「来期の予算を作りましょう」と言われて、前期実績に一律5%を掛けただけの”予算らしきもの”を作っていないでしょうか。それでは月次の予実比較(関連記事:No.20 予実管理表の作り方)をしても、差異の原因が「そもそも予算が雑だった」に行き着くだけです。使える予算は、販売計画から積み上げ、損益に落とし、月次・部門に展開するという順序で作ります。
この記事では、中小企業の年度予算をExcelで組み立てる標準手順を、販売計画→原価・経費→損益予算→月次・部門展開の流れで解説します。
基礎知識:予算編成の全体フロー
予算は次の順に組むと破綻しません。①販売計画(何をいくら売るか)→②売上原価(原価率・仕入計画)→③人件費計画(人員計画×単価)→④経費予算(固定費・変動費)→⑤投資・借入返済→⑥損益予算として統合→⑦月次展開・部門展開。逆に「利益目標から逆算して売上目標を決める」トップダウン方式もあり、実務ではトップダウンの目標とボトムアップの積み上げをすり合わせるのが定石です。両者の差額(ストレッチ幅)を明示できることが、Excelで予算を組む最大の利点です。
Excelで予算を組み立てる手順
ステップ1:販売計画シート(予算の土台)
売上を「得意先別」「商品群別」「チャネル別」など、自社の管理単位で分解します。分解の軸は営業担当が自分の数字として認識できる単位を選ぶのがコツです。各行に前期実績・増減要因(値上げ・新規・失注リスク)・当期計画を並べます。
売上計画 =数量計画×単価計画 (数量×単価に分解して根拠を持たせる)
前期比 =当期計画/前期実績-1
売上予測の技術面(移動平均・季節指数など)は別記事で詳説しています(関連記事:No.179 売上予測の作り方)。
ステップ2:原価・人件費・経費予算
- 売上原価:商品群別の原価率×売上計画。仕入価格の上昇見込みは原価率に織り込み、根拠をメモ列に残す
- 人件費:人員計画表(既存+採用予定−退職見込)×1人あたりコスト(社保込み。関連記事:No.168 採用人件費シミュレーション)で積算
- 経費:勘定科目別に「固定費は前期実績±改定要因」「変動費は売上比率」で設定。削減目標は科目別に明示
ステップ3:損益予算への統合と目標とのすり合わせ
各シートを損益計算書の形式に集約し、営業利益・経常利益を自動計算します。ここで経営者の利益目標と比較し、差額が出たら「売上を積むのか、原価率を下げるのか、経費を削るのか」を感度分析(原価率1%改善で利益いくら等)を見ながら調整します。損益分岐点売上高(関連記事:No.18 損益分岐点の計算)も同じ画面に表示すると、予算の安全余裕度が分かります。
ステップ4:月次展開と部門展開
年間予算を12か月に割り付けます。単純な12等分ではなく、季節指数(過去2〜3年の月別売上構成比の平均)で配分すると、月次予実の精度が大きく上がります。
月次予算 =年間予算×季節指数
季節指数 =過去3年の当月売上合計/過去3年の年間売上合計
部門別に管理する場合は、共通費(本社費等)の配賦基準(人員数・売上比等)を決めて展開します(関連記事:No.82 部門別損益の作り方)。ここまで作れば、月次の予実管理表にそのまま接続できます。
実務の注意点・つまずきポイント
- 精緻にしすぎない:初年度から科目を細かくすると更新が続きません。売上と主要原価・人件費に力を入れ、他は大づかみで始めます
- 予算の「根拠メモ」を必ず残す:期中に予実差異を分析するとき、「この数字は何を前提にしたか」が残っていないと検証できません。各行にメモ列を設けます
- 資金繰り予算もセットで:損益予算だけでは借入返済・投資の資金不足に気づけません。損益予算から資金繰り予定表(関連記事:No.16 資金繰り表の作り方)へ連動させます
- 期中の予算修正ルールを決めておく:大きな環境変化時に「当初予算+見込み(フォーキャスト)」の2本立てで管理すると、予算が形骸化しません
- 作りっぱなしが最大の失敗:毎月の予実レビュー会議(15分でも可)をセットにして初めて予算は機能します
年度予算テンプレートのご案内
本記事の設計(販売計画→原価・人件費・経費→損益統合→季節指数の月次展開→部門展開)を組み込んだ「年度予算策定Excel」を用意しています。予実管理表とシート構造を揃えてあるため、期が始まったらそのまま月次管理に移行できます。両テンプレートのセットでの導入がおすすめです。
まとめ
- 予算は販売計画→原価・人件費・経費→損益統合→月次・部門展開の順で組む
- トップダウン目標とボトムアップ積み上げの差額を見える化してすり合わせる
- 月次展開は12等分でなく季節指数で配分すると予実の精度が上がる
- 各数字に根拠メモを残し、資金繰り予算もセットで作る
- 毎月の予実レビューとセットで運用して初めて予算は機能する

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