白色申告だから帳簿は適当でいい――これは今では通用しない誤解です。現在は白色申告者にも記帳と帳簿保存が義務付けられており、確定申告では収支内訳書の提出が必要です。とはいえ会計ソフトを契約するほどの取引量ではない小規模な事業なら、Excelの集計表で十分に対応できます。
この記事では、白色申告の帳簿づけの要件を確認したうえで、月別の売上・経費集計から収支内訳書への転記までを一気通貫でこなすExcelシートの作り方を解説します。日々の記帳→月次集計→収支内訳書が1つのファイルで完結する構成です。
白色申告の帳簿要件と収支内訳書の基礎知識
白色申告者に求められる帳簿は「法定帳簿」と呼ばれ、売上などの収入金額と仕入・経費を、取引の年月日・相手方・金額がわかるように記録すれば足ります。青色申告のような複式簿記は不要で、いわゆる単式簿記(お小遣い帳形式)で構いません。少額な取引は日々の合計金額でまとめて記載できる簡便な方法も認められています。帳簿の保存期間は原則7年(書類は5年)です。
収支内訳書(一般用)は2ページ構成です。
- 1ページ目:収入金額・売上原価・経費の内訳から所得金額まで(損益計算書に相当)
- 2ページ目:月別の売上・仕入、売上先・仕入先の内訳、減価償却費の計算など
つまり、月別に売上と経費を科目ごとに集計できていれば、収支内訳書はほぼ写すだけで完成します。Excelシートもこの構造に合わせて設計します。
Excelで収支内訳書を作る手順
ステップ1:日々の取引を記録する帳簿シートを作る
1枚目のシートに、日付/相手先/内容/科目/収入金額/経費金額の6列の明細表を作ります。科目列は入力ミス防止のため、データの入力規則でプルダウン化するのがポイントです。科目リストは収支内訳書の様式に合わせ、給料賃金・外注工賃・減価償却費・地代家賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・接待交際費・消耗品費・雑費などを用意します。
ステップ2:月別×科目のクロス集計表を作る
2枚目のシートに、縦=科目、横=1月〜12月+合計のマトリクスを作り、SUMIFS関数で帳簿シートから自動集計します。
=SUMIFS(帳簿!$F:$F, 帳簿!$D:$D, $A3, 帳簿!$A:$A, ">="&DATE(2026,B$1,1), 帳簿!$A:$A, "<="&EOMONTH(DATE(2026,B$1,1),0))
A3が科目名、B1行が月番号です。この表の売上行がそのまま収支内訳書2ページ目の「月別売上(収入)金額」に、各科目の合計列が1ページ目の経費欄になります。
ステップ3:収支内訳書の様式に沿った転記シートを作る
3枚目のシートに収支内訳書1ページ目の項目を上から順に並べ、すべて集計シートのセル参照で埋めます。所得金額までの計算も数式化します。
売上原価 = 期首棚卸高 + 仕入金額 − 期末棚卸高
差引金額 = 収入金額合計 − 売上原価
所得金額 = 差引金額 − 経費合計 − 専従者控除
減価償却がある場合は、資産ごとの計算行(取得価額×償却率×使用月数/12)を設け、家事按分後の必要経費算入額を経費欄へ参照させます。
ステップ4:家事按分の計算欄を設ける
自宅兼事務所の家賃・電気代・通信費などは、事業使用割合を掛けた金額だけが経費になります。按分率の根拠(使用面積・使用時間など)をメモ欄に残せる形にしておくと、後から説明を求められたときに困りません。
経費算入額 = 支払額 × 事業使用割合
実務の注意点・つまずきポイント
- 収入は入金日ではなく発生日で計上:12月に納品して入金が1月の売上は、12月(本年分)の収入です。年末年始をまたぐ取引は特に注意してください。
- 生活費の支出を経費に混ぜない:白色申告でも家事関連費の区分は必須です。プルダウンに「家事(集計対象外)」の科目を作って明細ごと分けるのが安全です。
- 売上先・仕入先の内訳欄を忘れない:2ページ目には主な取引先の名称・所在地・金額を記載する欄があります。帳簿シートの相手先列をピボットテーブルで集計すればすぐ作れます。
- インボイス登録している場合:消費税申告用の集計が別途必要になります。税込・税抜や経過措置の扱いは本記事の範囲を超えるため、該当する方は消費税関連の記事もあわせてご確認ください。
- そもそも青色申告への切り替えも検討を:帳簿をExcelでここまで付けられるなら、最大65万円の特別控除が受けられる青色申告への移行も十分視野に入ります(承認申請書の提出期限にご注意ください)。
記帳義務の詳細や収支内訳書の最新様式は、申告前に国税庁サイトでご確認ください。
収支内訳書テンプレートをご用意しています
この記事の3シート構成(帳簿→月別集計→収支内訳書転記)に、科目プルダウン・SUMIFS集計・減価償却計算・家事按分欄まで組み込んだExcelテンプレートを販売しています。日々の取引を1行ずつ入力するだけで、確定申告期には収支内訳書を写すだけの状態になります。
青色申告の方はこちらの記事をご覧ください(関連記事:No.88 青色申告決算書の下書きをExcelで作る方法)。SUMIFS関数の使い方を基礎から知りたい方はこちら(関連記事:No.40 SUMIFSで集計を自動化)。
まとめ
- 白色申告にも記帳・帳簿保存の義務があり、収支内訳書の提出が必要
- 帳簿は単式簿記でOK。日付・相手方・金額がわかる明細表をExcelで作れば要件を満たせる
- 帳簿→SUMIFSで月別×科目集計→収支内訳書へ数式転記の3シート構成が実用的
- 収入は入金日ではなく発生日で計上、家事関連費は按分計算を忘れない
- ここまで記帳できるなら青色申告(最大65万円控除)への切り替えも検討価値あり

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