配当・株式譲渡の課税方式をExcelで有利判定する【総合・分離・申告不要】

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【2026年7月19日更新】令和9年(2027年)1月以後の防衛特別所得税の創設に関する注記を追加しました。

上場株式の配当や譲渡益の確定申告で毎年迷うのが、「総合課税・申告分離課税・申告不要のどれを選ぶのが得か」という課税方式の選択です。所得水準・配当控除・損益通算の有無・国民健康保険料への影響が絡み合うため、「なんとなく申告不要」で数万円損しているケースは珍しくありません。

この記事では、3方式の違いを整理したうえで、所得水準別の実質手取りをExcelで比較する有利判定モデルの作り方を解説します。なお、令和5年分の申告から所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことはできなくなっており、判定は「所得税+住民税+社会保険料」のトータルで行う必要があります。税率・制度は改正があるため、適用時は最新情報をご確認ください。

目次

3つの課税方式の基礎知識

①申告不要(源泉徴収で完結)

上場株式の配当は約20%(所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収されており、申告しなければそこで完結します。合計所得金額に含まれないため、国保料・扶養判定・各種所得制限に影響しないのが最大の利点です。

②総合課税(配当控除が使える)

配当を他の所得と合算して累進税率で課税し、配当控除(所得税は原則配当の10%、課税総所得1,000万円超部分は5%。住民税は2.8%/1.4%)を差し引けます。課税総所得が一定水準以下なら源泉20%より実質負担が下がります。ただし合計所得金額に含まれるため、国保加入者は保険料が跳ね上がる可能性があります。

③申告分離課税(損益通算・繰越控除が使える)

税率は源泉徴収と同じ約20%ですが、上場株式の譲渡損失との損益通算や、繰り越した譲渡損失(3年)との相殺ができます。損失がある年はまずこの方式を検討します。こちらも申告すれば合計所得金額に含まれる点(繰越損失控除前の金額で判定される項目がある点)に注意が必要です。

Excelで有利判定モデルを作る手順

ステップ1:入力欄を設計する

「給与所得・事業所得など他の所得」「配当額」「譲渡損益・繰越損失」「加入保険(国保か社保か)」「扶養の状況」を入力欄にします。国保か社保かで判定結果が大きく変わるため、プルダウンで必ず選ばせる設計にします。

ステップ2:方式別の税負担を計算する

3列(申告不要・総合・分離)を並べ、それぞれの所得税・住民税を計算します。総合課税列は累進税率マスタを参照し、配当控除を差し引きます。

総合課税の実質負担 =累進税額(他所得+配当)-累進税額(他所得)-配当控除+住民税増加分
申告不要の負担 =配当*20.315%

ステップ3:国保料への影響を加算する

国保増加額 =IF(保険区分="国保",MIN(申告後所得*料率合計,賦課限度額-現在保険料),0)

国保の料率・賦課限度額は自治体ごとに異なるため、マスタシートで自治体の料率を入力して使う設計にします。「税金では得でも国保で逆転」が最頻出パターンなので、この行を判定に含めることがモデルの肝です。

ステップ4:実質手取りで最終判定する

=INDEX({"申告不要","総合課税","申告分離"},MATCH(MIN(負担合計範囲),負担合計範囲,0))

「税負担+保険料増加」の合計が最小になる方式を自動表示します。あわせて扶養から外れる・所得制限に抵触するなどの警告フラグも表示すると安全です。

実務の注意点・つまずきポイント

  • 所得税と住民税で別方式は選べない:令和5年分申告から統一されています。古い記事の「住民税だけ申告不要」はもう使えません
  • 国保・後期高齢者医療・介護保険料への影響は自治体差が大きい:料率マスタは必ず自分の自治体の数値に差し替えて使います
  • 配偶者控除・扶養控除・基礎控除の所得制限に注意:申告により合計所得金額が増え、家族側の控除が消えることがあります
  • 大口株主(発行済株式3%以上)の配当は総合課税のみ:上場でも申告不要・分離は選べません
  • NISA口座の配当・譲渡益はそもそも非課税:判定対象は課税口座分のみです
  • 令和9年(2027年)1月以後は防衛特別所得税が創設:基準所得税額の1%が課される一方、復興特別所得税は2.1%→1.1%に引き下げ・期間延長されるため、合計の付加税率2.1%(源泉徴収の実質負担率20.315%)は当面変わりません。ただし税目の内訳・申告書の表記が変わるため、シートの税率マスタは「所得税+復興特別+防衛特別」の3段構成にしておくと改正に追従しやすくなります
  • 個別の判断は影響項目が多岐にわたるため、最終判断の前に税理士への相談をおすすめします

課税方式判定ツールのご案内

本記事のモデルを完成品にした「配当・譲渡所得 課税方式有利判定Excel」を用意しています。所得と配当額、保険区分を入れるだけで、3方式の税負担+国保影響を含めた実質手取りを自動比較し、最有利方式と警告フラグを表示します。税理士事務所では申告期の検算・顧客説明資料としてご活用ください(関連記事:No.133 扶養の壁シミュレーション)。

まとめ

  • 選択肢は申告不要・総合課税(配当控除)・申告分離(損益通算)の3つ
  • 令和5年分から所得税と住民税の方式は統一。トータル比較が必須に
  • 判定は「税負担+国保等保険料の増加」の実質手取りで行う
  • 扶養・所得制限への波及も警告フラグで確認する
  • 税率・料率は改正・自治体差があるためマスタ差し替え式で管理を
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