年10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年5日を確実に取得させる義務があり、違反すれば従業員1人につき30万円以下の罰金の対象になり得ます。さらに使用者には「年次有給休暇管理簿」の作成・保存も義務付けられています。ところが入社日がバラバラだと基準日も人ごとに違い、「誰があと何日足りないのか」の把握は想像以上に厄介です。
この記事では、有給休暇の付与ルールを整理し、付与日数の自動計算・基準日管理・取得5日未満者の自動アラートまで備えたExcel管理表の作り方を解説します。
有給休暇のルールの基本
付与日数の原則
| 勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年〜 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数(週30時間以上等) | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
- 年5日の時季指定義務:年10日以上付与される人(比例付与で10日に達したパートも含む)が対象。基準日から1年以内に5日、本人取得+計画年休+使用者の時季指定の合計で達成する
- 年次有給休暇管理簿:基準日・付与日数・取得日(時季)・残日数を労働者ごとに記録し、当該期間満了後3年間保存
- 繰越しは最大2年(時効)。付与日数・義務の詳細は改正があり得るため、運用開始時に厚生労働省の最新資料を確認してください。参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
Excel管理表の作り方
ステップ1:従業員マスタと基準日の自動計算
- A:氏名 B:入社日 C:週所定労働日数 D:週所定労働時間
- E:直近の基準日(自動) F:勤続年数(自動) G:今期付与日数(自動)
E2(直近基準日:入社6か月後を初回、以後1年ごと):
=IF(TODAY()<EDATE(B2,6),"付与前",EDATE(B2,6+12*ROUNDDOWN((DATEDIF(EDATE(B2,6),TODAY(),"m"))/12,0)))
F2(基準日時点の勤続年数):=DATEDIF(B2,E2,"m")/12
G2(付与日数):=VLOOKUP(F2,付与日数表,2) ※比例付与はC列で表を切替
EDATEの入れ子で「入社6か月後+以後1年ごと」の基準日を自動計算するのがこの表の心臓部です。全社一斉の基準日方式(斉一的取扱い)を採る会社は、この式を統一基準日に置き換えます。
ステップ2:取得記録と残日数
取得記録は別シートに「氏名・取得日・日数(1日/半日)」で1行ずつ蓄積し、管理表側でCOUNTIFS/SUMIFSで集計します。
今期取得日数:=SUMIFS(取得記録!日数,取得記録!氏名,A2,取得記録!取得日,">="&E2,取得記録!取得日,"<"&EDATE(E2,12))
残日数:=前期繰越+G2-今期取得日数
この「基準日・付与日数・取得日・残日数」の記録がそのまま年次有給休暇管理簿の記載事項を満たすため、管理表=法定の管理簿として運用できます。
ステップ3:5日未達者の自動アラート
義務対象判定:=IF(G2>=10,"対象","対象外")
期限までの残月数:=DATEDIF(TODAY(),EDATE(E2,12),"m")
アラート:=IFS(義務対象="対象外","",
今期取得日数>=5,"達成",
AND(残月数<=4,今期取得日数<5),"要時季指定の検討",
TRUE,"経過観察")
「期限4か月前で取得3日未満なら黄色、2か月前で5日未満なら赤」のように条件付き書式で段階表示すれば、時季指定のタイミングを逃しません。月次の給与計算・勤怠締めと同じサイクルで確認する運用が現実的です。(関連記事:No.25 給与計算のExcel実務)
数値例:中途入社が多い会社の基準日管理
| 従業員 | 入社日 | 直近基準日 | 付与日数 | 取得済 | アラート |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | 2019/4/1 | 2025/10/1 | 20日 | 3日 | 要時季指定の検討 |
| Bさん | 2024/1/15 | 2025/7/15 | 11日 | 6日 | 達成 |
| Cさん(週3日パート) | 2023/9/1 | 2026/3/1 | 6日 | 2日 | 対象外(10日未満) |
この「人ごとに期限が違う」状態を頭で管理するのは不可能です。数式で基準日と期限を持たせてしまえば、毎月のチェックは「アラート列を見るだけ」になります。
実務の注意点・つまずきポイント
- 半日単位の取得は5日のカウントに含まれる(0.5日)が、時間単位は含まれない:時間単位年休を導入している会社は、5日義務のカウントから除外する集計設計が必要です。
- 前倒し付与・分割付与は期間の按分が必要:入社日に前倒しで付与するなどの場合、5日義務の履行期間の考え方が変わります。自社の付与方式を確認してから数式を組んでください。
- 退職予定者も期限までは義務対象:退職日までに5日に達しない見込みの人は、早めの時季指定が必要です。退職日列を設けてアラートに組み込みましょう。
- 時季指定は就業規則の定めが前提:使用者による時季指定を行うには就業規則への記載が必要です。管理表の整備とセットで規程も確認してください。
- 賃金台帳・勤怠との整合:有給取得日の賃金処理(通常賃金/平均賃金等)と勤怠データの整合も毎月確認しましょう。管理簿の保存期間(3年)もフォルダ運用に組み込んでください。
よくある質問
Q. パートにも5日取得義務はありますか?
比例付与でも年10日以上付与される人(例:週4日勤務で勤続3.5年以上)は義務の対象です。「パートだから対象外」ではなく付与日数で判定します。管理表の義務対象判定を自動化しておけば見落としません。
Q. 会社が勝手に取得日を指定してよいのですか?
時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めることとされています。一方的な指定ではなく、アラートが出た段階で本人と取得計画を話し合う運用が制度の趣旨に合っています。
有給休暇管理表テンプレートのご案内
基準日・付与日数の自動計算(比例付与対応)、取得記録からの自動集計、5日未達の段階アラート、法定管理簿としての出力まで備えた有給休暇管理表のExcelテンプレートをご用意しています。中途入社が多く基準日が揃わない会社でも、月1回アラート列を見るだけの運用になります。
まとめ
- 年10日以上付与される人には年5日の取得義務があり、管理簿の作成・3年保存も義務
- 基準日は入社6か月後+以後1年ごと。EDATEとDATEDIFで人ごとの基準日を自動計算できる
- 取得記録を1行ずつ蓄積しSUMIFSで集計すれば、管理表がそのまま法定管理簿になる
- 期限までの残月数に応じた段階アラートで、時季指定のタイミングを逃さない
- 半日・時間単位の扱い、前倒し付与の按分など自社の付与方式に合わせ、厚生労働省の最新行政資料も確認する

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