創業融資の申込みで最も差がつくのが、創業計画書の数値計画(売上予測・資金繰り・返済計画)です。熱意や事業アイデアがどれだけ魅力的でも、「売上1,000万円」の根拠が書けていない計画書は審査担当者に響きません。逆に、数字の積み上げ根拠が明確な計画書は、創業実績ゼロでも説得力を持ちます。
この記事では、日本政策金融公庫の創業計画書を想定して、審査担当者の視点に耐える数値計画をExcelで作る手順を解説します。融資制度の内容(自己資金要件・限度額・金利等)は改定されることがあるため、申込前に公庫の最新案内を必ず確認してください。
審査担当者は数値計画のどこを見るか
公庫の創業計画書で数字が絡む欄は主に「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(創業当初・軌道に乗った後)」の2つです。審査担当者が見ているのは次の3点です。
- 売上予測の根拠:客数×客単価×稼働日数など、検証可能な式に分解されているか。業界平均や立地データと乖離していないか
- 資金使途と調達のバランス:設備資金は見積書と一致しているか。運転資金は月商の何か月分か
- 返済可能性:税引後利益+減価償却費が年間返済額を上回るか。創業当初の赤字期間を自己資金で耐えられるか
つまり「希望額から逆算した数字」ではなく、根拠→売上→利益→返済の順に積み上がった数字が求められます。この構造をそのままExcelにします。
なお、自己資金と融資額のバランスも重要な評価軸です。制度上の自己資金要件は緩和・改定が続いていますが、実務感覚としては創業資金総額の3分の1程度の自己資金があると計画の安定感が大きく変わります。自己資金が薄い場合は、融資額を抑えて段階的に拡大する計画にするか、開業時期を遅らせて自己資金を積み増すか、という選択も含めて数値計画で比較しておくと、面談での想定問答に強くなります。
Excelで創業数値計画を作る手順
ステップ1:売上根拠シートを作る
業種に応じた売上分解式を先に決めます。店舗業なら「席数×回転数×客単価×営業日数」、サービス業なら「顧客数×単価×リピート率」。月ごとに稼働率を変えられるようにして、開業1か月目から徐々に立ち上がる形にします。
=席数*満席率*回転数*客単価*営業日数
初月から満席の計画は一発で疑われます。初月は稼働率40〜50%程度から始めて6〜12か月かけて目標水準に到達するカーブが現実的です。
ステップ2:月次損益計画(12〜24か月)を作る
売上根拠シートから月次売上を参照し、原価(原価率で計算)・人件費・家賃・水道光熱費・広告費・支払利息などを月次で並べます。損益分岐点となる月が何か月目かを明示すると、審査担当者が知りたい「いつ黒字化するか」に直接答えられます(関連記事:No.18 損益分岐点の計算)。
ステップ3:月次資金繰り予定表を作る
損益と資金繰りは別物です。売掛の入金サイト、買掛の支払サイト、借入金の返済(元金は損益に出ない)、開業前の設備投資支出を反映した資金繰り表を作り、月末残高が一度もマイナスにならないことを確認します(関連記事:No.16 資金繰り表の作り方)。
月末残高 =前月末残高+当月入金合計-当月支出合計-借入返済額
ステップ4:返済計画と返済能力の検証
借入希望額・金利・返済期間・据置期間を入力すると月々の返済額が出るシートを作り、返済能力を判定式で検証します。
=IF((税引後利益+減価償却費)>=年間返済元金,"返済可能","計画見直し")
元利均等返済の月額は =-PMT(金利/12,返済月数,借入額) で計算できます。据置期間中は利息のみの支払いになる点も反映しましょう。
実務の注意点・つまずきポイント
- 自己資金の「見せ方」はコツコツ貯めた通帳が最強:直前の一括入金(見せ金)は通帳の原本確認で必ず分かります。贈与の場合は贈与契約書など出所の説明資料を用意
- 売上計画と生活費の整合:個人事業の場合、事業から生活費を出せない期間の生活資金も資金繰りに含めないと計画倒れと見られます
- 設備資金は見積書と1円単位で一致させる:資金使途の曖昧さは減額・否決の主因です
- 楽観・悲観の2パターンを用意:売上70%シナリオでも返済できることを示せると強い計画書になります
- 面談で数字を自分の言葉で説明できるか:税理士に丸投げした数字は面談で崩れます。分解式ごと理解しておくことが重要です
創業計画数値テンプレートのご案内
本記事の売上根拠→月次損益→資金繰り→返済検証が連動した「創業融資数値計画Excel」を用意しています。業種別の売上分解式プリセット付きで、入力欄を埋めるだけで公庫の創業計画書に転記できる数字が揃います。既存事業の融資対応には資金繰り予定・返済計画テンプレート(関連記事:No.80 融資用数値計画)をどうぞ。
まとめ
- 審査で見られるのは売上根拠・資金使途と調達のバランス・返済可能性の3点
- 売上は「客数×単価」等の検証可能な式に分解し、立ち上がりカーブを現実的に
- 損益計画とは別に月次資金繰り表を作り、月末残高マイナスがないことを確認
- 返済能力は「税引後利益+減価償却費≧年間返済元金」で検証
- 自己資金は出所の説明が命。制度内容は申込前に公庫の最新案内で確認

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