「今期はいくら納税することになりそうか」——決算の2〜3ヶ月前にこの概算がわかっていれば、決算対策の検討も納税資金の準備も余裕を持って進められます。逆に、申告書ができてから税額を知るようでは、打てる手はもうありません。
この記事では、法人税等(法人税・地方法人税・住民税・事業税)の概算額をExcelで試算する方法を、実効税率の考え方から解説します。
「法人税等」の中身を分解する
決算で納める税金は1つではありません。中小企業(資本金1億円以下)の場合、主に次の4つで構成されます。
| 税目 | 課税ベース | 税率の目安(中小法人) |
|---|---|---|
| 法人税 | 課税所得 | 所得800万円以下:15%/超過分:23.2% |
| 地方法人税 | 法人税額 | 法人税額×10.3% |
| 法人住民税(法人税割+均等割) | 法人税額+資本金等 | 法人税額×約7%+均等割(最低7万円) |
| 法人事業税(+特別法人事業税) | 課税所得 | 所得に応じ約3.5〜7%+特別法人事業税 |
すべて合わせた実効税率は、所得800万円以下の部分で約25%、800万円超の部分で約33〜34%が目安です。ざっくり掴むなら「利益の3分の1」、精度を上げるならExcelで段階計算します。
Excel試算シートの作り方
ステップ1:課税所得を見積もる
スタートは会計上の利益(税引前利益)ですが、税務上の所得とはズレがあります。主な調整項目を加減算する欄を設けます。
課税所得 = 税引前利益(着地見込み)
+ 加算(交際費の損金不算入分・役員給与の損金不算入分・減価償却超過額 など)
− 減算(受取配当等の益金不算入・繰越欠損金の控除 など)
繰越欠損金がある会社は、ここで控除を忘れると税額を大きく見誤ります(関連記事:No.62 欠損金の繰越管理)。
ステップ2:800万円で区切って法人税を計算
法人税 =MIN(課税所得,8000000)*15% + MAX(課税所得-8000000,0)*23.2%
地方法人税 =法人税*10.3%
住民税法人税割 =法人税*税率(自治体マスタ参照)
事業税等 =課税所得×税率(所得区分別マスタ参照)
MIN/MAXを使うと800万円の段階計算がIF不要のシンプルな式になります。住民税・事業税の税率は自治体と所得区分で変わるため、マスタシートに整理して参照させる設計が安全です。
ステップ3:中間納付と源泉税を差し引いて「納付見込額」へ
試算の最終目的は「決算後に実際にいくら払うか」です。中間申告で納付済みの金額と、預金利息などから源泉徴収された所得税額を差し引く欄を必ず設けます。ここまで含めて初めて資金繰り予定表に載せられる数字になります。(関連記事:No.11 中間申告の納税スケジュール管理)
なお、事業税は支払った事業年度の損金になるため、翌期の試算では当期確定分の事業税を経費側に織り込むと精度が上がります。
試算を決算対策につなげる
概算税額が見えたら、決算までに検討できる打ち手を並べて効果を比較します。
- 未払費用・未払金の計上漏れの総点検(関連記事:No.10 7)
- 決算賞与の支給(3要件の充足が前提。関連記事:No.10 6)
- 30万円未満の少額減価償却資産の取得(関連記事:No.5 2)
- 倒産防止共済の加入・年払い(関連記事:No.1 5)
各施策に「所得の減少額×実効税率=税額への効果」を掛けて一覧にすれば、そのまま顧問先への決算対策提案書になります。「対策の効果は実効税率分だけ」であり、支出を伴う節税は資金繰りを悪化させ得るというバランス感覚も、この一覧があると伝えやすくなります。
法人税概算試算テンプレートのご案内
課税所得の調整欄・800万円の段階計算・中間納付の差引・決算対策の効果比較表まで組み込んだ法人税等 概算試算シート(Excel)を用意しています。決算前検討会の資料としてそのまま印刷できるレイアウトです。
まとめ
- 法人税等は4税目の合計。実効税率の目安は所得800万円以下で約25%、超過分で約33〜34%
- 試算は「利益の着地見込み→税務調整→段階計算→中間納付の差引」の順に組む
- MIN/MAX関数で800万円の段階計算がシンプルに書ける
- 概算税額×決算対策の効果一覧までセットにすれば、そのまま提案資料になる

コメント