決算前1か月にやることチェックリスト|決算日を過ぎたら手遅れになる項目から着手する

決算前1か月にやることチェックリスト|決算日を過ぎたら手遅れになる項目から着手する

決算準備でいちばんもったいないのは、やろうと思えばできたのに、決算日を過ぎてしまって手が打てなくなることです。

決算の作業量そのものは、決算日の後のほうが多くなります。決算整理仕訳も、内訳書の作成も、申告書のチェックも、すべて決算日を過ぎてからです。だから決算前は気が緩みがちですが、実際には「決算日までにしか決められないこと」が静かに期限を迎えています。

この記事では、決算日の1か月前から決算日の翌週までを時系列のチェックリストにまとめました。あわせて実地棚卸の進め方、残高の確定作業、税理士へ渡す資料の一覧、納税資金の準備まで扱います。決算日から逆算して、今日から動ける順に並べています。

決算前の判断は税務上の要件が絡むものが多く、要件を1つ外すと処理そのものが認められないことがあります。この記事は段取りを整理するためのものです。個別の処理をどうするかは、必ず事前に顧問税理士へ相談してください。


目次

最初にやること:「決算日を過ぎたらできないこと」と「後でもできること」を分ける

決算前1か月の優先順位は、作業の重さでは決まりません。タイムリミットが決算日なのか、申告日なのかで決まります。ここを分けないまま着手すると、後でもできる作業に時間を使い切ってしまいます。

まず次の表で仕分けてください。

区分 主な項目 タイムリミット
決算日を過ぎたらできない 実地棚卸の実施 決算日(当日の在庫は後から数え直せない)
不要な固定資産の除却・廃棄 決算日(現物の処分が済んでいるか)
修繕・点検の実施 決算日(作業が完了しているか)
決算賞与の検討と手続き 決算日(要件が厳格。事前に税理士へ相談)
貸倒れの判断材料の確保 決算日(事実の発生時期による)
契約・発注・納品・検収の実行時期 決算日(いつ引き渡されたかで期が決まる)
現金実査・残高証明書の基準日 決算日(基準日を後からずらせない)
決算日を過ぎてもできる 決算整理仕訳(減価償却、経過勘定、引当金) 申告期限までの作業
勘定科目内訳明細書の作成 申告書の添付書類
消費税の集計・精算 申告期限までの作業
証憑の整理・ファイリング 保存期間の要件を満たせばよい
各種届出書の確認 届出ごとに期限が異なる(要注意)
納税資金の手当て 納付期限まで(ただし早いほど安全)

上段は、決算日を過ぎたらその期には反映できません。下段は、決算日の後に落ち着いて処理できます。決算前1か月にやるべきなのは、原則として上段だけです。

なお、届出書の類は「決算日を過ぎてもできる」に入れていますが、消費税の各種選択届出のように適用したい事業年度の開始前や終了日までに提出が必要なものがあります。自社に該当する届出があるかどうかは、決算1か月前の段階で税理士に確認しておくと安全です。

決算にかぎらず、経理業務は「期限が動かせるもの」と「動かせないもの」を分けて管理すると事故が減ります。この考え方は引継ぎ書の作り方にも共通していて、経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストでも同じ切り口で整理しています。


決算日を過ぎたら手遅れになる6項目

上の表の上段を、もう少し具体的に見ていきます。どれも「気づいたときには決算日を過ぎていた」が起きやすい項目です。

1. 使っていない固定資産の除却

固定資産台帳に載っているのに、実際にはもう使っていない資産はありませんか。故障して倉庫に置いたままのもの、リプレースして電源すら入れていないもの、事業所の移転で置いてきたもの。

こうした資産の処理は、決算日までに現物をどうしたかで扱いが変わります。実際に廃棄したのか、まだ社内にあるのか。廃棄したなら、廃棄業者のマニフェストや処分証明、引取りの請求書といった証跡が残っているか。この証跡がないと、後から説明ができません。

決算1か月前にやるべきなのは、固定資産台帳を印刷して現物を見て回ることです。台帳と現物の突合は、決算日の前にしか意味がありません。 処理の可否と時期については税理士に確認してください。

2. 修繕・点検の実施時期

予定している修繕がある場合、決算日の前に完了しているかどうかで、どの期の費用になるかが変わります。

ここで注意したいのは、発注日でも支払日でもなく、作業が完了して引き渡された時期が基準になるのが原則という点です。3月末に発注して4月に工事が終わったなら、原則として翌期の話になります。

さらに、修繕の内容によっては修繕費ではなく資本的支出として資産計上が必要になる場合があります。金額や工事の内容で判断が分かれるところなので、大きな修繕を予定しているなら、着工前に税理士へ相談してください。

3. 決算賞与の検討

利益が出そうなときに検討されることの多い項目ですが、税務上の要件が厳格に定められています。支給額の通知の方法と時期、実際の支払時期、経理処理の仕方など、複数の条件をすべて満たす必要があります。

要件を1つでも外すと、その期の費用として認められません。「決算賞与を出せば節税になる」という単純な話ではないため、実施を検討する段階で必ず顧問税理士に相談し、要件と手続きの進め方を確認してください。 判断が遅れると、そもそも決算日までに手続きが終わらないという問題も起きます。

4. 貸倒れの判断材料の確保

回収できていない売掛金がある場合、その相手先の状況を決算日までに確認しておく必要があります。

  • 最後に入金があったのはいつか
  • 督促の記録は残っているか(メール、書面、通話記録)
  • 相手先は営業しているか、連絡は取れるか
  • 法的な手続きに入っていないか

貸倒れの処理は、状況ごとに要件が細かく決められています。要件を満たすかどうかの判断は税理士の領域なので、経理担当者がやるべきは判断ではなく、判断材料を揃えて渡すことです。売掛金の年齢表(滞留期間ごとの一覧)を作り、長期滞留分について上の4点をメモして持っていくのが実務的です。

5. 契約・取引の実行時期

決算をまたぐ取引は、いつ引き渡されたか・いつ役務が提供されたかで、どちらの期になるかが決まります。請求書の日付や入金日ではありません。

  • 決算日直前に納品された仕入は、検収まで終わっているか
  • 決算日直前に出荷した商品は、当期の売上か翌期の売上か
  • 年間契約の保守料やソフトウェア利用料は、どの期間分か
  • 前払いした費用のうち、翌期以降に対応する部分はいくらか

ここは期ズレ(計上時期の誤り)が最も起きやすい場所です。決算日をまたぐ発注や納品の一覧を作り、それぞれ「引き渡しはいつか」を書き込んでおくと、決算整理のときに迷いません。

6. 実地棚卸の実施

棚卸資産がある会社にとって、これが最大の項目です。決算日時点の在庫は、後から数え直せません。詳しい進め方は後の章でまとめます。


【時系列】決算前1か月のチェックリスト

ここからは、決算日を「0日」として時系列に並べます。自社に関係のない項目は飛ばしてください。

時期 主な作業 目的
1か月前 洗い出しと日程確保 決算日までに手を打つ対象を確定させる
2週間前 外部への依頼と社内周知 相手の予定が必要なものを押さえる
1週間前 直前の詰めと準備物の確認 当日に迷わない状態を作る
決算日当日 数える・数字を止める 後から再現できないものを記録する
翌週 締めと突合 残高を確定させ、税理士へ渡す準備をする

決算日の1か月前にやること

  • 直近の試算表を出し、今期の着地見込みを確認する
  • 固定資産台帳を印刷し、現物と突合する(遊休資産・除却候補の洗い出し)
  • 売掛金の年齢表を作り、長期滞留の相手先をリストにする
  • 買掛金・未払金の未計上がないか、発注残・検収状況を確認する
  • 棚卸の実施日・担当者・対象場所を決めて社内に通知する
  • 決算日をまたぐ契約・発注・納品の一覧を作る
  • 仮払金・仮受金・立替金・前渡金の残高を洗い出す
  • 税理士との打合せを設定し、判断が必要な論点を持ち込む
  • 概算の納税額を試算し、資金繰り表に反映する
  • 前年の「税理士へ提出した資料リスト」を引っ張り出す

この時点で税理士に相談すべきなのは、除却・修繕・決算賞与・貸倒れ・大きな設備投資といった、決算日までに動かないと間に合わない論点です。決算日の後に相談しても選択肢が残っていません。

決算日の2週間前にやること

  • 銀行へ残高証明書の発行を依頼する(発行に日数がかかるため早めに)
  • 借入金の返済予定表を最新のものに更新する
  • 棚卸のカウント表を印刷し、担当割りとエリア分けを確定する
  • 棚卸当日の入出庫の扱い(止めるのか、止めないのか)を関係部署と決める
  • 預け在庫・預り在庫の相手先へ、残高確認の依頼を出す
  • 主要な取引先との売掛・買掛の残高照合を始める
  • 除却予定の資産について、処分の手配を進める
  • 未回収の経費精算・立替金の締切を社内に告知する
  • 未提出の請求書・領収書の提出を各部署に依頼する

残高証明書は、依頼から発行まで日数がかかるのが通常です。決算日を過ぎてから依頼しても、基準日は決算日で発行してもらえますが、手元に届くのが遅れると決算作業全体が後ろにずれます。2週間前を目安に動いてください。

決算日の1週間前にやること

  • 棚卸の手順書とカウント表を担当者へ配布し、事前説明をする
  • 現場の整理整頓(不良品・返品待ち・預り品の区分表示)
  • 未検収品・輸送中の在庫の把握方法を決める
  • 小口現金の精算を促し、残高を減らしておく
  • 決算日直前の発注・出荷について、期をまたぐ分を確認する
  • 会計データの入力を決算日直前まで進め、未入力を最小化する
  • 決算日当日の担当者の出勤体制を確認する

決算日当日にやること

  • 実地棚卸の実施(カウント、集計、責任者の確認印)
  • 現金実査(金庫・レジ・小口現金をすべて数え、出納帳と照合)
  • 全口座の残高をオンラインで確認し、画面を保存または印刷する
  • 決算日時点の受取手形・小切手・商品券などの現物を確認する
  • 決算日をまたぐ出荷・入荷の記録を残す(伝票番号で線を引く)
  • レジや販売システムの締め処理を実施する

現金実査は、決算日の営業終了後か翌営業日の開始前に、必ず2人以上で行うのが原則です。1人しかいない場合でも、実査表を作り、日付・時刻・立会者・金種別の枚数を記録して責任者の確認を受けてください。

決算日の翌週にやること

  • 棚卸の集計を終え、帳簿在庫との差異を調べる
  • 決算日時点の売掛金・買掛金の残高を確定させる
  • 仮払金・仮受金・立替金を解消する
  • 預り金(源泉所得税、社会保険料、住民税)の残高が説明できるか確認する
  • 残高証明書が届いたら、帳簿残高と照合する
  • 経費精算の未処理をゼロにする
  • 試算表を出力し、前期比で異常な科目がないか確認する
  • 税理士へ渡す資料の一覧を作り、揃っているものからチェックしていく

決算日から2か月後の申告・納付までの全体像は、経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストや年間スケジュールの記事のほうで整理しています(関連記事:経理の年間スケジュール完全版)。


実地棚卸の進め方

棚卸は「数えるだけ」に見えて、段取りの差が結果の差になります。決算日は1回しかないので、当日の判断に迷う場面をできるだけ減らしておきます。

事前準備でやること

  1. 実施日と時間帯を決める:決算日当日が原則です。営業の都合で難しい場合の扱いは、事前に税理士へ相談してください
  2. 対象範囲を洗い出す:自社倉庫、店舗、事務所、車両の在庫、外部倉庫、協力会社への預け在庫まで
  3. 担当を割り振る:エリアごとに2人1組(数える人と記録する人)が基本
  4. 現場を整理する:不良品、返品待ち、預り品、廃棄予定品を物理的に分け、札を貼って区別する
  5. 手順書を配る:数え方の単位、記入ルール、判断に迷ったときの連絡先を1枚にまとめる

現場を整理する工程は、当日の効率を最も左右します。数えるときに迷うものを、前日までに物理的に分けておくのがコツです。

カウント表の作り方

カウント表は、次の項目を入れておくと後の集計と検証が楽になります。

項目 内容
基準日 決算日(実施日が異なる場合は両方)
場所・エリア 倉庫名、棚番号
品番・品名 帳簿と同じ表記にそろえる
単位 個・箱・ケース。入数を必ず併記する
数量 手書きで記入
状態区分 良品/不良品/返品待ち/預り品
カウント者・記録者 氏名
確認者 責任者のサイン

大切なのは、帳簿の数量を印字しないことです。数量が見えていると、そこに引きずられて数えたことになってしまいます。数量欄は空欄で配り、集計の段階で帳簿と突合します。

入出庫を止められないときの締め方

理想は、棚卸中は入出庫を止めることです。ただし、営業を止められない業種では現実的でない場合もあります。その場合は、次のように「線を引く」処理をします。

  • 棚卸開始時点の最終伝票番号を記録する
  • 棚卸中に入荷したものは、別置き・別札にしてカウント対象から外す
  • 棚卸中に出荷したものは、出荷伝票を集めて後から加算・減算する
  • 「締めた時点」を全担当者に明確に伝え、時刻を記録する

要は、どの伝票までが当期でどこからが翌期かが説明できればよいということです。その線引きの記録を残すところまでが棚卸作業です。

場所が社内にない在庫の扱い

意外と抜けるのがここです。自社の倉庫にないものも、決算日時点で自社の在庫であれば計上対象になります。

種類 内容 確認方法
預け在庫 外部倉庫、協力会社、委託販売先にある自社の在庫 相手先に決算日時点の残高証明を依頼する
預り在庫 他社から預かっている在庫(自社の資産ではない) カウントから除外し、別票で管理する
輸送中在庫 出荷済み・未着、または仕入済み・未着 契約条件で所有権の移転時期を確認する
未検収品 届いているが検収前のもの 検収の完了時期を確認し、扱いを決める
貯蔵品 未使用の切手・印紙・消耗品など 決算日時点の未使用分を数える

輸送中在庫と未検収品は、契約や取引条件によって扱いが変わります。判断に迷うものはリストにして、税理士に確認してください。

原本の保管と差異が出たときの対応

数え終わったカウント表の原本は、修正液や消しゴムを使わずに保管します。書き間違えたときは二重線と訂正印で直します。集計後のExcelだけを残して原本を捨てるのは避けてください。棚卸表は決算書の根拠資料であり、税務調査でも確認される可能性があります。

帳簿在庫と実地棚卸に差異が出た場合は、次の順で調べます。

  1. 数え間違い・記入漏れを疑う:単位、入数、重複カウント、数え忘れたエリア
  2. 伝票の未処理を疑う:未入力の入出庫伝票、締め処理漏れ
  3. 場所の漏れを疑う:預け在庫、輸送中在庫、他部署に置いてある分
  4. それでも合わないものを差異として確定する:破損、紛失、廃棄の未処理など

差異の原因が分からないまま金額だけ合わせるのは避けてください。差異の内容と原因、対応をメモに残すところまでを1セットにすると、翌期の改善につながります。金額が大きい場合の処理方法は税理士に相談してください。


残高を確定させる作業

棚卸と並行して進めるのが、貸借対照表の各残高を「説明できる状態」にする作業です。決算整理の前段階として、ここが固まっているかどうかで後の作業速度が変わります。

現金と預金

現金実査は決算日に行い、実査表を残します。金種別の枚数を書く欄を作っておくと、後から検証できます。出納帳の残高と合わない場合は、精算漏れの立替金や未記帳の支払がないかを確認します。

預金は、銀行から残高証明書を取得します。会社によっては複数の金融機関・複数口座があるので、口座一覧を作り、抜けがないかを確認してください。定期預金、外貨預金、当座借越の枠なども対象です。証明書の発行手数料がかかることが一般的です。

売掛金・買掛金

相手先ごとの残高を、先方の認識と突き合わせます。金額の大きい取引先、取引件数の多い取引先、月次で残高がずれたことのある取引先を優先してください。全先を照合できなくても、主要先だけでも決算日前に着手しておくと、後の修正が減ります。

差異の原因は、たいてい次のどれかです。

  • 締日の違い(自社は月末締め、先方は20日締め)
  • 消費税の端数処理の違い
  • 値引き・返品の反映時期の違い
  • 振込手数料の負担区分
  • 相殺取引の処理

仮払金・仮受金・立替金の解消

決算書に「仮」のつく科目が残っていると、内容の説明を求められます。決算前1か月は、これを潰す絶好のタイミングです。

  • 仮払金:出張旅費や概算払いの精算を促し、正しい科目へ振り替える
  • 仮受金:入金の内容を調べ、売掛金の入金なのか、前受金なのか、預り金なのかを確定させる
  • 立替金:社員立替、取引先立替、グループ会社間の立替を分け、回収可否を確認する
  • 前渡金・前払費用:翌期以降に対応する分を切り分ける

内容が分からない古い残高が残っている場合は、いつからあるのか、当時の担当者は誰かをメモにして税理士に相談してください。放置するとそのまま翌期に持ち越されます。

預り金の残高確認

預り金は、内訳が説明できるかどうかがすべてです。

  • 源泉所得税:決算日時点で未納付の月分と一致しているか(納期の特例を使っている場合は半年分が残る)
  • 住民税(特別徴収):控除済みで未納付の分と一致しているか
  • 社会保険料:控除方法(当月控除か翌月控除か)と納付タイミングで、残る月数が変わる
  • 雇用保険料:概算払いとの関係を確認する

残高が「なんとなく合わない」場合は、月ごとの控除額と納付額の一覧を作ると原因が見えます。


税理士に渡す資料の一覧

決算作業が滞る原因の多くは、資料の往復です。最初にまとめて渡せると、決算が一気に進みます。

分類 資料 補足
会計データ 試算表(決算日時点) 会計ソフトのデータ共有で済む場合もある
総勘定元帳 期間は決算期間全体
現預金 通帳のコピー/取引明細 全口座・全期間。ネットバンキングなら明細のPDF
残高証明書 決算日基準。金融機関ごと
現金実査表 決算日の日付と確認者入り
棚卸 棚卸表(集計表とカウント表) 単価の根拠も一緒に
債権債務 売掛金・買掛金の残高一覧(相手先別) 長期滞留分にはメモを添える
未払金・未払費用の一覧 決算日後に届いた請求書も含む
固定資産 固定資産台帳 期中の取得・除却が分かる形で
取得時の請求書・契約書 期中に取得した資産の分
借入 借入金の返済予定表 金融機関ごと・最新のもの
リース契約書 期中に開始したもの
人件費 賃金台帳 決算期間分
源泉徴収簿・年末調整の資料 該当する期の分
社会保険料の納入告知書 未払計上の根拠になる
契約・記録 主要な契約書(新規・変更分) 賃貸借、業務委託、保険など
議事録(株主総会・取締役会) 役員報酬の改定などの根拠
税務 納付書の控え 中間納付、源泉所得税など
各種届出書の控え 期中に提出したもの

前年の提出リストを流用するのがいちばん早い

この表は一般的な例です。実際にいちばん早いのは、前年に税理士へ提出した資料の一覧をそのまま使うことです。

前年のメールの添付ファイル、共有フォルダの中身、税理士から届いた「決算資料のご依頼」の文書。これらを見れば、自社で実際に必要だった資料が分かります。一般的なリストには載っていない自社固有の資料(補助金の実績報告、本部への報告書、監査対応の資料など)も、この方法でしか拾えません。

そして今年やるべきは、そのリストを更新して残すことです。今年提出したものにチェックを入れ、追加で求められたものを書き足しておけば、来年の決算準備は資料集めからではなく、リストを開くところから始められます。


納税資金の準備

決算準備でいちばん後回しにされやすく、いちばん困るのがここです。

決算1か月前から資金繰りに織り込む

決算で確定した税額は、原則として決算日の翌日から2か月以内に納付します。中小企業にとって、この支出は月商に匹敵する規模になることもあります。

準備すべき税金は、主に次のものです。

  • 法人税・地方法人税(国税)
  • 法人住民税(都道府県民税・市町村民税)
  • 法人事業税・特別法人事業税
  • 消費税および地方消費税(課税事業者の場合)

消費税は利益が出ていなくても納付が必要になる点に注意してください。預かった消費税と支払った消費税の差額を納めるものなので、赤字でも納税が生じることがあります。

概算でいいので早めに数字を出す

決算1か月前の試算表をもとに、着地見込みから概算の納税額を試算してもらいます。金額の精度より、資金繰り表に金額を入れておくことに意味があります。

あわせて確認しておきたいのが次の3点です。

  1. 中間納付をすでにしている場合、その分は確定税額から差し引かれる
  2. 翌期の中間申告・納付の要否(決算日の約8か月後にもう一度支出が来る)
  3. 納付が難しい見込みの場合の対応(早い段階で税理士と金融機関に相談する)

納付が厳しそうだと分かった時点で相談すれば、選択肢が残っています。納付期限の直前に発覚すると、打てる手はほとんどありません。資金の見通しは、決算作業の中で最も早く着手すべき項目だと考えてください。


判断が必要な論点は、必ず事前に税理士へ相談する

ここまで繰り返し書いてきましたが、決算前の判断はほぼすべて税務上の要件と結びついています。

論点 なぜ事前相談が必要か
固定資産の除却・廃棄 処分の事実と時期、証跡の残し方で扱いが変わる
修繕費と資本的支出の区分 工事の内容と金額で判断が分かれる。着工前の相談が有効
決算賞与 要件が厳格で、1つ外すとその期の費用にできない
貸倒れ 状況ごとに要件が細かく決められている
期をまたぐ売上・仕入 引き渡しや役務提供の時期で期が決まる
在庫の評価 評価方法の選択と、不良品・滞留品の扱い
消費税の各種届出 提出期限が事業年度の区切りに連動している
役員報酬・役員賞与 金額の決定方法と時期に決まりがある

インターネット上には「決算前にできる節税」といった情報が多くありますが、要件を満たさない処理は、後から否認されると加算税や延滞税の負担が生じます。しかも、そのときには修正のしようがありません。

経理担当者がやるべきなのは、判断そのものではなく、判断に必要な材料を決算日までに揃えて、税理士が判断できる状態にすることです。この記事のチェックリストは、そのための段取り表として使ってください。なお、税制は毎年改正があります。この記事の内容は2026年8月時点の一般的な整理なので、実際の適用は必ず最新の情報と顧問税理士の確認によってください。


よくある質問

Q. 決算準備はいつから始めるのが正解ですか? 在庫や固定資産がある会社なら、決算日の2か月前に日程だけ押さえ、1か月前から実作業を始めるのが目安です。とくに税理士との打合せ、棚卸の日程、株主総会の日程は相手の予定が必要なので、早く動くほど選択肢が残ります。逆に決算整理仕訳や内訳書の作成は決算日の後の作業なので、前倒しする必要はありません。

Q. 在庫がほとんどない会社でも実地棚卸は必要ですか? 棚卸資産があるなら、金額が小さくても数えて記録を残してください。少額であっても「決算日時点の在庫を確認した」記録があること自体に意味があります。貯蔵品として扱う未使用の切手・印紙・消耗品も対象になることがあるため、自社で何を棚卸資産とするかは税理士に確認しておくと確実です。

Q. 決算日が土日に当たる場合、棚卸はどうすればいいですか? 決算日当日に実施するのが原則ですが、休業日で実施できない場合は前後の営業日に行い、その間の入出庫を伝票で調整する方法が取られることがあります。ずらす日数と調整方法は会社の状況によるため、事前に顧問税理士へ相談し、採用した方法を記録に残してください。 毎年同じ方法で継続することも大切です。

Q. 決算日を過ぎてから「あれをやっておけばよかった」と気づきました。取り返せますか? 決算日時点の事実は変えられないため、その期には反映できないものがほとんどです。ただし、翌期の早い時期に処理することで翌期の数字には反映できます。気づいた内容は必ずメモに残し、翌期の決算前チェックリストに追加してください。同じ気づきを毎年繰り返さないことが、いちばんの改善です。

Q. 税理士に依頼していない場合、決算準備で気をつけることは? 自社で申告まで行う場合も、この記事のチェックリストはそのまま使えます。ただし除却、貸倒れ、決算賞与、期ズレといった判断の絡む論点は、判断を誤ったときのリスクが大きい部分です。スポット相談を受け付けている税理士事務所もあるため、判断が必要な論点だけでも専門家に確認することをおすすめします。


まとめ

  • 決算前1か月の優先順位は、作業の重さではなくタイムリミットが決算日か申告日かで決める
  • 決算日を過ぎたらできないのは、棚卸・除却・修繕・決算賞与・貸倒れの判断材料・取引の実行時期の6つ
  • 実地棚卸は事前準備が結果を決める。カウント表に帳簿数量を印字しない、預け在庫・輸送中在庫・未検収品を落とさない、原本を残す
  • 残高の確定は、現金実査・残高証明・相手先照合・仮勘定の解消・預り金の内訳確認の5点セットで進める
  • 税理士へ渡す資料は前年のリストを流用するのが最短。今年の分を更新して残せば、来年はさらに早くなる
  • 除却・修繕・決算賞与・貸倒れなどの判断は税務上の要件が絡むため、必ず事前に顧問税理士へ相談する

決算準備は、毎年ほとんど同じことを繰り返します。今年やったことをチェックリストとして残しておけば、来年は思い出すところからではなく、動くところから始められます。



参考(一次情報)

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年間スケジュール別・作業別・勘定科目別の3つの切り口で、引き継ぐべき項目を網羅したWordテンプレートです。この記事で扱った決算準備のチェックリスト、棚卸の手順、税理士への提出資料一覧の記入欄も収録しています。記入例つき版と空欄版の2種類を用意しています。

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