「前任者が何を話していたか分からない」「以前提案した内容を、また一から説明している」「口頭で約束した宿題が消えている」――担当変更や退職のたびに顧問先との関係がリセットされる事務所は、面談の記録が個人のノートとメールに散っているのが原因です。顧問先から見れば「事務所として自分を覚えてくれていない」ことが、そのまま不満と解約予備軍につながります。
この記事では、面談記録の標準フォーマット、提案・宿題の追跡管理、担当引継ぎで困らない情報継承の仕組みをExcelで作る方法を解説します。
基礎知識:記録すべきは「事実・判断・宿題」の3層
面談記録が長文の議事録になると、書くのも読むのも続きません。残すべきは次の3層だけです。
- 事実:業績の状況・経営者の関心事・社内の変化(後継者・設備・人事)を箇条書きで
- 判断・助言:こちらが伝えた見解・提案と、顧問先の反応(前向き/保留/否定)
- 宿題:誰が・何を・いつまでに。双方の宿題を分けて記録
特に「判断・助言」の記録は、後日のトラブル(言った言わない)から事務所を守る証跡にもなります。1面談5〜10分で書ける分量に制限することが継続の条件です。
Excelでの実装手順
ステップ1:面談記録シートの列設計
1面談1行で「日付/顧問先/担当者/形式(訪問・来所・オンライン・電話)/面談区分(月次・決算・スポット相談)/事実メモ/助言・提案メモ/顧問先の反応/宿題(当方)/宿題(先方)/期限/次回予定」を記録します。長文にしないよう、メモ列は箇条書き2〜3行を目安にします。
ステップ2:宿題の追跡リストを自動抽出する
状態 =IF(完了日<>"","完了",IF(期限<TODAY(),"期限超過!",IF(期限-TODAY()<=7,"今週期限","")))
担当者別の未完了 =COUNTIFS(担当者,対象者,状態,"<>完了")
宿題列から未完了だけをFILTER関数で抽出した「宿題ボード」を作り、週次ミーティングで確認します。「面談で約束したことが消えない」だけで、顧問先の信頼は目に見えて変わります(関連記事:No.29 顧問先管理表の作り方)。
ステップ3:提案履歴を「提案パイプライン」として管理する
一度断られた提案(法人成り・生命保険・設備投資減税・経営計画策定等)は、時期が来れば復活します。提案履歴シートに「顧問先/提案内容/初回提案日/反応/再提案の条件(利益が○○超えたら等)/状態」を残し、決算数値が条件を満たしたら再提案アラートが出る形にします。これは営業管理であると同時に、顧問先への提供価値の棚卸しでもあります(関連記事:No.34 月次報告資料の作り方)。
ステップ4:引継ぎサマリーの自動生成
担当変更時は、顧問先ごとに「直近12か月の面談記録+未完了の宿題+提案履歴+顧問先の基本情報(キーマン・意思決定の癖・地雷話題)」をフィルタ1発で出せるようにします。引継ぎ書をゼロから書くのではなく、日々の記録から自動で組み上がるのがこの仕組みの本質です(関連記事:No.130 経理引継ぎ書の作り方)。新任担当者は初回訪問前にこれを読むだけで、「前任から聞いています」と言える状態になります。
実務の注意点・つまずきポイント
- 書く場所を1つに絞る:Excel台帳・個人ノート・メール・チャットに分散したら終わりです。「面談後10分以内に台帳へ」をルール化し、他はリンクで寄せます
- 共有ファイルの同時編集:複数担当者が使うため、共有設定や排他制御を決めておきます(関連記事:No.149 Excelの共同編集)
- 個人的な機微情報の書き方:健康・家族・後継者間の対立などは、事実ベースで抑制的に。台帳は調査・訴訟等で開示され得る前提の筆致を保ちます
- 音声メモからの転記も可:移動中に音声メモ→事務所で転記の運用は、記録率を大きく上げます
- 月次チェックとの連動:月次監査チェックリスト(関連記事:No.32 月次監査チェックリスト)に「面談記録の記入済み確認」を1項目入れると定着します
面談記録テンプレートのご案内
本記事の設計(3層フォーマット→宿題ボード→提案パイプライン→引継ぎサマリー自動生成)を組み込んだ「顧問先面談記録・提案履歴管理Excel」を用意しています。属人化解消シリーズ(顧問先管理表・引継ぎ書)と連動し、「誰が担当しても事務所として覚えている」状態を作れます。
まとめ
- 記録は「事実・判断・宿題」の3層を1面談5〜10分で書ける分量に
- 宿題はFILTERで自動抽出し、週次で消し込む。約束が消えないことが信頼になる
- 断られた提案は再提案条件付きでパイプライン管理する
- 引継ぎ書は日々の記録からフィルタで自動生成する設計に
- 書く場所を1つに絞り、月次チェックに記入確認を組み込んで定着させる

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