担当者別の生産性をExcelで見える化する【事務所KPI管理】

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「あの担当者は頑張っている気がする」「あの顧問先は手がかかる気がする」――税理士事務所の経営判断が「気がする」で行われている限り、料金改定も人員配置も評価も、すべて感覚論の域を出ません。事務所は労働集約型のサービス業です。だからこそ、担当者別の売上・工数・時間単価というシンプルなKPIを回すだけで、経営の解像度が劇的に上がります。

この記事では、小規模事務所でも運用が続くKPIの設計と、担当者別・顧問先別の生産性をExcelで見える化する方法、そして数字を評価・改善にどう活かすかを解説します。料金表の設計(関連記事:No.141 料金表の作り方と値上げ)の土台となるデータ整備でもあります。

目次

基礎知識:追うべきKPIは3つだけ

KPIを増やしすぎると記録が続きません。核になるのは次の3つです。

  • 担当売上:担当者が受け持つ顧問先の年間報酬合計(顧問料+決算料+スポット)
  • 投入工数:顧問先別・業務別の作業時間(月次・決算・年調・調査対応等)
  • 時間単価:担当売上 ÷ 投入工数。事務所の生産性を1つの数字で表す中心指標

時間単価が見えると、「売上の大きい担当者」と「生産性の高い担当者」が別物であることが分かります。また顧問先別の時間単価は、料金改定の優先順位(低単価先から)と業務改善の対象(時間を食っている工程)を同時に教えてくれます。

Excelで見える化する手順

ステップ1:工数記録の負担を最小化する

KPI管理が失敗する原因の9割は工数記録の挫折です。分単位の記録は不要で、1日の終わりに「顧問先×業務区分」へ0.5時間刻みで振り分ける程度の粒度で十分に意思決定に使えます。記録シートは、日付/担当者/顧問先(プルダウン)/業務区分(月次・決算・年調・相談・移動・所内)/時間の5列に絞ります。

ステップ2:担当者別・顧問先別の集計を組む

担当者別の年間工数 = SUMIFS(時間列, 担当者列, 対象者)
顧問先別の年間工数 = SUMIFS(時間列, 顧問先列, 対象先)
時間単価 = 年間報酬 ÷ 年間工数
採算ライン判定 = IF(時間単価<目標単価,"要改善","OK")

顧問先マスタ(年間報酬・担当者)と工数記録をSUMIFSでつなぎ、顧問先を時間単価の昇順に並べた「採算ワーストリスト」を自動生成します。これが料金改定・業務改善・契約見直しの優先順位表になります。

ステップ3:ダッシュボードを作る

月次で見るのは1枚で足ります。担当者別の「売上・工数・時間単価・顧問先数」の表と、事務所全体の時間単価の推移グラフ、業務区分別の工数構成比(円グラフ)の3点セット。「所内業務・移動」の構成比が大きい場合、顧客に請求できない時間が膨らんでいるサインで、効率化投資(関連記事:No.28 事務所効率化ツール10選)の判断材料になります。

ステップ4:評価・行動への接続ルールを決める

数字は行動につながって初めて意味を持ちます。運用ルールの例です。

  • 四半期レビュー:担当者と採算ワーストリストを一緒に見て、原因(顧客要因か、業務フロー要因か、価格要因か)を分類する
  • 評価への反映は慎重に:時間単価を直接ボーナス連動させると、記録の過少申告や難しい顧問先の押し付け合いを招きます。評価は「改善行動」を対象に、数字は現状把握に使うのが健全です
  • 新人の扱い:育成期間の時間単価は低くて当然。担当者別の比較は経験年数を添えて読みます

実務の注意点・つまずきポイント

  • 完璧な記録を求めない:0.5時間刻み・当日中の記録で十分。精度より継続です。記録されない月が出たら、粒度をさらに粗くしてでも続けます。
  • 所長自身の工数も記録する:所長の時間が最も高価です。所長がスポット対応と営業にどれだけ割けているかは、事務所の成長性そのものを示します。
  • 「手のかかる顧問先」の正体を分解する:資料が遅い・質問が多い・記帳が汚い等、原因によって打ち手(締切ルール・自計化支援・料金改定)が異なります。工数の業務区分がこの分解を可能にします。
  • ソフトの利用状況と併せて見る:記帳の自動化(関連記事:No.98 パワークエリで会計データの取込・整形)が進んだ顧問先は工数が下がるはず。下がっていなければ運用に問題があります。
  • 数字の公開範囲を決める:担当者別の数字をどこまで所内公開するかは事務所文化によります。最初は所長と本人の1on1のみで運用し、慣れてから段階的に、が無難です。

事務所KPI管理テンプレートをご用意しています

この記事の構成(5列の工数記録→担当者別・顧問先別の自動集計→採算ワーストリスト→月次ダッシュボード)を組み込んだExcelテンプレートを販売しています。日々の記録は1人1分、月次の集計は自動。「気がする」の経営から「数字で決める」経営への移行を、記録の負担なく始められます。料金シミュレーター(No.141)とのセット利用が効果的です。

採算データの活かし先は料金表の記事を(関連記事:No.141 料金表の作り方と値上げ)、業務の平準化はこちらをご覧ください(関連記事:No.143 繁忙期を平準化する年間業務カレンダー)。

まとめ

  • KPIは担当売上・投入工数・時間単価の3つに絞る。中心指標は時間単価
  • 工数記録は0.5時間刻み・1日1分の粒度で十分。精度より継続
  • 顧問先の時間単価昇順の「採算ワーストリスト」が改善の優先順位表になる
  • 数字の評価直結は副作用が大きい。評価は改善行動、数字は現状把握に使う
  • 所長自身の時間配分こそ事務所の成長性を決める最重要データ
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