賃貸物件の物件別収支・入居管理をExcelで行う方法【大家業の帳簿】

賃貸物件の物件別収支・入居管理をExcelで行う方法【大家業の帳簿】

大家業の管理は「家賃が入ったかどうか」だけでは済みません。部屋ごとの入退去、敷金の預かりと返還、更新時期、修繕の履歴、そして物件ごとの利回り――これらがバラバラのメモや通帳の記憶で管理されていると、滞納の発見が遅れ、敷金返還でトラブルになり、確定申告のたびに資料探しから始まることになります。

この記事では、部屋別の家賃・入居者管理から修繕履歴、物件別利回りの自動計算までを1つのファイルで回す賃貸管理台帳をExcelで作る手順を解説します。管理会社に任せている大家さんも、送られてくる報告書を検証する「自分の台帳」を持つことで経営の解像度が変わります。

目次

賃貸管理台帳に必要な4つの機能

大家業の帳簿は、確定申告用の収支記録(金額の世界)と、入居管理(契約の世界)の2層構造になっています。台帳に持たせるべき機能は次の4つです。

  • レントロール(部屋別台帳):どの部屋に誰が・いくらで・いつから入居しているかの一覧
  • 入金管理:月ごとの家賃入金チェックと滞納の早期発見
  • 修繕履歴:いつ・どの部屋に・いくらかけたかの記録(修繕費と資本的支出の区分の基礎資料)
  • 物件別収支・利回り:物件単位の実質利回りの把握と、売却・追加投資の判断材料

このうちレントロールは、金融機関に融資を相談する際にほぼ必ず求められる資料です。日頃から台帳として整備しておけば、融資の場面でそのまま提出資料になります。

Excelで賃貸管理台帳を作る手順

ステップ1:レントロール(部屋別台帳)を作る

物件コード/部屋番号/入居者名/契約家賃/共益費/敷金/礼金/入居日/契約更新日/状態(入居中・空室・退去予定)の10列で、全部屋を1行ずつ一覧化します。空室の部屋も行として残すのがポイントで、満室想定家賃と実際の家賃収入の差(空室ロス)が常に計算できる形になります。

入居率 = COUNTIF(状態範囲,"入居中")/COUNTA(部屋番号範囲)
更新アラート = IF(契約更新日-TODAY()<=90,"更新3か月前","")

更新日の90日前に自動でアラートを出しておくと、更新通知や条件見直しの検討が漏れません。

ステップ2:月別の入金チェック表を作る

縦に部屋、横に1月〜12月を並べ、入金があったら金額を入力するマトリクスを作ります。契約家賃との差額を自動判定させます。

=IF(入金額="","未入金",IF(入金額=契約家賃,"OK","差額あり"))

条件付き書式で「未入金」を赤表示にすれば、滞納が発生した月のうちに気づける仕組みになります。滞納は初月の対応速度が回収率を左右するため、この表の効果は絶大です。振込名義が入居者と違う(親族名義など)ケースはメモ列に残しておくと照合が楽になります。

ステップ3:敷金・修繕履歴のシートを作る

敷金は預り金であり、退去まで収入にはなりません。部屋別に「預かり額/償却・充当額/返還額/返還日」を記録する敷金台帳を作り、レントロールと部屋番号でつなぎます。修繕履歴は、日付/物件・部屋/内容/金額/区分(修繕費・資本的支出)/施工業者の6列で記録します。原状回復か価値向上かの区分メモをその場で残しておくことが、申告時の修繕費・資本的支出の判断と、税務調査での説明の両方に効きます。

ステップ4:物件別収支と利回りを自動計算する

物件ごとに1行で、年間家賃収入(満室想定と実績)/運営費用(管理費・修繕・固定資産税・保険)/営業純利益(NOI)/取得価額を並べ、利回りを計算します。

表面利回り = 満室想定家賃(年) ÷ 取得価額
実質利回り = (実績家賃収入 − 運営費用) ÷ (取得価額 + 取得諸費用)

広告でよく見る表面利回りと、自分の物件の実質利回りの差を数字で持っておくと、次の物件購入の目利きにもなります。借入返済後の手残り(キャッシュフロー)の行も加えれば、物件ごとの「持つ価値」の判断が完結します。

実務の注意点・つまずきポイント

  • 家賃の計上は入金日ではなく契約上の支払日基準が原則:滞納家賃も原則その年の収入に計上します(回収不能の処理は要件があるため個別にご確認ください)。
  • 敷金を収入に混ぜない:収入になるのは償却・返還不要が確定した部分だけです。台帳を分けることで混同を防ぎます。
  • 管理会社の報告書との照合:管理委託していても、送金明細と入金チェック表の突合を月1回行うと、控除項目(広告料・修繕立替)の把握漏れがなくなります。
  • 個人情報の管理:入居者情報を含むファイルはパスワード保護し、共有範囲を限定してください。
  • 法人化・規模拡大時:5棟10室規模を超えて事業的規模になると青色申告の取扱いが変わり、法人化の検討も視野に入ります。判断は最新の制度を確認のうえ専門家にご相談ください。

賃貸管理台帳テンプレートをご用意しています

この記事の構成(レントロール→入金チェック→敷金・修繕履歴→物件別利回り)を組み込んだExcelテンプレートを販売しています。部屋情報と入金を入力するだけで、空室ロス・滞納アラート・更新期限・物件別の実質利回りまで自動表示。融資相談時のレントロール提出にもそのまま使えます。

確定申告向けの収支・減価償却の管理は不動産所得の記事とテンプレートをご覧ください(関連記事:No.90 不動産所得の収支をExcelで管理する方法)。借入の管理は返済予定表の記事が参考になります(関連記事:No.21 借入金返済予定表)。

まとめ

  • 大家業の台帳はレントロール・入金チェック・敷金/修繕履歴・物件別利回りの4機能構成
  • 空室も行として残し、満室想定との差で空室ロスを常に見える化する
  • 入金チェック表の「未入金」赤表示で滞納に初月から対応する
  • 修繕は修繕費か資本的支出かの区分メモをその場で残す
  • レントロールは融資審査の定番資料。日頃の台帳がそのまま提出資料になる
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