創作活動は事業所得か雑所得か|300万円基準と帳簿保存を解説

創作活動は事業所得か雑所得か|300万円基準と帳簿保存を解説

創作活動の収入は、事業所得と雑所得のどちらで申告するのか。ここで結論が変わると、使える制度がまるごと変わります。

ネットでは「300万円を超えたら事業所得」という説明をよく見かけますが、これは正確ではありません。判定の原則は、活動が社会通念上、事業といえる規模・態様かです。その判断で、帳簿書類を作成・保存しているかどうかが重要な材料になります。

目次

どちらになると何が変わるか

事業所得雑所得(業務に係る雑所得)
青色申告できるできない
青色申告特別控除最大65万円なし
赤字の損益通算給与などと通算できるできない
赤字の繰越し青色なら3年できない
青色事業専従者給与使える使えない
少額減価償却資産の特例青色なら使える使えない
帳簿・書類必要前々年の収入金額300万円超なら書類の保存が必要

差が大きいのは赤字のときです。会社員をしながら創作をしていて赤字が出た場合、事業所得なら給与と通算して所得税が戻ってくることがありますが、雑所得ではできません。

判定の基本は「社会通念上、事業といえるか」

そもそもの判定基準は、その活動が社会通念上、事業と称するに至る程度で行われているかです。具体的には次のような点が総合的に見られます。

  • 営利性・有償性があるか
  • 継続して反復的に行われているか
  • 相応の時間と労力をかけているか
  • 自己の危険と計算において独立して行われているか
  • その活動から生活の糧を得ようとしているか

とはいえ、これだけでは自分がどちらか判断できません。そこで実務の入口になるのが、次の帳簿の話です。

実務の分かれ目は「帳簿書類の保存」

所得税基本通達35-2の注書きでは、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当することに留意する、とされています(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)。

つまり、こう整理できます。

帳簿書類の保存収入金額原則的な取扱い
ある問わないおおむね事業所得(下の例外を除く)
ない300万円以下業務に係る雑所得
ない300万円超事業所得と認められる事実があれば事業所得

よく言われる「300万円」は、帳簿がない場合の話です。帳簿をつけていれば、収入が300万円に届かなくても事業所得として扱われる余地があります。金額ではなく帳簿が入口だと覚えてください。

帳簿があっても個別に判断されることがある

帳簿さえあれば必ず事業所得、というわけでもありません。国税庁の通達の解説では、次のような場合には個別に判断するとされています。

  • 収入金額が僅少な場合:例年、その収入が主たる収入に対して10%未満にとどまるようなケース
  • 営利性が認められない場合:例年赤字で、赤字を解消するための取組をしていないケース

会社員をしながら創作をしている人は、1つめに当たりやすい立場にあります。ただしこれは「当たったら即アウト」という基準ではなく、他の要素とあわせて個別に判断するという趣旨です。

2つめについては、赤字が続いていても売上を伸ばすための取組をしていることが分かる記録(新刊の企画、宣伝、価格や販路の見直しなど)があれば説明ができます。

やることは「帳簿をつける」だけ

帳簿というと身構えますが、必要なのは取引を記録したものです。会計ソフトでなくても、Excelでも作れます。

  1. 売上帳:日付・内容・相手先(サービス名)・金額・手数料
  2. 経費帳:日付・支払先・内容・金額・事業割合
  3. 証憑:請求書・領収書・入金明細(電子取引は電子のまま保存)

青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには複式簿記が必要ですが、10万円の控除なら簡易な記帳でも受けられます。まずは売上と経費を並べるところから始めれば十分です。

保存期間は原則7年(白色申告の一部書類は5年)です。

3つのパターンで考える

パターン1:会社員、同人活動の所得が年30万円、記帳あり

帳簿があるので入口は通ります。ただし給与に比べて収入が僅少なため、個別に判断される可能性があります。継続して頒布し、新刊を出し、宣伝もしているという実態が記録で示せるかが分かれ目です。

帳簿があるだけで自動的に事業所得になるわけではありません。営利性・継続性・活動規模などを含めて社会通念上の事業性を確認し、事業所得に当たる場合は青色申告を検討します。記帳を続けることは、その判断材料になります。

パターン2:専業、創作の収入が年180万円、記帳あり

生活の糧を得る活動であり、継続性も営利性もあります。事業所得として扱われるのが自然です。300万円に届いていないことは問題になりません。

この場合は複式簿記で記帳し、e-Taxで提出して最大65万円の特別控除を取るのが有利です。

パターン3:会社員、DL販売の収入が年40万円、記帳なし

帳簿書類の保存がなく、収入も300万円以下なので、業務に係る雑所得として扱われます。青色申告も損益通算もできません。

ただし、これで何かを失っているわけではありません。所得の計算方法は同じですし、今年から記帳を始めれば来年以降の選択肢が広がります。記帳を始めるのに、収入の大きさは関係ありません。

「事業として続けている」ことを示す記録

帳簿のほかに、次のようなものが残っていると、活動の実態を説明しやすくなります。特別なことをする必要はなく、ふだんの活動の痕跡を捨てないでおくだけです。

  • イベントの参加申込みと参加証、通販ページや告知の投稿
  • 新刊の企画・制作のスケジュール
  • 取引先とのやりとり(メール、DM、発注書)
  • 価格を見直した、販路を増やした、宣伝を打ったといった売上を伸ばすための取組の記録
  • 制作にかけた時間の記録

特に最後から2つめは、赤字が続いている場合に効いてきます。「例年赤字で、赤字を解消するための取組をしていない」に当たらないことを示せるからです。

青色申告にするための期限

事業所得として申告できるなら、青色申告を選べます。ただし事前の申請が必要です。

書類期限
個人事業の開業・廃業等届出書開業した年分の所得税の確定申告期限まで
所得税の青色申告承認申請書適用を受けたい年の3月15日まで(その年に開業した場合は開業から2か月以内)

確定申告の時期に「今年から青色にしよう」と思っても、その年分には間に合いません。来年分から青色にしたいなら、今年のうちに出しておきます。

よくある疑問

開業届を出せば事業所得になる?

なりません。開業届は届出であって、所得の区分を決めるものではありません。実態と帳簿で判断されます。ただし、青色申告をするには開業届と承認申請書が必要なので、事業として続けるつもりなら出しておく意味はあります。

会社員の副業でも事業所得になる?

なり得ます。給与所得があること自体は妨げになりません。ただし、収入が給与に比べて僅少な場合は個別判断になるため、帳簿と、継続して営利を目的にやっている記録がより重要になります。

雑所得だと何か罰があるの?

罰ではありません。所得の計算方法(収入 − 経費)は同じです。違うのは青色申告の特典と損益通算が使えないことだけです。収入が小さいうちは雑所得で申告し、記帳を続けながら事業所得へ移っていくのも自然な流れです。

まとめ

  • 判定の中心は金額ではなく帳簿書類の保存
  • 「300万円」は帳簿がない場合の話。帳簿があれば少額でも事業所得の余地がある
  • 帳簿があっても、収入が僅少・例年赤字で改善の取組がない場合は個別判断
  • 差が大きいのは赤字のとき。事業所得なら給与と通算できる
  • 青色申告承認申請書は適用したい年の3月15日まで。後から遡れない

結局のところ、事業所得として申告したいなら記帳を始めるのが最短の道です。会計ソフトを使わずに、売上と経費を入力するだけで収支内訳書まで作れるExcelを用意しています。

毎月の記帳を続けやすくする

事業所得・雑所得のどちらでも、まず必要なのは売上と経費の記録です。用途別のテンプレートをまとめています。

この記事は一般的な情報の提供を目的としています。所得区分の判定は活動の実態によって結論が変わります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。

参考にした公式情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次