「月次の数字が固まるのが翌月20日過ぎ」――これでは、数字を見た時点でもう次の月が3分の2終わっています。月次決算はスピードが価値の大部分です。翌月5営業日で締まる会社と20日かかる会社では、同じ資料でも経営判断への貢献度がまったく違います。そして早期化は、経理担当の頑張りではなくボトルネックの特定と締めルールの設計で実現するものです。
この記事では、月次決算が遅れる典型原因とその対策を整理し、5営業日で締めるための日程表・チェックリストをExcelで作る方法を解説します。
月次が遅れる4大ボトルネックと対策
①請求書が届かない(仕入・外注費)
最大のボトルネックです。対策は「待たない」こと。発注データや前月実績に基づく概算計上(見越計上)ルールを決め、翌月に実額と洗い替えます。月次は「概算でも早い」が「正確だが遅い」に勝ります。主要取引先には請求データの早期送付(PDF先行)を依頼するのも有効です。
②経費精算が集まらない
「精算締切は翌月3営業日、遅れた分は翌月計上」と締切を明文化し、例外を作らないのが唯一の対策です。締切を過ぎた精算を都度受け付ける限り、月次は永遠に締まりません(経費精算の仕組み化は関連記事:No.24 経費精算書テンプレート)。
③在庫・原価の確定待ち
毎月実地棚卸をするのは現実的でない会社が多いため、月次は帳簿棚卸や原価率による概算で足ります。精度が必要な期末だけ実地棚卸と突合します(関連記事:No.84 実地棚卸の集計表)。
④減価償却・引当のような決算整理を月次でやっていない
年1回まとめて計上すると、期中の月次損益が歪みます。年間見込額の12分の1を毎月の定型仕訳(振替伝票のテンプレート化)として登録すれば、追加工数ほぼゼロで月次の精度が上がります。
Excelで日程表とチェックリストを作る手順
ステップ1:5営業日の標準日程表を作る
1営業日目:現預金・売上の確定(POS/請求データの取込)
2営業日目:仕入・外注の計上(届いた分+概算計上)、経費精算の締切
3営業日目:定型仕訳(償却・引当・家賃等)、在庫の概算計上
4営業日目:試算表のセルフレビュー(前月比・異常値チェック)
5営業日目:月次資料の作成・報告
Excelでは、月初日を入力するとWORKDAY関数で各タスクの期日が自動計算される表にします。
期日 = WORKDAY(月末日, 営業日数) ※祝日リストを第3引数に指定
遅延表示 = IF(AND(完了日="",TODAY()>期日),"遅延","")
ステップ2:タスク別チェックリストを作る
日程表の各行に、タスク/担当/所要時間の目安/完了チェック/メモの列を持たせます。ポイントは所要時間を記録すること。数か月分たまると「どの工程に時間が食われているか」がデータで見え、次の改善対象が特定できます。早期化は一度に完成させるものではなく、毎月1つずつボトルネックを潰す活動です。
ステップ3:異常値チェックの定型表を作る
4営業日目のセルフレビュー用に、主要科目の当月・前月・前年同月を並べ、増減率が閾値(例:±30%)を超えたセルを条件付き書式で強調する表を作ります。「なぜ動いたか説明できない科目をゼロにしてから締める」のがレビューの合格基準です(関連記事:No.32 月次監査チェックリスト)。
実務の注意点・つまずきポイント
- 完璧主義が最大の敵:月次の目的は経営判断であり、1円単位の正確性ではありません。概算計上のルールを文書化しておけば、監査・税務でも説明できます。
- 「締め日」を社内に宣言する:経理内部の目標ではなく、社長・営業部門を含む全社の締切として共有しないと、資料は集まりません。
- 属人化を日程表で防ぐ:担当者が休んでも日程表とチェックリストで代替できる状態が標準化のゴールです。
- 会計ソフトの自動化と併用:銀行連携・CSV取込(関連記事:No.98 パワークエリで会計データの取込・整形)で1〜2営業日目の作業は大幅に圧縮できます。
- 顧問先に導入する場合:いきなり5営業日は挫折します。現状20日なら「まず10日」のように段階目標にし、ボトルネック1つずつの解消を月次面談のテーマにするのが定着のコツです。
月次決算チェックリストをご用意しています
この記事の構成(5営業日の日程表+WORKDAY期日計算→タスク別チェック→異常値レビュー表)を組み込んだExcelチェックリストを販売しています。月初日を入れるだけで当月の期日が自動セットされ、所要時間の記録でボトルネックが見える化されます。自社の経理体制づくりに、顧問先の月次早期化支援ツールとしてお使いください。
締めた後の数字の活かし方は月次損益管理の記事を(関連記事:No.17 月次損益管理)、報告資料の作り方はこちらをご覧ください(関連記事:No.34 月次報告資料の作り方)。
まとめ
- 月次決算はスピードが価値。早期化は根性ではなくボトルネック解消の設計で実現する
- 4大ボトルネックは請求書待ち・経費精算・在庫確定・決算整理の月次未実施
- 「概算でも早い」が「正確だが遅い」に勝る。概算計上ルールを文書化する
- WORKDAY関数の日程表と所要時間の記録で、改善対象をデータで特定する
- 異常値レビュー(説明できない科目ゼロ)を締めの合格基準にする

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