【2026年7月19日更新】表記の修正と、国税庁の暗号資産FAQ・計算書様式の案内を追加しました。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告で最初につまずくのが損益計算です。取引所をまたいだ売買、暗号資産同士の交換、ステーキング報酬――取引履歴CSVを前に「どこから手を付ければいいのか」と固まってしまう方は多く、計算方法(総平均法・移動平均法)の違いで所得金額が変わることまで理解している方はさらに少数です。
この記事では、暗号資産の所得計算のルールを整理し、取引履歴CSVから総平均法・移動平均法それぞれで損益を計算するExcelの実装方法を解説します。暗号資産の税務は整備途上で取扱いの更新が続いているため、申告時は国税庁の最新FAQをご確認ください。
暗号資産の所得計算の基礎知識
課税されるタイミング
- 売却したとき:売却価額−取得価額が所得
- 暗号資産同士を交換したとき:交換時の時価で売却したものとして計算(ここが最大の見落としポイント)
- 商品・サービスの決済に使ったとき:使用時の時価で売却扱い
- ステーキング・レンディング等の報酬を受け取ったとき:受取時の時価が所得となり、同時にその価額が取得価額になります
個人の暗号資産取引の所得は原則雑所得(総合課税)で、給与など他の所得と合算して累進税率が適用されます。上場株式のような申告分離課税・損失の繰越はできず、雑所得内でしか損益通算できない点が株式と大きく異なります。
総平均法と移動平均法
取得価額の計算方法は2つあり、個人は届出をしなければ総平均法が法定評価方法です。移動平均法を使うには「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要で、いったん選ぶと原則3年は変更できません。年単位の所得は方法により変わりますが、通算の損益は最終的に一致します。
- 総平均法:年間の総購入金額÷総購入数量で年一本の平均単価を出す。計算は簡単だが、年末まで単価が確定しない
- 移動平均法:購入のたびに平均単価を更新する。期中に損益を把握でき実感に近いが、計算量が多い
Excelでの実装手順
ステップ1:取引履歴を統一フォーマットに整える
各取引所のCSVは形式がバラバラなので、「日時/取引所/通貨/区分(購入・売却・交換・報酬)/数量/円換算額/手数料」の統一シートに転記します。Power Queryでの取込を仕組み化すると毎年の作業が激減します(関連記事:No.98 Power Queryによる経理自動化)。交換取引は「売却1行+購入1行」に分解して記録するのがコツです。
ステップ2:総平均法の計算
平均単価 =SUMIFS(円換算額,区分,"購入",通貨,対象通貨)/SUMIFS(数量,区分,"購入",通貨,対象通貨)
所得 =SUMIFS(円換算額,区分,"売却",通貨,対象通貨)-平均単価*SUMIFS(数量,区分,"売却",通貨,対象通貨)
前年からの繰越分(前年末残高と単価)は「期首購入」として1行目に入れておくと式が単純になります。
ステップ3:移動平均法の計算
取引を時系列に並べ、行ごとに残高と平均単価を更新します。
新平均単価 =IF(区分="購入",(前残高数量*前平均単価+円換算額)/(前残高数量+数量),前平均単価)
売却損益 =IF(区分="売却",円換算額-前平均単価*数量,0)
ステップ4:通貨別サマリーと申告用集計
通貨別の年間損益・報酬所得・手数料を集計し、雑所得の金額を確定します。両方式を並べて比較表示し、届出の要否検討にも使える形にしておきます。
実務の注意点・つまずきポイント
- 暗号資産同士の交換の申告漏れが最多:日本円に換えていなくても課税取引です。海外取引所・DEXの履歴も忘れずに
- DeFi・NFT・エアドロップは取扱いが流動的:類型ごとに整理が必要で、金額が大きい場合は暗号資産に強い税理士への相談を強くおすすめします
- 履歴の欠損は後から埋められない:取引所の閉鎖・API仕様変更で過去履歴が取れなくなる例が多発しています。毎年CSVを保存する運用を
- 国税庁のFAQ・計算書様式を必ず参照:国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を随時更新しており(令和7年12月版など最新版を確認)、総平均法用・移動平均法用の「暗号資産の計算書」様式も公表されています。自作Excelの検算にはこの計算書と突き合わせるのが確実です
- 年間20万円以下でも住民税の申告は必要:給与所得者の申告不要基準は所得税のみの話です
- 損失の繰越不可:年末の含み損の実現(損出し)など、年内にできる対策は年内に検討します
暗号資産損益計算シートのご案内
取引履歴を貼り付けるだけで総平均法・移動平均法の両方で損益を自動計算する「暗号資産損益計算Excel」を用意しています。交換取引の分解入力ガイド、通貨別サマリー、複数年の繰越管理に対応。計算根拠が全数式で追えるため、税理士事務所の検算用途にも適しています。
まとめ
- 課税は売却時だけでなく交換・決済使用・報酬受取時にも発生する
- 個人の法定評価方法は総平均法。移動平均法は届出が必要
- Excelは統一フォーマット化→SUMIFS(総平均)/時系列更新(移動平均)で実装できる
- 損失は繰越不可・雑所得内でのみ通算。年内の対策検討が重要
- 取扱いの更新が続く分野のため、申告時は国税庁FAQで最新確認を

コメント