている事業者は対応が求められる区分 | 高(まずここ) |
まず対応すべきは③の電子取引データ保存
①と②は「電子にしてもよい」という選択の制度です。やらなければ紙のまま続ければいい。
一方で③は、そもそも紙で受け取っていない書類の話です。メールで届いたPDFの請求書、取引先のサイトからダウンロードした支払明細。これらは最初から電子データとして発生しています。
多くの中小企業がまず整えるべきは、この③です。理由はシンプルで、①②に手をつけなくても業務は回りますが、③はすでに毎日発生しているからです。
①②は後回しでよい理由
スキャナ保存には、読み取りの解像度やタイムスタンプなど、電子取引データ保存とは別の要件が定められています。紙の原本を捨てられるという利点はありますが、要件を満たす体制を作るコストと、紙を保管し続けるコストを比べて決める話です。急ぐ必要はありません。
まず③のフォルダを作り、回るようになってから②を検討する。この順番をおすすめします。
受け取り方別:紙保存でよいか、電子保存が必要か
現場でいちばん迷うのが「これはどっち扱いなのか」です。判断は書類の種類ではなく、受け取り方で決まると考えると整理しやすくなります。
| 受け取り方 | 具体例 | 一般的な扱い | 実務での対応 |
|---|---|---|---|
| 紙で受領 | 郵送された請求書、店頭のレシート | 紙のまま保存でよい | 従来どおりファイリング。電子化するかは任意 |
| メール添付 | 取引先から届いたPDF請求書 | 電子取引データとして電子保存が必要 | 添付ファイルを共有フォルダへ保存 |
| 本文に金額等が記載されたメール | 「今月のご請求は◯円です」と本文に書かれたもの | 電子取引データにあたる場合がある | メール本文をPDF化して保存。判断に迷うものは要確認 |
| Webからダウンロード | 通信会社・クラウドサービスの利用明細、ECの領収書 | 電子取引データとして電子保存が必要 | ダウンロードして共有フォルダへ。サイト上に置いたままにしない |
| EDI・クラウド請求書サービス | 受発注システム、請求書受領サービス | 電子取引データにあたる | サービス側の保存機能が要件を満たすか要確認。満たさない場合は自社で保存 |
| スマホアプリの領収書 | 経費精算アプリ、配車・宅配アプリの電子領収書 | 電子取引データにあたる場合が多い | アプリからPDFを取得して保存。画面キャプチャで済ませない |
紙で受け取ったものを印刷し直す必要はない
紙で受け取ったものは紙のまま保存できます。あえてスキャンする義務はありません。
問題は逆方向です。電子で受け取ったものを印刷して、紙だけで保管する運用は、電子取引データ保存の考え方に合いません。印刷して回覧するのは構いませんが、元データも残すのが原則です。
迷ったときの1行ルール
判断に迷ったら、こう考えてください。
自分の手元に最初に届いたのが「モノ」なら紙保存、「データ」なら電子保存。
そのうえで、サービス提供元の保存機能に頼りきってよいかどうか(解約後も見られるか、保存期間はどうか)は、契約内容によって変わるため個別の確認が必要です。
フォルダ構成の具体例:2パターンから選ぶ
ここからが本題です。階層の作り方には正解がありませんが、取引件数と、探すときの入口で選ぶと決めやすくなります。
パターンA:年度 → 取引区分 → 年月(取引先で分けない)
証憑データ/
├─ 2026年度/
│ ├─ 01_受取請求書/
│ │ ├─ 2026-04/
│ │ ├─ 2026-05/
│ │ └─ 2026-06/
│ ├─ 02_領収書・経費/
│ ├─ 03_発行請求書(控)/
│ └─ 04_契約書・注文書/
└─ 2025年度/
向いている会社:取引先が多い、または毎月の取引先が入れ替わる会社。件数が月に数十件までの規模。
利点:フォルダ数が増えず、迷子になりにくい。新しい取引先が増えてもフォルダを作らなくてよい。
弱点:「A商事の過去1年分を並べて見たい」といった探し方がしにくい。ファイル名と検索に頼る前提になります。
パターンB:年度 → 取引区分 → 取引先
証憑データ/
├─ 2026年度/
│ ├─ 01_受取請求書/
│ │ ├─ アオヤマ商事/
│ │ ├─ イズミ工業/
│ │ └─ ウエノ物流/
│ ├─ 02_領収書・経費/
│ └─ 03_発行請求書(控)/
└─ 2025年度/
向いている会社:毎月ほぼ同じ取引先から継続的に請求が来る会社。取引先ごとの照会や残高確認が多い会社。
利点:取引先単位で一覧できる。支払漏れや二重計上に気づきやすい。
弱点:取引先が増えるたびにフォルダが増える。表記ゆれ(「株式会社」の有無、全角半角)でフォルダが分裂しがちです。
どちらを選んでも守ること
| 決めごと | 具体的なルール例 |
|---|---|
| 年度の区切り | 会計年度で区切るか暦年で区切るかを最初に決めて、途中で変えない |
| 取引区分の並び | 頭に「01_」「02_」と番号を振り、並び順を固定する |
| 取引先名の表記 | 「株式会社」は付けない、法人格は省略、全角に統一など1行で決める |
| 個人フォルダ禁止 | 個人のマイドキュメント・デスクトップは保存場所にしない |
| 迷ったとき置き場 | 「99_未分類」を作り、月次で必ず空にする |
「99_未分類」は妥協のように見えますが、判断に迷ったファイルが行方不明になるのを防ぐための実務的な工夫です。ゼロにするのではなく、月末に空にする運用にしてください。
ファイル名の命名規則:日付_取引先_金額を基本形にする
フォルダ構成より、実は効くのがファイル名です。ここが揃うと、検索も並べ替えも一気に楽になります。
基本の型
YYYYMMDD_取引先名_金額.pdf
順番には理由があります。日付を先頭にすると、名前順で並べただけで時系列になるからです。
決めておく細かいルール
- 日付:西暦8桁。区切り記号は入れない(20260410)。取引年月日を使い、ダウンロードした日ではありません
- 桁揃え:金額はカンマなしの数字のみ。円単位でそろえる
- 記号:ファイル名に使えない記号(¥ / \ : * ? " < > |)は使わない。区切りはアンダースコア、単語内の区切りは半角ハイフンに統一
- スペース:入れない。全角スペースは特に避ける
- 取引先名:フォルダの表記ルールと同じものを使う
- 重複時:同じ日・同じ取引先・同じ金額が並んだときは、末尾に
_01_02と連番を付ける
実例
| ファイル名 | 内容 |
|---|---|
20260410_アオヤマ商事_132000.pdf |
4月10日付、アオヤマ商事からの請求書 |
20260410_アオヤマ商事_132000_01.pdf |
同日・同額の請求が2件あったときの1件目 |
20260410_アオヤマ商事_132000_02.pdf |
同上の2件目 |
20260415_イズミ工業_88000_保守料.pdf |
内容を補足したいときは末尾に追記 |
20260420_ウエノ物流_5500.pdf |
少額でも同じ型で保存する |
20260430_カワイ電機_1250000.pdf |
高額でも桁区切りは入れない |
20260430_JR-East_13640.pdf |
英字の取引先。単語の区切りはハイフン |
補足を付けるかどうかは1つだけ決める
末尾に内容(保守料、消耗品、など)を足すかどうかは、付けるか付けないかを会社として1つ決めるのが大切です。人によって付いたり付かなかったりすると、結局は見た目が揃いません。
迷うなら「原則は付けない。同じ取引先から性質の違う請求が来る場合だけ付ける」と決めておくと運用しやすくなります。
「検索できる状態」にしておくという考え方
電子取引データの保存では、取引年月日・取引先・取引金額で探せる状態にしておくことが求められる、というのが一般的な理解です。事業者の規模などによって取扱いが緩和される場合もあるとされていますが、その条件は改正で変わり得るため、自社が該当するかは確認が必要です。
ただ、実務目線で言えば話は単純です。税務調査で「この取引の証憑を出してください」と言われたときに、その場で出せるかどうか。 これに尽きます。
方法1:ファイル名で検索できるようにする
上で決めた命名規則を守るだけで、パソコンのファイル検索から日付・取引先・金額のどれでも引けるようになります。追加の道具は要りません。まずはここからで十分です。
方法2:表計算ソフトで索引を作る
件数が増えてきたら、フォルダとは別に索引の表を持つと安心です。1行1ファイルで、次の列を作ります。
| 取引年月日 | 取引先 | 取引金額 | 区分 | ファイル名 | 保存場所 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/04/10 | アオヤマ商事 | 132000 | 受取請求書 | 20260410_アオヤマ商事_132000.pdf | 2026年度/01_受取請求書/2026-04 | |
| 2026/04/15 | イズミ工業 | 88000 | 受取請求書 | 20260415_イズミ工業_88000_保守料.pdf | 2026年度/01_受取請求書/2026-04 | 保守契約 |
| 2026/04/20 | ウエノ物流 | 5500 | 領収書 | 20260420_ウエノ物流_5500.pdf | 2026年度/02_領収書・経費/2026-04 |
索引の利点は、金額の範囲や期間で絞り込めることと、ファイルの抜けに気づけることです。会計ソフトの仕訳データと件数を突き合わせれば、「仕訳はあるのに証憑がない」がすぐ分かります。
索引を作るなら、月末にまとめて入力するのではなく、ファイルを保存したその流れで1行足す運用にしてください。別作業にすると必ず溜まります。
訂正・削除を防ぐための運用
保存すること自体より、あとからこっそり書き換えられない状態を作るほうが難しい部分です。
1. 事務処理規程を整える
システムでタイムスタンプや訂正削除履歴を管理する方法のほかに、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用するという選択肢があります。中小企業ではこちらを選ぶケースが多く見られます。
国税庁のサイトでは、こうした規程のサンプルが公表されています。自社でゼロから作る必要はありません。 ただし、サンプルをそのまま社名だけ入れて置いておくのではなく、次の点は自社の実態に合わせてください。
- 誰が保存の責任者か
- 訂正・削除が必要になったとき、誰に申請し、誰が承認するか
- 訂正・削除の記録をどこに残すか
- 規程をどこに保管し、誰が見られるようにしておくか
規程は、書いた内容と実際の運用が一致していることが重要です。 実態と違う規程を置いておくほうが危うい、と考えてください。最新の様式や記載事項は、国税庁の資料と顧問税理士で確認をおすすめします。
2. フォルダの権限設計
技術的には、権限で守るのがいちばん確実です。
| 対象 | 推奨する権限 | 意図 |
|---|---|---|
| 当年度の保存フォルダ | 経理担当は書き込み可、他部署は閲覧のみ | 誤って上書き・移動されるのを防ぐ |
| 確定済みの過年度フォルダ | 全員が閲覧のみ(変更は管理者のみ) | 過去分を触れないようにする |
| 未分類フォルダ | 関係者は書き込み可 | 仮置きの手間を減らす |
| 削除操作 | 管理者のみ | 誤削除と意図的な削除の両方を防ぐ |
権限を触るのが難しい場合でも、過年度フォルダを別の場所に移して読み取り専用にするだけで効果があります。
3. 上書き保存を防ぐ運用
日々の事故で多いのは、悪意のない上書きです。
- 同じファイル名で保存し直さない(訂正版は
_訂正01を付けて別ファイルにする) - 元データを直接開いて編集しない。確認は開くだけ、加工は別フォルダにコピーしてから
- 差し替えが発生したら、旧ファイルを消さずに残し、索引の備考に理由を書く
- バックアップを別の場所に取る(同じフォルダ内の複製はバックアップになりません)
「消さずに残して、経緯を書く」。これが訂正削除への基本姿勢です。
なお、こうした証憑の保管ルールは、担当者が代わった瞬間に消えます。 どのフォルダに何を、どんな名前で保存しているのかは、経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストに必ず書き残してください。ルールが引き継がれないと、後任者は自己流のフォルダを新しく作り始めます。
定着させるコツ:ルールより「いつやるか」
きれいなルールを作っても、続かなければ意味がありません。定着のポイントは4つです。
1. 受け取ったその場で保存する
いちばん効果があるのはこれです。メールを開いて請求書のPDFを見たら、その場で共有フォルダに保存し、リネームする。この一連の動きを15秒で終わらせることを目標にしてください。
「あとでまとめて」は、ほぼ確実に溜まります。
2. 月末にまとめて処理しない
月末は支払と締めで手が塞がる時期です。そこに証憑の整理を積むと、真っ先に後回しになります。
もし溜めてしまう習慣があるなら、週1回、曜日を決めて15分の枠を作るほうが現実的です。月末に3時間かけるより、毎週15分のほうが確実に終わります。
3. 担当者が複数いるなら当番制にする
「気づいた人が保存する」は、誰も保存しない状態と同じです。
- 週ごと、または月ごとに担当を決める
- 当番は「未分類フォルダを空にする」「索引に漏れがないか見る」までを担当する
- 当番表は共有カレンダーに入れて、口頭で回さない
4. 月次でフォルダの抜けを確認する
月次決算の作業に、次の1項目を足してください。
今月の仕訳のうち、証憑ファイルが保存されていないものはないか
会計ソフトの仕訳件数と索引の行数、あるいは支払一覧とフォルダ内のファイル数を突き合わせるだけで構いません。その月のうちに気づけば、取引先に再送を頼めます。 決算期に気づくと、もう相手も探せません。
よくある失敗と、その直し方
実際によく見る失敗です。当てはまるものがないか確認してください。
失敗1:メール添付の請求書を印刷して、紙だけで保管している 最も多いパターンです。印刷して回覧するのは構いませんが、元のPDFも共有フォルダに残してください。紙だけにしてしまうと、電子取引データ保存の考え方から外れます。回覧用の紙と保存用のデータは別物と考えると整理できます。
失敗2:個人PCのデスクトップに保存している 担当者が休んだ日、その証憑には誰も触れません。パソコンが故障すれば消えます。共有フォルダかクラウドストレージに置き、個人の端末は作業場所であって保存場所ではないと決めてください。
失敗3:ファイル名が「請求書.pdf」ばかり 同じフォルダに入れた瞬間に「請求書(1).pdf」「請求書(2).pdf」になります。検索もできません。過去分を今から全部直すのは大変なので、まず今月分から命名規則を適用し、過去分は時間があるときに年度単位でさかのぼる。この順番が現実的です。
失敗4:退職者のメールボックスにしか証憑が残っていない 退職時にアカウントを削除すると、証憑ごと消えます。引継ぎ時のチェック項目に「メールボックス内の未保存の証憑を共有フォルダへ移す」を必ず入れてください。取引先からのメールの宛先を、個人アドレスから共有アドレスに切り替えてもらうのも有効です。
失敗5:クラウドサービスのサイト上に置いたままにしている 「いつでもダウンロードできるから」と考えがちですが、サービスによって過去分の閲覧できる期間は異なりますし、解約すれば見られなくなることもあります。契約が続いている間にダウンロードしておくのが安全です。
失敗6:ルールが担当者の頭の中にしかない フォルダの階層、命名規則、当番、月次チェック。これらを1枚にまとめて、共有フォルダの一番上に置いてください。書き残しの型は経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストが使えます。(関連記事:一人経理が突然辞めたら?最初の3日)
よくある質問
Q. この記事の内容は、そのまま自社に当てはめて大丈夫ですか? フォルダ設計と運用の考え方は、そのまま参考にしていただけます。ただし電子帳簿保存法は改正が続いている分野で、この記事は2026年8月時点の一般的な理解にもとづくものです。要件の適用範囲、猶予措置の扱い、検索要件が緩和される条件などの細部は、事業者の規模や状況によって異なります。最新の内容と自社への当てはめは、国税庁が公表している資料と顧問税理士で必ず確認してください。
Q. 保存するファイル形式はPDFでないといけませんか? 形式そのものより、受け取ったデータを改変せずに保存し、後から内容を確認できることが本質です。PDFで届いたものはPDFのまま保存するのが素直で、確認の手間もかかりません。画像やその他の形式で届いたものをどう扱うかは、社内で1つに決めておくと運用がぶれません。
Q. クラウドの請求書受領サービスに保存されていれば、自社でも保存しなくてよいですか? サービス側の保存機能が要件を満たすかどうかは、サービスごとに異なります。提供元の説明を確認したうえで、解約後や契約終了後にデータをどうするかまで含めて判断してください。判断がつかない場合は、自社の共有フォルダにもダウンロードして保存しておくほうが安全です。
Q. 過去分のファイル名を今から全部直すべきですか? 一気にやろうとすると、ほぼ挫折します。今月分から新ルールを適用し、過去分は年度単位で少しずつが現実的です。過去分は、索引の表を作って「どこに何があるか」が分かる状態にするだけでも実務上は機能します。
Q. 紙で受け取った請求書もスキャンしたほうがいいですか? 義務としてスキャンが必要なわけではありません。紙は紙のまま保存できます。スキャナ保存には別の要件が定められているため、紙を減らすメリットと、要件を満たす体制を作るコストを比べて決めてください。まずは電子取引データの保存を回すことを優先するのがおすすめです。
まとめ
- 3区分のうち、多くの中小企業がまず対応すべきは電子取引データの保存。①電子帳簿等保存と②スキャナ保存は選択の制度で、後回しでよい
- 紙保存か電子保存かは、書類の種類ではなく受け取り方で決まる。「モノで届いたら紙、データで届いたら電子」が目安
- フォルダは「年度→取引区分→年月」か「年度→取引区分→取引先」の2択。取引件数と探し方で選ぶ
- ファイル名は
YYYYMMDD_取引先_金額を基本形に。日付を先頭にすれば並べるだけで時系列になる - 続けるコツは仕組みより習慣。受け取ったその場で保存し、月次でフォルダの抜けを確認する
- 制度の細部は改正がある。国税庁の資料と顧問税理士で最新を確認する
完璧な仕組みを作ってから始めようとすると、いつまでも始まりません。まずは今月分から、1本のフォルダと1つの命名規則で運用してみてください。
参考(一次情報)
経理の引継ぎ書テンプレート(Word・全35ページ)を無料配布中
年間スケジュール別・作業別・勘定科目別の3つの切り口で、引き継ぐべき項目を網羅したWordテンプレートです。この記事で解説した証憑の保存場所・フォルダ構成・命名規則を書き込める記入欄も用意しています。記入例つき版と空欄版の2種類があります。
