「経理が属人化しているので、マニュアルを作ろう」
そう決めたところまでは良かったのに、3本目くらいで手が止まる。半年後に開いたら画面が変わっていて、直す気力がわかない。心当たりがある方は多いはずです。
原因は、たいてい根性でも文章力でもありません。最初に「何を、どこまで、いくつ作るか」を決めていないことです。全業務ぶんを同じ濃さで書こうとすると、確実に途中で止まります。
この記事では、まず引継ぎ書・マニュアル・業務フロー図・チェックリストの4つを比較して使い分けを決め、そのうえで作る順番、1本ぶんの標準フォーマット、手順の書き方、更新が回る仕組みまでを順に整理します。特定の製品を勧めることはしません。記事の最後に、経理業務の引継ぎに使えるWordテンプレートを無料で配布しています。
この記事を書いた人:中小企業の経理実務と、税理士事務所向けの実務ツール制作をしています。会計ソフトでは埋まらない「現場の手作業」を減らすテンプレートを作っています。
結論:4つの文書は役割が違う。作る前に使い分けを決める
先に結論を出します。経理の文書化でよく登場する4つは、目的も更新頻度もまったく違います。混ぜて1つにしようとすると、必ずどこかが薄くなります。
| 引継ぎ書 | 業務マニュアル | 業務フロー図 | チェックリスト | |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 担当を丸ごと渡す | 作業を再現できるようにする | 全体の流れと担当の受け渡しを見せる | 抜け漏れを防ぐ |
| 読む人 | 後任者・上司 | 実際に手を動かす人 | 上司・他部署・見直す人 | 作業中の本人 |
| 更新頻度 | 交代時+年1回 | 手順が変わったとき | 業務の流れが変わったとき | 毎月使いながら随時 |
| 書く粒度 | 業務単位(広く浅く+判断基準は厚く) | 操作単位(1手順1動作) | 工程単位(箱と矢印) | 項目単位(1行1動作) |
| 向いている業務 | 担当交代・休職時の備え | 手順が決まっている定型業務 | 複数人・複数部署がまたがる業務 | 月次決算・支払・年次イベント |
使い分けの結論を先に言うと
- 一人経理で、まず何か1つだけ作るなら → 引継ぎ書。担当が止まったときに会社が困るのは「手順が分からない」ことより「何があるのか分からない」ことだからです。
- 同じ作業を毎月別の人がやる、または新人に任せたい → マニュアル。手順を書く価値があるのは、繰り返し使う定型業務だけです。
- 請求から入金、申請から支払のように、人と部署をまたぐ → フロー図。誰から誰へボールが渡るかは、文章より図のほうが速く伝わります。
- 手順は分かっているのに毎回どこかが抜ける → チェックリスト。月次決算や支払処理は、マニュアルより1枚のチェック表のほうが効きます。
4つ全部を作る必要はありません。この記事を読んで「うちにはチェックリストで十分だった」と分かったなら、それが正解です。
引継ぎ書とマニュアルの違いをひとことで
いちばん混同されるのがこの2つです。違いは範囲と目的にあります。
マニュアルは「その作業のやり方」を書いたもの。引継ぎ書は「担当を引き渡すために必要な情報のすべて」です。引継ぎ書には作業手順に加えて、担当範囲の一覧、年間スケジュール、関係先、承認の金額基準、自社の判断ルール、過去のトラブル事例、申し送り事項が入ります。
つまり、引継ぎ書のほうが上位の概念です。マニュアルが揃っている会社なら、引継ぎ書からは「詳細は◯◯のマニュアル参照」と書くだけで済みます。逆に引継ぎ書が1本もない状態でマニュアルだけ増やしても、全体像が見えないので後任者は動けません。
引継ぎ書に何を書くかは、経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストで25項目の一覧にまとめています。マニュアル化の対象を選ぶときの棚卸しにも使えます。
マニュアルが続かない3つの理由と、その対策
作りかけで止まったマニュアルには、共通の原因があります。3つだけです。
理由1:作るのに時間がかかりすぎる
いちばん多いのがこれです。最初の1本を丁寧に作りすぎて、その労力を全業務に掛け算した瞬間に心が折れます。スクリーンショットを全画面ぶん撮り、体裁を整え、目次を作り、そこで力尽きるパターンです。
対策は3つあります。
- 1本30〜60分で書き切れる分量に上限を決める。A4で1〜2枚。それ以上になる業務は、工程で分割して別ファイルにします。
- 完成度は6割で公開する。使う人が「ここ違いました」と直せる状態のほうが、100点の下書きより価値があります。
- 先に話して、あとで文字にする。手順を口頭で説明しながら録音・録画し、それを見ながら箇条書きに起こすと、白紙から書くより格段に速くなります。
理由2:更新されないまま古くなる
会計ソフトの画面が変わった。振込の承認ルートが変わった。マニュアルはそのまま。1回でも「書いてある通りにやったら違った」が起きると、その資料はもう誰にも信用されません。
対策は、更新を個人の善意ではなく仕組みに乗せることです。
- 各マニュアルの先頭に**「最終更新日」と「更新担当者」**を必ず書く。日付がないマニュアルは、正しくても信用されません。
- 更新のきっかけを決めておく。**「手順どおりにやって1回でも詰まったら、その場で直す」**をルールにします。詰まった本人が直すのがいちばん速いからです。
- 月次のどこかで5分だけ、更新の時間を確保する(後述します)。
理由3:そもそも読まれない
置き場所が分からない、量が多くて探せない、読むより聞いたほうが早い。この3つが重なると、マニュアルは存在ごと忘れられます。
- 置き場所を1か所に統一する。フォルダを分散させないこと。「経理のことは全部このフォルダ」を徹底するだけで、利用率は変わります。
- ファイル名を検索できる言葉にする。「マニュアル01」ではなく「月次_源泉所得税の納付」のように、業務名で始めます。
- 1画面で全体が見える目次を1枚だけ作る。業務名・ファイル名・最終更新日の3列だけの表で構いません。
- 使う人が「聞いたほうが早い」と感じるなら、それは分量が多すぎるサインです。手順を削る方向で直します。
作る順番:全業務を一度に作らない
マニュアル化で失敗する最大の原因は、対象の広げすぎです。優先順位をつけて、上から3本だけ作ってください。
優先順位は「頻度 → 止まると困る → 自分しかできない」
① 頻度が高い業務 毎日・毎月やる業務から作ります。作った効果がすぐ回収でき、間違いにもすぐ気づけるからです。日次の入出金確認、経費精算のチェック、請求書の発行あたりが該当します。「年に1回の決算から作ろう」は、いちばん心が折れやすい入口です。
② 止まると困る業務 次に、その日に動かないと会社に実害が出る業務です。給与の支給、買掛金の支払、源泉所得税や住民税の納付、社会保険の手続き。担当者が急に休んだとき、誰かが代わりに実行できる状態にしておく必要があります。
③ 自分しかできない業務 最後に、属人化そのものを解消しにいきます。前任者から口頭で受け継いだままの独自ルール、特定の取引先だけの例外処理、社長にしか分からない承認の慣行。ここは手順より判断基準を書き残すことが中心になります。
最初の3本を選ぶ
紙を1枚用意して、自分の業務を書き出し、上の①②③に当てはめてみてください。両方に当てはまる業務(頻度が高く、止まると困る)が最優先です。多くの会社では、支払処理・経費精算・請求書発行のどれかになります。
3本作ったら、いったん止めて1か月運用します。本当に使われるか、直したくなる箇所はどこかを見てから、次の3本に進んでください。最初から20本の計画を立てないことが、続けるいちばんのコツです。
マニュアル1本の標準フォーマット
形式が毎回違うと、書く側も読む側も疲れます。次の8項目を固定してください。この型を守るだけで、書く時間が半分になります。
| 項目 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| ① 目的 | この作業は何のためにやるのか(1〜2文) | 取引先への支払を期日どおりに実行し、遅延と二重振込を防ぐ |
| ② 頻度と期限 | いつやるか。法定期限と社内運用日を分けて書く | 毎月20日までに一覧作成、25日に振込実行(25日が土日祝なら前営業日) |
| ③ 使うもの | システム名、帳票、ファイルの保存場所、必要な権限 | 会計ソフト/ネットバンキング(担当者権限)/支払一覧.xlsx(共有フォルダ「支払」内) |
| ④ 手順 | 1手順1動作の番号リスト | 1. 支払一覧を開く 2. 前月分の行を削除する … |
| ⑤ 判断が必要な場面と基準 | 迷う分岐と、その判断ルール | 請求書が20日を過ぎて届いた場合は翌月払いに回す。ただし手形・リース料は例外 |
| ⑥ よくあるつまずき | 過去に起きたミスと、いま何をして防いでいるか | 振込手数料の負担側を取引先ごとに確認。契約書に定めがなければ一覧の備考欄を見る |
| ⑦ 関係先 | 社内の承認者、社外の連絡先と担当者 | 承認:経理部長(100万円超は社長)/銀行:◯◯支店 法人窓口 |
| ⑧ 更新履歴 | 更新日・更新者・変更内容の3列 | 2026-08-19/山田/振込実行日を26日から25日に変更 |
この型で書くと、迷いが減る
書く側が「何を書けばいいか」で止まらなくなるのが最大の利点です。空欄が残ったら、それはまだ社内で決まっていないルールが見つかったということ。マニュアル作りの副産物として、決めるべきことが可視化されます。
とくに⑤と⑥は、あとから足していく前提で構いません。最初は空欄で公開し、実際に迷った回数だけ行が増えていくのが健全な状態です。
手順の書き方のコツ
同じ内容でも、書き方で読みやすさは大きく変わります。押さえるべきは4点です。
1手順1動作にする
1つの番号に2つ以上の動作を詰めないでください。読む人はチェックを入れながら進むので、動作が混ざると「どこまでやったか」が分からなくなります。
- 悪い例:「会計ソフトを開いて仕訳日記帳から前月分を出力し、Excelに貼り付けて合計を確認する」
- 良い例:
- 会計ソフトを開く
- 「仕訳日記帳」を表示する
- 期間を前月1日〜末日に設定する
- CSVで出力する
- 支払一覧.xlsx のシート「元データ」に貼り付ける
- 合計欄が前月の支払総額と一致することを確認する
行数は増えますが、読む時間はむしろ短くなります。
画面名とボタン名は、実物どおりに書く
「登録ボタンを押す」ではなく、画面に表示されているとおりに「[保存]をクリック」と書きます。表記が実物とずれていると、読む人はそこで手を止めて探しはじめます。
メニュー階層は「[取引]→[振替伝票]→[新規作成]」のように矢印でつなぐと、画像がなくてもたどれます。画面のとおりに書くことは、スクリーンショットの代わりになります。
判断が入る箇所は「◯◯なら△△」の条件形式で書く
経理の手順で本当に難しいのは、操作ではなく分岐です。地の文で説明すると必ず曖昧になるので、条件と結果を1行に収めます。
- 「金額が10万円以上なら、部長承認を得てから振込予約する」
- 「請求書の日付が前月なら、当月ではなく前月の月次に計上する」
- 「消費税の区分が不明なら、いったん課税で入力し、備考に『要確認』と入れて月末に税理士へまとめて質問する」
分岐が3つ以上ある場合は、文章より小さな表にしたほうが読みやすくなります。判断基準そのものの決め方は、経理の引継ぎ書テンプレート|抜け漏れを防ぐ全25項目リストの勘定科目別の考え方も参考になります。
スクリーンショットは、撮り直すコストを考えて要所だけ
画像は分かりやすい反面、更新コストがいちばん高い部分です。ソフトのバージョンが上がるたびに全部撮り直すことになり、それが更新されない一番の理由になります。
貼るのは次の場面に絞ってください。
- 文字で説明しづらい画面(設定項目が多い、同じ名前のボタンが複数ある)
- 間違えると影響が大きい画面(振込の最終確認、期首残高の設定、締め処理)
- 初めての人が迷子になりやすい入口(どのメニューから入るかが分かりにくいもの)
それ以外は文字で足ります。画像を貼るときは、赤枠で1か所だけ囲む。複数箇所を囲むと、結局どこを見ればいいか分からなくなります。
更新が回る仕組みをつくる
マニュアルは作った時点が最高品質で、そこから劣化していきます。前提として、劣化を止める仕組みをセットで作らないと必ず腐ります。
更新日と担当者を明記する
各マニュアルの先頭に「最終更新日:2026-08-19/更新者:◯◯」を入れます。目次の一覧表にも同じ日付を載せてください。1年以上更新されていない行が一目で分かる状態にしておくのが目的です。
月次で5分だけ、追記の時間を確保する
月次決算の締めの流れに、「マニュアル更新5分」を1行足してください。長い時間を取ろうとすると、いつまでも始まりません。
やることは1つだけです。その月に「あれ?」と思った箇所を、思い出せる範囲で追記する。 文章が整っていなくて構いません。「※7月から振込画面のレイアウトが変わっている」の1行でも、次の人には十分な情報です。
直すのは、変更があった業務だけ
全部を見直そうとしないでください。月次の5分で触るのは、その月に実際に手順が変わった業務、または詰まった業務だけです。何もなければ何もしない。それでいいのです。
年1回、棚卸しの日を決める
年に1度だけ、目次の一覧を上から順に見て、3つに仕分けします。決算期の直後など、比較的落ち着いている時期に日を決めておくのがおすすめです。
- 生きている:そのまま
- 古い:直す。直す時間がないなら、先頭に「※内容が古い可能性あり」と1行入れて、直す予定日を書く
- 不要:業務自体がなくなったものは削除する。残しておくと、探すときの邪魔になります
削除の判断をする日を作ることが、実は一番効きます。増える一方の資料は、量そのものが読まれない理由になるからです。
ツールの選び方:向き不向きを知って選ぶ
どのツールが最強か、という話ではありません。すでに社内で毎日開いているものを選ぶのが正解です。ここでは特定の製品名は挙げず、種類ごとの向き不向きを整理します。
| 種類 | 向いていること | 向いていないこと | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| Word・Excel | 印刷して配る、既存の様式に合わせる、表や計算を含む手順 | 同時編集、最新版がどれか分からなくなりやすい | 少人数で、共有フォルダ運用が定着している会社 |
| 共有フォルダ(クラウドストレージ含む) | 既存のファイルをそのまま置ける、導入コストが低い | 本文の検索が弱い、フォルダが増えると迷子になる | 新しいツールを増やしたくない会社 |
| Wiki・ドキュメント共有サービス | 検索、リンクでつなぐ、更新履歴が自動で残る、同時編集 | 全員がログインして使う習慣が必要、階層設計を決めないと散らかる | 複数人で運用し、更新頻度が高い会社 |
| 動画(画面録画) | 作るのが速い、操作の雰囲気が伝わる、初回の説明に強い | 目的の箇所を探しにくい、部分的な修正ができず撮り直しになる | 手順が長く、口頭説明の回数が多い会社 |
現実的な組み合わせ
多くの中小企業では、次の形に落ち着きます。
- 目次と判断基準は文字(Word・Excel・Wikiのいずれか)で持つ
- 操作の流れは動画で補う。3〜5分ずつに区切って撮る
- 文字のマニュアルから、動画の保存場所へのリンクを1行貼る
動画は長く撮らないでください。10分を超えると、見るほうも撮り直すほうも負担になります。1本3分前後を目安に、業務を区切って撮るのがコツです。
ツールを移行するとき、過去の資料を全部きれいに移そうとしないでください。よく使う上位3本だけを新しい場所に移し、残りは古い場所に置いたままにして、必要になったときに移すほうが確実に進みます。
経理のマニュアルで、特に気をつけたい3点
一般的な業務マニュアルの作法に加えて、経理には固有の注意点があります。
手順よりも、判断基準にこそ価値がある
会計ソフトの操作方法は、メーカーのヘルプにも書いてあります。自社のマニュアルにしか書けないのは、次のような内容です。
- 会議費と接待交際費を、自社では何円で線引きしているか
- どの支払から、誰の承認が必要か
- この取引先の請求書は、なぜ毎回この科目に入れているのか
- 修繕費と資本的支出で迷ったとき、誰に、どのタイミングで聞くか
そして、そう決めた理由も1行添えてください。 理由が分からないルールは、後任者が「意味がなさそうだから」と勝手に変えてしまい、前年比較が壊れる原因になります。
なお、税務の取扱いは制度改正で変わります。この記事の内容は2026年8月時点の一般的な整理です。インボイス制度や電子帳簿保存法のように改正が続く分野は、マニュアルに書いた判断基準そのものが古くなることがあります。年1回の棚卸しのタイミングで、顧問税理士に「変わったところはありますか」と確認する運用にしておくと安全です。
パスワードや口座情報は、マニュアルに書かない
マニュアルは引継ぎ書より閲覧範囲が広く、コピーされやすい資料です。次の情報は書かないでください。
- ログインパスワード、ワンタイムパスワードの取得手段の詳細
- ネットバンキングの電子証明書に関する情報
- 自社および取引先の口座番号
書いてよいのは、IDの種類、保管場所、管理者は誰かまでです。「ネットバンキングのIDは総務部長が管理。利用申請は所定の様式で」と書いておけば、後任者は動けます。
担当者が交代したときは、パスワードの変更と旧担当者のアカウント停止までを手順に含めてください。これはマニュアルに書くべき手順そのものです。
証憑の保存ルールは必ず入れる
作業手順だけ書いて、書類とデータの扱いが抜けているマニュアルは非常に多いです。各業務のマニュアルに、次の4点を必ず入れてください。
- 何を保存するか:請求書、領収書、契約書、納品書、通帳の写しなど
- どこに保存するか:紙ならどのキャビネットの何年度のファイル、電子ならどのフォルダ
- どう保存するか:電子で受け取ったものは電子のまま保存するのが原則です。紙で受け取ったものの扱いは、自社が採用している方式によって変わります
- いつまで保存するか:保存期間は書類の種類や会社の状況で異なります
電子帳簿保存法まわりの要件は改正が続いています。自社がどの方式で運用しているかを含め、具体的な取扱いは顧問税理士や国税庁の最新の案内で確認してください。マニュアルには「自社ではこうしている」を書き、根拠の確認先も1行添えておくと、後任者が判断できます。
(関連記事:経理の引継ぎ書テンプレート)
よくある質問
Q. マニュアルと引継ぎ書、どちらから作るべきですか? 担当交代や休職の予定があるなら引継ぎ書が先です。全体像がないまま個別マニュアルだけ増やしても、後任者は何が自分の担当なのか分かりません。交代の予定がなく、日々の作業を誰かに分担したいという目的なら、頻度の高い業務のマニュアルから作って構いません。
Q. 一人経理です。自分しか読まないマニュアルを作る意味はありますか? あります。自分が休んだとき、辞めるとき、そして年1回の業務を1年後の自分がやるときに効きます。とくに年次業務は、去年の自分が他人のようなものです。作業しながら気づいたことをその場でメモに足していく形で十分機能します。
Q. どのくらいの分量が適切ですか? 1本あたりA4で1〜2枚を目安にしてください。それを超える業務は工程で分割します。「支払処理」が長くなるなら、「支払一覧の作成」と「振込の実行」に分けるイメージです。分量が増えるほど読まれなくなり、更新もされなくなります。
Q. 会計ソフトの操作方法も書くべきですか? 基本操作は書かなくて構いません。メーカーのヘルプやマニュアルへのリンクを1行貼るだけで十分です。書くべきは、自社独自の設定、自社で決めている入力ルール、そのソフトで間違えやすい箇所です。ソフトの画面は更新されるため、書くほど陳腐化が早くなります。
Q. 作ったマニュアルが本当に使えるか、どう確認すればいいですか? その業務をやったことがない人に、マニュアルだけ渡してやってもらうのがいちばん確実です。質問された箇所が、そのまま不足している箇所です。社内に適任者がいなければ、1か月後の自分が読んで手が止まる箇所を直す方法でも効果があります。
まとめ
- 引継ぎ書・マニュアル・フロー図・チェックリストは目的が違う。作る前に使い分けを決める
- マニュアルが続かない原因は、作るのに時間がかかりすぎる・更新されない・読まれないの3つ。分量の上限、更新日の明記、置き場所の統一で対処する
- 作る順番は①頻度が高い業務 ②止まると困る業務 ③自分しかできない業務。まず3本作って1か月運用する
- 1本の型は「目的/頻度と期限/使うもの/手順/判断基準/つまずき/関係先/更新履歴」の8項目に固定する
- 経理では手順より判断基準に価値がある。パスワードと口座情報は書かず、証憑の保存ルールは必ず入れる
マニュアル作りは、完成させる作業ではなく、育てる作業です。今日は1本だけ、いちばん頻度の高い業務から書いてみてください。
経理の引継ぎ書テンプレート(Word・全35ページ)を無料配布中
年間スケジュール別・作業別・勘定科目別の3つの切り口で、引き継ぐべき項目を網羅したWordテンプレートです。記入例つき版と空欄版の2種類を用意しています。マニュアル化すべき業務の棚卸しにも、そのまま使えます。
