領収書が出ない支払いを記録するために使うのが出金伝票です。文房具店の店主から手書きの領収書をもらい損ねた、慶弔費を包んだ、自動販売機で来客用の飲み物を買った——こうした支出を「なかったこと」にしないための書類です。文具店で売っている伝票綴りをそのまま使っている会社も多いはずです。
ところが伝票を印刷して使おうとすると、無料テンプレートはたいていA4用紙1枚に伝票1枚しか配置されておらず、余白が半分以上あきます。合計欄も手計算です。小さな書類なのに、紙と手間だけは一人前にかかる——これが出金伝票の地味な不便さです。
この記事では、出金伝票をExcelで作るときの実務的な設計と、インボイス制度のもとで出金伝票がどこまで通用するのかを整理します。あわせて、A4用紙1枚に2枚分を配置した出金伝票テンプレート(Excel)を無料でダウンロードいただけます。
出金伝票テンプレートの無料ダウンロード
- ファイル形式:Excel(.xlsx)/A4縦1ページに伝票2枚+切り取り線
- シート構成:入力用/記入例/使い方の3枚
- 1伝票あたり8明細行+合計の自動計算
- 入力補助:勘定科目18種のドロップダウン
- 日付:「2026/4/15」と入力するだけで「2026年4月15日」表示
マクロ(VBA)は使用していません。社内利用・顧問先への配布ともに自由にお使いいただけます(再配布・再販売のみご遠慮ください)。
A4に2枚並べるだけで用紙が半分になる
出金伝票はもともと市販の伝票綴りに合わせた小さな様式です。A4縦の紙に1枚だけ配置すると、下半分がまるごと余ります。伝票を月に何十枚も切る会社なら、この余白がそのまま用紙代とトナー代になります。
やることは単純で、同じ様式を上下に2つ並べ、真ん中に切り取り線を入れるだけです。1枚だけ使いたいときは下側を空欄のまま印刷し、切って保管します。無料テンプレートでこの配置になっているものは、意外なほど見かけません。
実装上のポイントは、2枚目の数式が1枚目の行を参照しないよう、伝票ごとに独立した合計範囲を持たせることです。行を挿入して2枚目を作ると参照がずれることがあるので、コピー後に必ず合計欄の参照範囲を確認してください。
出金伝票に持たせる項目
| 項目 | 入力方法 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| 日付 | 手入力(日付形式) | 表示形式で「○年○月○日」に。年月日を別セルに分けない |
| 伝票No. | 手入力 | 連番。現金出納帳との突合キーになる |
| 支払先 | 手入力 | 店名・氏名。ここが空欄の伝票は証拠力が落ちる |
| コード | 手入力 | 会計ソフトの科目コード。使わなければ空欄で可 |
| 勘定科目 | ドロップダウン | 表記ゆれを防ぐ |
| 摘要 | 手入力 | 「何を・何のために」を具体的に |
| 金額 | 手入力(数値のみ) | 合計は自動計算 |
| 承認・確認・係 | 押印欄 | 印鑑が収まる大きさを確保する |
日付を「年」「月」「日」の3セルに分けている様式が多いのですが、Excelでは1セルに日付として入力し、表示形式yyyy"年"m"月"d"日"で見せるのが正解です。3セルに分けると日付として扱えなくなり、並べ替えも期間集計もできません。
摘要は「消耗品」ではなく「コピー用紙A4 500枚×5」のように、第三者が読んで支出内容が復元できる粒度で書かせてください。出金伝票は自社で作った書類なので、外部の証憑と違って内容の具体性そのものが信頼性になります。
組み込む数式
合計 =IF(COUNT(金額列)=0,"",SUM(金額列))
日付の表示形式 yyyy"年"m"月"d"日"
金額の表示形式 #,##0
合計をCOUNTで判定して空欄なら空文字を返すのは、2枚目を使わずに印刷したときに「0」が残らないようにするためです。空欄の伝票に「0」が印字されていると、記入漏れなのか本当に0円なのか区別がつきません。
インボイス制度で出金伝票はどこまで通用するか
ここがいちばん誤解の多いところです。結論から言うと、出金伝票を書けば消費税の仕入税額控除が受けられる、ということではありません。出金伝票はあくまで自社が作成した内部書類であり、原則として必要なのは取引の相手方が発行した適格請求書だからです。
一方で、そもそも適格請求書の保存が不要とされている取引もあります。この場合は帳簿の保存だけで控除が認められるので、出金伝票が記録として機能します。代表的なものは次のとおりです。
- 公共交通機関特例……鉄道・バス・船舶による旅客の運送で、1回の取引の税込価額が3万円未満のもの。タクシー・航空機は対象外です
- 自動販売機特例……自動販売機・コインロッカー・コインランドリー、ATMの手数料などによる、税込3万円未満の販売・役務提供。コインパーキング・セルフレジ・自動券売機は対象外なので注意してください
- 出張旅費等特例……従業員に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、その旅行に通常必要と認められる部分(所得税基本通達9-3により判定します)
- 少額特例……基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が行う、税込1万円未満の課税仕入れ(令和11年9月30日までの時限措置)
公共交通機関特例・自動販売機特例・出張旅費等特例では、帳簿の摘要欄に「どの特例に該当するか」を記載することが要件になっています(少額特例については、この記載は不要です)。出金伝票の摘要欄に「自販機特例」などと書いておけば、そのまま帳簿への転記材料になります。
逆に、これらの特例に当てはまらない支出について領収書をもらい忘れた場合、出金伝票を書いても消費税の控除はできません。法人税・所得税の経費としては損金・必要経費に算入できても、消費税は別という二段構えになります。この違いを社内で共有しておかないと、期末に想定外の納税額が出ます。
また、香典・祝儀といった慶弔費はそもそも消費税の課税対象外(不課税)ですので、控除の話は生じません。この場合は出金伝票に加えて、案内状や会葬御礼などを一緒に保存しておくと支出の事実が裏づけられます(No.166 慶弔見舞金規程のひな形)。
なお、少額特例のように適用期限が設けられている特例もあり、改正の可能性があります。実際の処理にあたっては公開時点の国税庁の資料でご確認ください(No.5 インボイス対応の消費税区分集計)。
出金伝票を減らすという発想
出金伝票が毎月何十枚も出るということは、それだけ現金支出が多いということでもあります。現金は残高の不一致・紛失・不正のリスクをまとめて抱える決済手段です。法人カードや振込に寄せられる支出は寄せてしまえば、伝票そのものが不要になります。
- 出金伝票は必ず現金出納帳と突き合わせる。伝票No.を突合キーにすると照合が速い(No.26 現金出納帳をExcelでつける方法)
- そもそも小口現金を廃止できないか検討する(No.128 小口現金を廃止する手順)
- 従業員が立て替えた支出は、出金伝票ではなく立替経費精算書で処理したほうが記録が整う(No.202 立替経費精算書テンプレート)
テンプレートをもう一度ダウンロード
単品ファイルと、経理帳票5点セットをこちらからダウンロードできます。会員登録は不要です。
関連テンプレートのご案内
現金出納帳・立替経費精算書とセットで、現金まわりの記録を一式そろえたい場合のテンプレートもご用意しています。顧問先の記帳指導でそのまま渡せる構成です。
まとめ
- A4に伝票2枚+切り取り線を配置するだけで、用紙とトナーが半分になる
- 日付は1セルに入力し、表示形式で「○年○月○日」に見せる。3セルに分けない
- 摘要は第三者が支出内容を復元できる粒度で書く。内部書類だからこそ具体性が信頼性になる
- 出金伝票を書けば消費税が控除できる、わけではない。原則は適格請求書の保存
- 公共交通機関・自販機・出張旅費の各特例に当たる場合は、摘要欄に特例名を書いて帳簿に転記する
※ 本記事の税務に関する記述は2026年8月19日時点の法令等に基づいています。インボイス制度の特例・経過措置は改正が続いているため、実際の処理にあたっては国税庁「消費税の軽減税率制度・インボイス制度」で最新の取扱いをご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の判断は顧問税理士等の専門家にご相談ください。
