予算を立てたのに、期末になって「達成できませんでした」で終わる——これは予算の失敗ではなく、予実管理の不在が原因です。予算は立てた瞬間から古くなります。毎月、実績と突き合わせて差異の原因に手を打つ仕組みがあって、初めて予算は経営の道具になります。
この記事では、差異分析まで自動化した予実管理表をExcelで作る方法と、月次会議での運用ルールを解説します。
目次
予実管理表の設計:単月と累計を必ず並べる
予実管理表の基本構造は「科目×月」ですが、各月に次の5列を持たせるのがポイントです。
| 列 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 予算 | 月別に配分した計画値 | 基準線 |
| 実績 | 会計データから取得 | 現在地 |
| 差異 | 実績−予算 | ズレの金額 |
| 達成率 | 実績÷予算 | ズレの程度 |
| 累計差異 | 期首からの累計での差異 | 行動判断のトリガー |
単月の差異は検収タイミングや締めのズレで簡単に動きます。「単月は観察、累計で行動」が予実管理の鉄則です。
Excelでの作り方
ステップ1:予算の月別配分
年間予算を12等分するのは悪手です。過去2〜3年の実績から月別構成比(季節指数)を計算し、それで年間予算を配分します。
月別構成比 =過去3年の当月売上合計/過去3年の年間売上合計
月別予算 =年間予算×月別構成比
これだけで「繁忙月に未達アラートが出ない・閑散月に空騒ぎしない」精度になります。(関連記事:No.177 年度予算の作り方/No.179 売上予測の立て方)
ステップ2:実績の自動取得と差異計算
実績は月次損益管理表(関連記事:No.1 7)と同じデータシートからSUMIFSで参照します。差異・達成率・累計差異はすべて数式なので、実績データを貼り替えるだけで全列が更新されます。
差異 =実績-予算(費用科目は予算-実績にして「超過=マイナス」に統一)
累計差異 =SUM($期首月の差異:当月の差異)
達成率 =IFERROR(実績/予算,"")
ステップ3:異常検知の自動化
- 条件付き書式①:達成率が90%未満または110%超のセルを色付け(超過側も見る——経費の使いすぎ・想定外の特需はどちらも要確認)
- 条件付き書式②:累計差異が年間予算の±5%を超えた行を強調(計画見直しラインの目安)
- コメント列を右端に用意し、差異の原因と対策をその月のうちに一言残す
差異分析:金額のズレを「原因」に分解する
売上の差異は、可能なら「数量(件数)×単価」に分解します。
数量差異 =(実績数量-予算数量)×予算単価
価格差異 =(実績単価-予算単価)×実績数量
同じ「売上▲100万円」でも、客数減(集客の問題)と単価減(値引きの問題)では打ち手がまったく違います。この分解が、予実管理を「報告」から「行動」に変えます。
月次会議での運用ルール
- 会議の前日までに実績を反映し、色が付いた行だけ原因コメントを埋めておく
- 会議では色付き行だけを議論する(順調な行に時間を使わない)
- 累計差異が見直しラインを超えた科目は、残月の見込みを「修正予測」列に入れて着地を更新する
- 決めた対策は担当と期限をコメント列に残し、翌月冒頭で確認する
予実管理テンプレートのご案内
季節指数による予算配分・5列構造・異常検知の条件付き書式・数量単価の差異分解・修正予測による着地見込みまで組み込んだ予実管理表テンプレート(Excel)を用意しています。月次損益管理表と同じデータシートで連動する設計です。
まとめ
- 予算は「立てる」より「毎月突き合わせる」仕組みが本体。単月は観察、累計で行動
- 月別予算は12等分ではなく季節指数で配分する
- 達成率90%未満・110%超の両側を自動ハイライトし、色付き行だけ議論する
- 売上差異は数量×単価に分解して初めて打ち手につながる

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