賞与の計算は、毎月の給与と似ているようでルールが微妙に違うため、年2回しかやらない分だけミスが起きやすい業務です。「標準賞与額」「賞与の源泉徴収税額の求め方」「保険料の上限」——このあたりが曖昧なまま毎回ネット検索している方も多いはずです。
この記事では、賞与にかかる社会保険料と源泉所得税の計算ルールを整理し、Excelで自動計算するシートの作り方(手取りからの逆算まで)を解説します。
目次
賞与の社会保険料:標準賞与額×料率
賞与の社会保険料は、標準賞与額(税引前賞与額の1,000円未満切捨て)に、毎月の給与と同じ料率を掛けて計算します。
標準賞与額 =FLOOR(賞与支給額,1000)
健康保険料(本人) =標準賞与額*健保料率/2
厚生年金保険料(本人) =標準賞与額*18.3%/2
雇用保険料(本人) =ROUND(賞与支給額*雇用保険本人料率,0) ←雇用保険は切捨てせず支給額ベース
見落としやすい上限ルール
- 健康保険:年度(4月〜翌3月)の累計573万円が上限。累計欄を設けて管理する
- 厚生年金:1ヶ月あたり150万円が上限。決算賞与などの高額支給で頭打ちになる
- 賞与支払後は賞与支払届を年金事務所へ提出(支給日から5日以内)
賞与の源泉所得税:「前月給与」で率が決まる
賞与の源泉税は月額表ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。手順は次の3ステップです。
- 前月の給与(社会保険料控除後)の金額を求める
- その金額と扶養親族等の数を算出率表に当てはめ、税率(%)を求める
- 賞与(社会保険料控除後)×税率=源泉徴収税額
税率 =INDEX(算出率表, MATCH(前月給与(社保後), 金額範囲, 1), 扶養人数+1)
源泉税額 =ROUNDDOWN((賞与-賞与の社保計)*税率, 0)
「賞与額そのもの」ではなく「前月給与」で税率が決まるのが最大の特徴です。だから同じ賞与額でも人によって税率が違い、前月に残業が多かった人は賞与の手取りが減るという現象が起きます。
例外パターン
- 前月給与がない場合(新入社員など)や賞与が前月給与の10倍超の場合は、月額表を使う特別な計算方法になる——シートに判定フラグを設けておく
- 賞与の源泉税はあくまで概算。年末調整で精算されるので、多少の違和感は年調で吸収される(関連記事:No.7 年末調整の検算)
Excelシートの構成
給与計算テンプレート(関連記事:No.25 給与計算をExcelで行う方法)と同じマスタ構造を使い回します。
- 従業員マスタ:扶養人数・前月給与(社保後)を給与シートから自動参照
- 料率マスタ:健保・介護・厚年・雇用保険の料率(毎年更新)
- 算出率表マスタ:国税庁の賞与用税額表を貼り付け(毎年更新)
- 計算シート:1行1人。支給額を入れると社保・源泉・差引支給額まで自動計算
- 健保の年度累計列:573万円上限の自動判定用
手取り額からの逆算
「手取り30万円になるように支給したい」という経営者の要望には、ゴールシーク(データ→What-If分析)を使います。差引支給額のセルを目標値に、支給額のセルを変化させるセルに指定すれば、必要な支給額が数秒で求まります。
賞与計算シートのご案内
標準賞与額・上限判定・算出率表の自動参照・手取り逆算の手順書まで組み込んだ賞与計算シート(Excel)を用意しています。給与計算テンプレートとマスタを共有する設計で、6月・12月の作業が入力10分で終わります。
まとめ
- 社会保険料は「標準賞与額(1,000円未満切捨て)×料率」。健保は年度573万・厚年は月150万の上限に注意
- 源泉税は「前月給与(社保後)」で税率が決まる。賞与額ではない
- 前月給与なし・10倍超の例外パターンは判定フラグで機械的に検知する
- 手取り指定の逆算はゴールシークで数秒。もう電卓での試行錯誤は不要

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