同じ事務所なのに、担当者によって月次監査の深さがバラバラ——ベテランは残高の異常に気づくが、新人は入力の正誤しか見ていない。この「品質のバラつき」は個人の能力差ではなく、チェック観点が言語化されていないことが原因です。
この記事では、月次監査(巡回監査)のチェック観点をExcelチェックリストとして標準化する方法を解説します。ベテランの暗黙知を、新人でも使える形式知に変えるのがゴールです。
目次
チェックリスト化の3つの効果
- 品質の底上げ:新人でもベテランの観点の9割をなぞれる
- レビューの時短:「どこまで見たか」が記録されるので、上席は指摘事項だけ見ればよい
- 調査に強い帳簿:毎月同じ観点で潰しているため、税務調査での指摘リスクが構造的に下がる(関連記事:No.124 税務調査の事前準備)
チェック項目の設計:共通+科目別+固有の3層
第1層:全顧問先共通の基本チェック
- 現金・預金残高が通帳・実残と一致しているか(マイナス残高はないか)
- 売掛金・買掛金の残高が管理表・請求書と整合しているか
- 月次推移で異常な増減のある科目はないか(前月比・前年同月比)
- 源泉所得税・社会保険料の預り金残高が理論値と一致するか
- 消費税区分(課税・非課税・対象外、インボイス有無)の誤りがないか
- 役員貸付金・仮払金など「放置すると危険な科目」が増えていないか
第2層:科目別・業種別の重点チェック
現金商売なら現金管理の精度(関連記事:No.26 現金出納帳)、建設業なら工事別の原価対応、輸出があるなら消費税の免税区分——業種テンプレートを数種類用意し、顧問先に合わせて組み合わせます。
第3層:顧問先固有のチェック
「この会社は毎年12月に保険料の年払いがある」「社長の経費に私的なものが混ざりやすい」——過去の指摘・論点から生まれた固有項目を蓄積する欄です。この第3層こそ、担当変更時に失われていた暗黙知の正体です。(関連記事:No.194 面談記録・提案履歴の管理)
Excelでの作り方
- 1行1チェック項目。列は「項目/確認方法/結果(プルダウン:OK・要修正・該当なし)/指摘内容/対応期限/対応済」
- 結果列の集計で進捗率を自動表示:=COUNTIF(結果範囲,”<>”)/COUNTA(項目範囲)
- 「要修正」の行を条件付き書式で赤くし、未対応のまま翌月に持ち越したら濃い赤に
- 月ごとにシートを増やすのではなく、「顧問先×月」の履歴シートに蓄積する——過去の指摘の再発チェックが自動化できる
運用のコツ:項目は「増やす」より「削る」
チェックリストは放っておくと項目が増え続け、形骸化します。半年に1回、「直近6ヶ月で一度も引っかかっていない項目」を見直し、リスクの低いものは隔月・四半期チェックに落とします。全項目を毎月やることより、重要項目が確実に実行されることが目的です。新人教育では、このリストを教材としてそのまま使えます。(関連記事:No.35 新人教育のExcel研修メニュー)
月次監査チェックリストのご案内
共通・業種別・固有の3層構造、進捗率の自動表示、指摘履歴の蓄積シートまで組み込んだ月次監査チェックリストテンプレート(Excel)を用意しています。決算チェックリスト(関連記事:No.3 3)とセットで、事務所の品質管理体制が揃います。
まとめ
- 品質のバラつきは能力差ではなく、チェック観点が言語化されていないことが原因
- 「共通・科目/業種別・顧問先固有」の3層構造で設計する。固有欄が暗黙知の受け皿
- 結果はプルダウン、進捗率は自動計算、指摘は履歴シートに蓄積する
- 半年に1回項目を削る。全項目主義より重要項目の確実な実行

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