「同人活動の確定申告って、いくらから必要なんですか」——これが最も多い質問です。そして、ほとんどの解説が「20万円から」とだけ書いて終わっているために、かえって混乱を生んでいます。
先に結論を書きます。20万円は売上ではなく、経費を引いたあとの所得です。そして20万円という基準が使えるのは、会社員やアルバイトで年末調整が済んでいる人だけです。専業の人にも、学生にも、この数字は当てはまりません。
この記事では、自分がどの立場なのかを先に決めてから、いくらから申告が必要になるのかを具体的な数字で確認していきます。令和8年分(2026年の活動・2027年2〜3月に申告)の金額で書いています。令和8年度税制改正で控除額が動いているため、去年の数字とは変わっています(国税庁タックスアンサーで確認。確認日:2026年9月)。
結論:立場によって「いくらから」が違う
| あなたの立場 | 所得税の確定申告が必要になるライン |
|---|---|
| 会社員・パート・アルバイトで年末調整済み(給与は1か所) | 同人活動の所得が20万円超 |
| 専業(給与がない) | 所得が控除の合計を超えたら。基礎控除だけなら所得104万円が目安 |
| 学生(アルバイトあり・扶養に入っている) | 下の「学生の場合」を参照。扶養を外れる62万円のほうが先に効いてくる |
どの立場でも共通しているのは、判定に使うのが所得だということです。
- 所得 = 売上(頒布・DL販売・原稿料などの合計) − 必要経費
具体例で確認する
例1:会社員、イベント中心(申告不要になるケース)
| 頒布の売上 | 480,000円 |
| 印刷代 | △280,000円 |
| イベント参加費(3回) | △30,000円 |
| 交通費・搬入費 | △45,000円 |
| 資料代・画材 | △40,000円 |
| 所得 | 85,000円 |
売上は48万円ですが、所得は8.5万円です。20万円以下なので、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は必要です(後述)。
例2:会社員、DL販売中心(申告が必要になるケース)
| DL販売の売上(手数料を引く前の総額) | 420,000円 |
| 販売手数料 | △25,000円 |
| PC・ソフトの費用(事業割合分) | △60,000円 |
| 資料代 | △30,000円 |
| 所得 | 305,000円 |
DL販売は印刷代がかからないぶん、売上がそのまま所得に近づきます。同じ売上規模でも、紙とDLでは結論が変わります。ここでは売上を手数料を引く前の総額で数えている点に注目してください。振込額の39.5万円を売上にしても所得は同じ30.5万円ですが、売上高だけが小さく見えてしまいます。
例3:企業からの依頼がある場合
出版社やゲーム会社からの原稿料・イラスト報酬には、10.21%の源泉徴収がかかっています。この場合、所得が20万円以下で「申告が不要」であっても、申告すれば天引きされた分が戻ってくることが多いです。不要と還付は別の話なので、源泉徴収されている人は一度計算してみることをおすすめします。還付申告は翌年1月1日から5年間できます。
学生の場合
学生のとき、意識すべき金額は3つあります。しかも、自分の税金より先に、親の税金が増えるラインが来ます。
| ライン(令和8年分) | 超えると何が起きるか |
|---|---|
| 合計所得 62万円 | 親の扶養控除から外れる。親の税負担が増える |
| 合計所得 89万円 | 勤労学生控除(27万円)が使えなくなる |
| 合計所得 104万円 | 基礎控除を超え、自分に所得税がかかり始める(他に控除がない場合) |
「合計所得」は、アルバイトの給与所得と同人活動の所得を足した金額です。アルバイト収入は、給与所得控除(最低74万円)を引いた後が給与所得になります。
たとえばアルバイト収入が90万円なら、給与所得は90万円 − 74万円 = 16万円。ここに同人活動の所得が46万円を超えて乗ると、合計所得が62万円を超えて扶養から外れます。アルバイトをしている人ほど、同人活動で使える枠は小さくなります。
なお19歳以上23歳未満の場合は、扶養控除から外れた後も特定親族特別控除によって親の控除が段階的に減っていく仕組みがあります。62万円を1円超えた瞬間に親の負担が一気に増えるわけではありません。金額の全体像は別記事にまとめています(関連記事も順次追加します)。
健康保険の扶養は別のルール
税金の扶養と、健康保険の扶養は別の基準です。健康保険は「年間収入130万円未満」で判定されることが多く、しかも経費を引く前の収入で見る運用が一般的です。同人活動の売上が大きい場合は、税金は大丈夫でも健康保険の扶養から外れることがあります。判定方法は加入している健康保険組合によって違うので、必ず保険者に確認してください。
住民税は20万円ルールの対象外
ここが見落とされがちです。20万円ルールは所得税だけの取り扱いで、住民税にはありません。所得税の確定申告をしない場合、お住まいの市区町村に住民税の申告をすることになります。
住民税の基礎控除は43万円で、所得税の基礎控除(令和8年分は最大104万円)より小さいままです。そのため所得税はかからないのに住民税はかかるという帯が存在します。「税金はゼロのはずなのに6月に納付書が届いた」という話は、ここが原因です。
なお、所得税の確定申告をすれば、その情報が市区町村に送られるため、住民税の申告を別途する必要はありません。
赤字でも申告する意味はあるか
あります。ただし事業所得として申告できる場合に限られます。事業所得なら赤字を給与などと損益通算でき、源泉徴収されていた所得税が戻ってくることがあります。雑所得ではこの通算ができません。
事業所得と雑所得の分かれ目は、実務上は帳簿書類を作って保存しているかが大きく効きます。赤字の年こそ、記帳しておく価値があります(関連記事も順次追加します)。
申告が必要なのにしていなかった場合
気づいた時点で期限後申告をすれば対応できます。自分から申告するのと、税務署から指摘されてから申告するのとでは、加算税の扱いが変わります。早いほど負担は小さくて済みます。具体的な手順は別記事にまとめます(関連記事も順次追加します)。
まとめ
- 判定は売上ではなく所得(売上 − 経費)
- 20万円ルールが使えるのは年末調整済みの給与所得者だけ
- 専業なら、基礎控除だけの場合で所得104万円が目安(令和8年分)
- 学生は合計所得62万円で親の扶養から外れる。アルバイトがあるほど枠は小さい
- 住民税に20万円ルールはない
- 源泉徴収されているなら、申告不要でも還付を受けられることが多い
結局のところ、判定に必要なのは「1年間の売上と経費を正しく集計すること」だけです。BOOTHやDLサイト、イベントの現金売上をまとめて、そのまま所得の金額まで出せるExcelを用意しています。
売上と経費を日頃から分けて記録
申告要否は売上ではなく所得で判定します。無料テンプレートと管理用Excelを、用途別にまとめました。
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。扶養の判定は健康保険組合や勤務先の家族手当の基準によっても変わります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
