「利益は出ているのに現金が減っている。理由を説明してほしい」——金融機関や経営者からのこの問いに、決算書ベースで答えるための書類がキャッシュフロー計算書(CF計算書)です。上場企業には作成義務がありますが、中小企業でも融資審査や経営分析の場面で作れると大きな武器になります。
この記事では、中小企業で現実的な間接法によるCF計算書をExcelで作る手順を、2期分の決算書(BS・PL)だけを材料に解説します。
目次
CF計算書の構造:3つの活動に分ける
| 区分 | 内容 | 健全な状態 |
|---|---|---|
| 営業CF | 本業で稼いだ(使った)お金 | プラスであること(最重要) |
| 投資CF | 設備投資・資産売却 | 成長企業は通常マイナス |
| 財務CF | 借入・返済・増資・配当 | 営業CFの範囲で返済(マイナス)できているか |
資金繰り表が「未来の予測」を担うのに対し、CF計算書は「過去1年の説明」を担います。両者は補完関係にあります。(関連記事:No.16 資金繰り表の作り方)
間接法の考え方:利益から出発して調整する
間接法は、税引前利益からスタートして「お金の動きを伴わない項目」と「BSの増減」を調整し、営業CFにたどり着く方法です。調整のロジックは次の3種類だけです。
- 非資金項目を足し戻す:減価償却費・引当金の増加額など(費用だがお金は出ていない)
- 営業資産の増加はマイナス:売掛金・棚卸資産が増えた分は、利益になったのにお金はまだ入っていない
- 営業負債の増加はプラス:買掛金・未払金が増えた分は、費用になったのにお金はまだ出ていない
営業CF = 税引前利益
+ 減価償却費 + 引当金増加額
− 売上債権の増加 − 棚卸資産の増加
+ 仕入債務の増加
− 法人税等の支払額
Excelでの作成手順
ステップ1:BSの2期比較表を作る
前期末・当期末のBSを並べ、「増減」列を数式で入れます。この増減列がCF計算書の材料のほぼすべてです。
増減 =当期末残高-前期末残高
(科目ごとに「営業/投資/財務」の区分列も付けておく)
ステップ2:区分ごとに増減を組み替える
- 営業CF:上の間接法の式に沿って、PLの利益・減価償却費とBS増減(売掛・棚卸・買掛など)を参照
- 投資CF:固定資産の増加(取得)はマイナス、売却は入金額をプラス。「増減=取得−減価償却−売却簿価」なので、取得額は増減+減価償却費で逆算できる
- 財務CF:借入金の増減(長短別)、役員借入の増減、配当
ステップ3:検算——現金の増減と一致させる
検算 =営業CF+投資CF+財務CF - (当期末の現金預金-前期末の現金預金) → 0ならOK
条件付き書式で0以外なら赤表示にしておく
この検算セルがCF計算書の品質保証です。ズレる場合の原因は、たいてい①どの区分にも入れていないBS科目の見落とし、②固定資産の売却損益の二重計上、③未払法人税の調整漏れ、のどれかです。
読み方:3区分のパターン診断
- 営業+/投資−/財務−:本業で稼ぎ、投資し、借入を返す優良型
- 営業+/投資−/財務+:成長投資を借入で加速中。投資の回収計画が論点
- 営業−/財務+:本業の赤字を借入で補填。最も危険なパターンで、続けば債務超過へ一直線
- 利益はあるのに営業CFがマイナス→売掛金・在庫の膨張を疑う(回収遅延・不良在庫。関連記事:No.23 売掛金の滞留チェック)
CF計算書テンプレートのご案内
BSの2期比較を入力すると、間接法のCF計算書と検算・パターン診断コメントまで自動生成されるキャッシュフロー計算書テンプレート(Excel)を用意しています。資金繰り表テンプレートとセットで、過去の説明と未来の予測を揃えられます。
まとめ
- CF計算書は「営業・投資・財務」の3区分で過去1年のお金の動きを説明する書類
- 間接法なら2期分のBS・PLだけで作れる。調整ロジックは3種類だけ
- 「合計=現金の増減」の検算セルを必ず入れ、0になるまで原因を潰す
- 営業CFマイナス+財務CFプラスの組み合わせは危険信号

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