月次報告資料をExcelで作る方法【指標・評価・所見まで自動化】

顧問先に喜ばれる月次報告資料をExcelで作る方法【グラフと一言コメント】

試算表を渡して「今月も順調ですね」で終わる月次報告と、1枚のレポートを挟んで「限界利益率が3ヶ月続けて下がっています。仕入単価ですか、値引きですか」と切り出す月次報告。顧問料の差がつくのはこの瞬間です。

とはいえ、毎月1社ずつレポートを手作りしていては続きません。この記事では、月次報告 資料 税理士 エクセルというテーマで、試算表をそのまま渡すのをやめ、グラフ・指標・一言コメントで構成した1枚レポートをExcelで量産する方法を解説します。データを更新すれば中身が入れ替わる設計にしておけば、毎月人の手が要るのはコメントだけになります。

さらに後半では、多くの月次報告がぶつかる「グラフと指標は出たが、で、結局どうなのか」という壁の越え方――数字を文章に翻訳する仕組みと、経済産業省のローカルベンチマークと同じ6指標を月次に落とし込む方法まで踏み込みます。

目次

経営者が月次報告に求めているのは3つだけ

試算表は会計の専門家のための帳票です。勘定科目が科目コード順に並び、当月と累計が並列に表示される――これは記帳が正しいかを確かめるための並び方であって、経営判断のための並び方ではありません。

経営者が知りたいのは、突き詰めると次の3つです。

  • 儲かっているのか――売上ではなく、限界利益と営業利益がどう動いたか
  • お金は足りるのか――利益ではなく、現預金がいつまで持つか
  • 何か手を打つべきことはあるか――今月の数字のうち、放っておくと困るものはどれか

試算表はこの3つのどれにも直接は答えません。答えられる形に変換することが、月次報告の付加価値そのものです。そして変換の型さえ決まっていれば、その作業はほとんど自動化できます。

もうひとつ見落とされがちなのが、比較の相手がないと数字は読めないという点です。売上1,200万円という数字だけでは良いも悪いもありません。前年同月、年間目標に対する進捗、業種の平均――この3つのどれかと並べて初めて、数字は意味を持ちます。レポート設計では「毎月どの相手と比べるか」を先に決めておきます。

月次報告レポートの構成:6つのパーツ

A4縦1枚に載せるのは、次の6つで足ります。増やすほど読まれなくなります。

パーツ内容作り方
①今月の要点(3行)良かったこと・気になること・来月の論点を各1行唯一の手書き部分。ここが価値の核心
②売上・限界利益のグラフ月次推移12ヶ月に前年同月を重ねる月次データから自動生成
③利益の状況営業利益の推移、損益分岐点比率、年間目標に対する進捗率同上
④資金の状況現預金残高の推移、借入残高、現預金月商倍率残高データから参照
⑤重要指標限界利益率・労働分配率・売上債権回転期間など、業種に合わせて固定自動計算
⑥所見しきい値に触れた論点だけを、状況・根拠・打ち手の順で文章に判定ルールで半自動化
②〜⑥は自動化し、①に時間を使う

②〜⑤の作り方は、月次損益管理表(No.17 月次損益管理表をExcelで作る方法)と資金繰り表(No.16 資金繰り表の作り方)で作ったデータをそのまま参照するのが早道です。増減要因を見せたい月だけ、ウォーターフォール図(No.146 ウォーターフォールグラフで利益の増減要因を見せる方法)を差し込みます。

Excelで仕組み化する4つの設計

1. データと見た目を分離する

入力用のシートと、印刷するレポートのシートを分けます。レポートシートには数式しか置かず、数字は一切直接書き込みません。入力シートを更新すれば、グラフも指標も所見も当月版に入れ替わる――この状態になって初めて「量産できるテンプレート」になります。

入力シートの行は、なるべく少なくします。毎月確実に入る項目だけを必須にして、残りは任意にしておくのが続けるコツです。収益性の指標だけなら、次の5行で出ます。

  • 売上高
  • 前年同月の売上高
  • 変動費(仕入・売上原価・外注費など、売上に連動する費用)
  • 人件費(役員報酬・給与・法定福利費)
  • その他固定費(家賃・経費)

効率性・安全性の指標を出すには、これに月末残高(現預金・売上債権・棚卸資産・仕入債務・借入金・純資産・総資産)が要りますが、毎月入れる必要はありません。入力のある最後の月の残高を期末残高として扱う設計にしておけば、四半期ごとでも成立します。

2. 変動費と固定費の区分を最初に決めて固定する

限界利益率・労働分配率・損益分岐点比率は、いずれも変動費と固定費の区分に依存します。区分を途中で変えると、過去の月と比較できなくなります。顧問先ごとに「外注費は変動費」「販売手数料は変動費」といった取り決めを最初に決め、設定シートに科目名として書き出しておきます。

損益分岐点の考え方そのものはNo.18 損益分岐点売上高の計算、労働分配率の水準の見方はNo.87 労働分配率と人件費の適正水準で詳しく扱っています。

3. グラフは少なく、毎月同じ形で

  • グラフは1枚あたり3つまで。多いほど読まれなくなる
  • 毎月同じ形・同じ位置に置く。経営者が「見方」を覚えるので、こちらが指摘する前に変化に気づくようになる
  • まだ来ていない月は、0ではなく空白として扱う。0で埋めると折れ線が急降下して、減少しているように見える

指標が10個を超えてきたら、折れ線を増やすのではなくヒートマップに切り替えます。縦に指標、横に12ヶ月の表を作り、目標や業種平均に対する達成度でセルを塗る方法です。どの指標が、どの月から崩れたのかが表を見た瞬間に分かります。ダッシュボード全体の配置設計はNo.200 1枚で経営が見えるExcelダッシュボードの作り方にまとめています。

4. 印刷・PDF化まで作り込む

A4縦1枚に収まるよう印刷範囲を固定し、事務所名と作成日、担当者名を入れます。見た目の完成度は内容の信頼度に直結します。設定の詳細はNo.99 Excel帳票を美しく印刷する設定を参照してください。決算のときは、この月次レポートの延長線上で決算報告書を作れば一貫性が出ます(No.122 顧問先に渡す決算報告書をExcelで美しく作る方法)。

「で、結局どうなの?」に答える:指標を文章に変える

点数やグラフだけでは行動は変わらない

指標を並べたレポートを作ると、たいてい同じ反応が返ってきます。「……で、結局うちはどうなんですか」。数字を見慣れていない経営者にとって、限界利益率38%という表示は、良いのか悪いのかの判断材料になりません。点数化しても同じで、「総合23点・Bランク」だけでは翌月の行動は変わりません。

変わるのは、数字が文章になったときです。しかもその文章は、毎月ゼロから考えるものではなく、型で作れます。

所見の型:状況・根拠・打ち手の3点セット

所見は次の3つをこの順で書きます。どれが欠けても、読んだ人は動けません。

  • 状況――何が起きているかを、金額と期間を入れて書く。「増収なのに現預金が減っています」
  • 根拠――なぜそう言えるかを、指標と比較対象で示す。「売上は期首3ヶ月平均から◯円増えましたが、同じ期間に売上債権が◯円、棚卸資産が◯円増えています」
  • 打ち手――どうすれば理想に近づくかを、具体的な選択肢で示す。「回収サイトの短縮と在庫の絞り込みのどちらを先に手当てするかを決めてください。当座貸越枠の設定も選択肢です」

この型の利点は、判定条件さえ決めればExcelの数式で組めることです。「条件に触れたら、この文章を、この数字を埋め込んで出す」というルールを並べておき、触れた論点だけを優先度順に並べる。人が書くのは、機械が出した所見に顧問先の個別事情を足す部分だけになります。

判定ルールの例

分類判定条件の例出す所見の見出し
資金現預金残高が平均月商を下回った月がある現預金が月商1ヶ月分を下回った月があります
資金売上が増えているのに現預金が減っている増収なのに現預金が減っています
収益性損益分岐点比率が100%を超えた月がある損益分岐点を割り込んだ月があります
収益性増収だが営業利益が前年を下回っている増収なのに営業利益が減っています
効率性棚卸資産回転期間が期首3ヶ月平均より伸びている棚卸資産の回転が遅くなっています
生産性労働分配率が50%を超えている労働分配率が50%を超えています
良好営業利益率が業種の基準値を上回っている営業利益率は業種平均を上回っています
悪い点だけでなく「うまくいっている点」のルールも用意しておく

最後の行が重要です。指摘ばかりが並ぶレポートは、読むのが苦痛になって続きません。うまくいっている点を拾うルールを必ず入れておきます。

ローカルベンチマークの6指標を月次に落とし込む

指標を自分で選ぶと、顧問先ごとにバラバラになり、事務所内でも引き継げなくなります。共通の物差しが欲しいときに使いやすいのが、経済産業省が公表しているローカルベンチマークの財務6指標です。金融機関との対話でも使われている定義なので、説明の手間が省けます。

指標計算式月次に落とすときの注意
①売上増加率(当期売上高 ÷ 前期売上高)− 1月次では年計どうしで比べる。単月比較はぶれる
②営業利益率営業利益 ÷ 売上高賞与や決算整理のある月だけ極端に振れる
③労働生産性営業利益 ÷ 従業員数年額の指標。経過月数から年換算して比べる
④EBITDA有利子負債倍率(借入金 − 現金預金)÷(営業利益 + 減価償却費)借入金が現金預金以下なら「無借金」扱い
⑤営業運転資本回転期間(売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務)÷ 平均月商残高は期末(入力のある最後の月)を使う
⑥自己資本比率純資産 ÷ 総資産月次では大きく動かない。四半期でも足りる
ローカルベンチマークの財務6指標と、月次に落とすときの扱い

本来は決算数値で年1回評価するものですが、これを月次で回すと、決算1回では見えないものが見えます。すなわち「どの月から崩れたのか」です。月ごとの合計点を横に並べるだけで、いつ何が起きたのかが記録として残ります。

指標の算出そのものをExcelで組む手順はNo.79 経営分析指標をExcelで自動計算するダッシュボードの作り方に、キャッシュフロー計算書まで含めて作る場合はNo.19 キャッシュフロー計算書をExcelで作成する方法にまとめています。

実務でつまずくポイント

  • 期の途中から始められない設計にしてしまう――年間12ヶ月そろわないと計算できない数式にすると、導入が翌期まで遅れます。経過月数を数えて年換算する作り(年計 ÷ 経過月数 × 12)にしておけば、5月から始めても成立します。未入力の月は必ず空白のまま計算対象から外します。
  • 0と空白を区別していない――未入力を0として計算すると、平均が下がり、グラフが落ち込み、所見が誤作動します。入力セルが空ならすべての計算結果も空にする、という分岐を最初から全数式に入れておきます。
  • 従業員数を入れ忘れて生産性が出ない――一人当たりの指標は従業員数がないと出ません。設定シートに既定値を置き、増減した月だけ上書きする形にすると入力が軽くなります。
  • 貼り付けで書式が壊れる――会計ソフトからコピーしたデータを通常の貼り付けで入れると、入力セルの色や表示形式が消えます。顧問先に渡す場合は「値のみ貼り付け」を手順書に明記します。
  • 所見を機械の出力のまま渡してしまう――判定ルールは季節性や業種特性を知りません。繁忙期の在庫増は正常なのに「現金が在庫に置き換わっています」と出ます。出た所見を採否する判断は必ず人が行います。
  • 参考値であることを書いていない――指標の定義も業種の平均値も出典によって異なります。顧問先に渡す資料には、参考値である旨と、経営判断は別途相談のうえ行う旨を明記しておきます。

来月以降の論点を先回りして書くには、納税スケジュール(No.11 中間申告の管理)と予実(No.20 予実管理表をExcelで作る方法)を手元に置いておくと書きやすくなります。

よくある質問

1件あたりどれくらいの時間で作れますか

初月はデータの取り込み方と変動費の区分を決める必要があるため、時間がかかります。2ヶ月目以降は、データの更新と所見の採否・加筆だけになります。かかる時間は入力方法によって大きく変わるので、まず1件で実測してから展開することをおすすめします。

会計ソフトからの自動連携はできますか

APIでつなぐ方法もありますが、事務所単位で維持するには負担が大きくなりがちです。月次推移のCSVを出力して所定のシートに値貼り付けする方式が、壊れにくく引き継ぎやすい落としどころです。CSVの整形が必要な場合はNo.43 銀行明細CSVを会計ソフト取込用に整形するExcelテクニックの考え方が使えます。

ローカルベンチマークは無料なのに、わざわざExcelで作る意味はありますか

ローカルベンチマークは決算数値を年1回入力して評価するツールです。月次で回す、コメントを自動で下書きする、顧問先ごとのフォーマットを揃えて毎月印刷する、といった使い方には向いていません。年1回の評価はローカルベンチマーク、月次のモニタリングはExcel、と役割を分けるのが現実的です。

顧問先が小規模で、残高データが毎月そろいません

必須の5行(売上高・前年同月売上高・変動費・人件費・その他固定費)だけでも、限界利益率・営業利益率・損益分岐点比率・前年同月比・目標進捗率は出ます。残高は入れられる月だけで構いません。全部そろわないと使えない設計にしないことが、続けるための条件です。

所見の文章をそのまま顧問先に渡してよいですか

そのままは避けてください。判定ルールは数字としきい値しか見ていないため、季節性・個別の事情・進行中の投資などは反映されません。出てきた所見を担当者が選び、事情を1行足したうえで渡す――この一手間が、そのまま顧問料の根拠になります。

月次報告テンプレートのご案内

この記事の設計をそのまま形にしたExcelテンプレートを2種類用意しています。出てくる指標・評価・所見は共通で、違いはデータの入れ方だけです。

項目経営ダッシュボード KPI見える化シートMF月次レポート CF作成シート
データの入れ方手入力(必須は毎月5行)月次推移CSVを値貼り付け
対応する会計ソフト問わないマネーフォワードクラウド会計
キャッシュフロー計算書なしあり(間接法・残高一致の検算つき)
科目別の異常検知なしあり(前月比・前年同月比)
指標・ヒートマップ・評価・所見ありあり(同じ計算エンジン)
どちらも20指標・ローカルベンチマーク6指標の採点・文章の所見に対応

いずれも空テンプレート版と記入例つき版の2ファイル構成、Excel 2016以降で動く数式のみ(マクロなし)、A4縦で印刷できる状態に整えてあります。期の途中から入れても、経過した月数だけで評価されます。

まとめ

  • 経営者の関心は「儲かっているか・お金は足りるか・打つ手はあるか」の3つ。試算表はどれにも直接答えない
  • レポートは6パーツ構成。グラフと指標は自動化し、人はコメントと所見の採否に集中する
  • 入力と表示を分離し、必須項目は毎月5行まで絞る。0と空白を区別し、期の途中から使える設計にする
  • 点数やグラフだけでは行動は変わらない。「状況・根拠・打ち手」の3点セットで文章にする
  • 指標はローカルベンチマークの6指標を共通の物差しにし、月次で回して「どの月から崩れたか」を残す
  • 出力される所見は参考値。季節性と個別事情を人が足してから渡す
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