会計ソフトが出力する試算表は、経営判断の資料としてはほぼ機能しません。数字の羅列から「先月より良いのか悪いのか」「計画に対して進んでいるのか」を読み取るのは、経理の専門家でも一苦労だからです。
この記事では、試算表のデータを「月次推移」「前年同月比」「予算比」の3点セットに加工して、ひと目で経営状態がわかる月次損益管理表をExcelで作る方法を解説します。
なぜ3点セットなのか
単月の数字には意味がありません。比較して初めて意味が生まれます。比較軸は3つあれば十分です。
| 比較軸 | わかること | 典型的な気づき |
|---|---|---|
| 月次推移(12ヶ月) | トレンドと季節性 | 「粗利率がじわじわ下がっている」 |
| 前年同月比 | 季節性を除いた成長度 | 「繁忙月なのに前年を割った」 |
| 予算比 | 計画に対する進捗 | 「売上は達成、でも経費が超過」 |
作り方:会計データを「使える形」に変える
ステップ1:会計ソフトから月次データをエクスポート
弥生会計・freee・マネーフォワードのいずれも、月次推移表(科目×月)のCSV出力ができます。これを「データシート」に貼り付けます。加工は絶対にデータシートでは行わず、表示用シートに関数で参照させる——この分離が毎月の更新を「貼り替えるだけ」にする鍵です。
ステップ2:表示用シートの科目を絞る
経営判断に使う表は、勘定科目を全部並べる必要はありません。売上高(部門・商品群別に2〜5行)、売上原価、粗利、主要経費5〜8行(人件費・地代家賃・広告費など)、営業利益、経常利益——合計15〜20行に要約します。細かい科目はデータシートに残っているので、必要なときだけ掘ればよいのです。
表示用シートの各セル =SUMIFS(データ!金額範囲, データ!科目範囲, $A3, データ!月範囲, C$1)
(複数科目をまとめる行は、科目対応表を作ってSUMIFSの条件に使う)
ステップ3:前年比・予算比の列を追加
前年同月比 =IFERROR(当月/前年同月-1,"") →表示形式 +0.0%;-0.0%
予算比 =IFERROR(当月実績/当月予算,"") →達成率100%基準
条件付き書式: 前年比マイナス/達成率90%未満を赤字表示
前年データと予算データは、それぞれ別シートに同じ科目構成で持たせます。予算の立て方自体は年度予算の記事で解説しています。(関連記事:No.177 年度予算の作り方/No.20 予実管理表)
ステップ4:視覚要素を足す
- スパークライン:各行の右端に12ヶ月のミニグラフを置くと、トレンドが行単位で見える
- 粗利率・営業利益率の行を金額の下に%で追加(率の変化は金額より早く異常を教えてくれる)
- 売上と営業利益だけの折れ線グラフ(前年を点線で重ねる)を1つ——グラフは増やしすぎない
月次で見るときのチェック順序
- 粗利率の変化:売上より先に率を見る。仕入高騰・値引き・商品構成の変化が最初に現れる
- 固定費の異常値:前年同月比で大きく動いた経費行だけ内訳を確認
- 予算との累計差異:単月のブレは気にしない。累計で開き続けていたら計画の前提を見直す
この3点を毎月同じ順序で見るだけで、月次チェックは15分で終わります。税理士事務所であれば、この表に一言コメントを添えるだけで月次報告の品質が大きく変わります。(関連記事:No.34 顧問先に喜ばれる月次報告資料)
月次損益管理テンプレートのご案内
CSV貼り付け→自動で3点セット表示(要約20行・前年比・予算比・スパークライン・異常値ハイライト)まで組み上げた月次損益管理表テンプレート(Excel)を用意しています。弥生・freee・マネーフォワードの月次推移CSVに対応した科目対応表つきです。
まとめ
- 試算表は「月次推移・前年同月比・予算比」の3点セットに加工して初めて経営資料になる
- データシートと表示用シートを分離し、毎月の更新は「CSVを貼り替えるだけ」にする
- 科目は15〜20行に要約。細部はデータシートに残せばよい
- チェックは「粗利率→固定費の異常→累計差異」の順で毎月15分

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