Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・自社サイト(Shopify・BASEなど)――複数チャネルで販売するネットショップの経理は、想像以上に複雑です。モールごとに手数料体系が違い、売上計上のタイミングと入金のタイミングがズレ、入金額は手数料が引かれた後の金額。通帳の入金額だけ見て売上を記帳すると、売上の過少計上と手数料の経費計上漏れが同時に起きます。
この記事では、モール別の売上・手数料を集計し、売掛金と入金を照合するExcel管理表の作り方を解説します。EC事業者本人はもちろん、EC顧問先の記帳に悩む税理士事務所の実務にも使える設計です。
ネットショップ経理の基礎知識:なぜ入金額≠売上なのか
モール経由の販売では、お金の流れが次のようになります。
- 売上の発生:商品の販売時点(出荷基準・引渡基準など)で総額を売上計上
- 手数料の発生:販売手数料・決済手数料・ポイント負担・配送サービス利用料などがモール側で差し引かれる
- 入金:締め日ごとに「売上総額−手数料−返金」の純額が、半月〜1か月遅れで振り込まれる
正しい記帳は「売上は総額、手数料は経費、入金までの間は売掛金」の3点セットです。入金額だけを売上にする「純額計上」は、売上高が過少になり、消費税の納税義務判定(基準期間の課税売上高1,000万円)や融資審査の売上規模も歪めてしまいます。手数料には消費税の課税・不課税が混在するものもあり(海外事業者への支払等)、区分が必要な場合は個別にご確認ください。
Excelでモール別売上管理表を作る手順
ステップ1:モール別の月次集計シートを作る
各モールの管理画面からダウンロードできる売上レポート(CSV)をもとに、モール×月のマトリクスで、売上総額/販売手数料/決済手数料/その他手数料/返金額/差引入金予定額を集計します。
差引入金予定額 = 売上総額 − 手数料合計 − 返金額
実質手数料率 = 手数料合計 ÷ 売上総額
実質手数料率の行がこの表の主役です。モールごとの「本当の取り分」が並ぶと、どのチャネルに広告費や在庫を寄せるべきかの判断材料になります。名目の手数料率は同じでも、ポイント原資や配送料の負担で実質率は大きく違うことがよくあります。
ステップ2:入金照合シートを作る
モール/締め期間/入金予定日/入金予定額/実際の入金日/実際の入金額/差額/照合状態の8列で、締めサイクルごとに1行の照合表を作ります。
差額 = 実際の入金額 − 入金予定額
照合状態 = IF(実際の入金額="","未入金",IF(差額=0,"OK","要調査"))
差額が出る典型原因は、返金・チャージバックの後日反映、保留金(留保)、広告費やオプション利用料の相殺です。「要調査」の行だけモールの明細を深掘りすれば、全件突合しなくても照合が回ります。
ステップ3:売掛金残高を自動計算する
決算・月次で必要になるのが「モールに預けたままのお金=売掛金残高」です。
売掛金残高 = 前月末残高 + 当月売上総額 − 当月手数料 − 当月返金 − 当月入金額
この残高が、モール管理画面の「未払残高」とおおむね一致していれば集計は正しく回っています。期末は特に、12月販売・1月入金分の売掛金計上が申告の正確性を左右します。
ステップ4:会計ソフトへの取込用に仕訳サマリーを作る
月次の集計値から、仕訳の形(売掛金/売上高、支払手数料/売掛金、普通預金/売掛金)に並べたサマリー行を自動生成しておくと、会計ソフトへの入力が月にモールごと3仕訳で済みます。CSV取込形式はお使いのソフトのサンプルに合わせて列を調整してください。
実務の注意点・つまずきポイント
- ポイント・クーポンの負担区分:店舗負担分は売上値引きまたは販促費として処理します。モール負担分と混同しないようレポートの項目名で区別してください。
- 返金・キャンセルのタイミング差:販売月と返金月がズレると月次の粗利が波打ちます。返金は発生月に計上し、メモを残します。
- 在庫と送料の管理は別建てで:この管理表は売上・入金に特化しています。FBA在庫などモール預け在庫は棚卸資産として別途カウントが必要です。
- 基準期間の課税売上高は総額で判定:純額計上をしていると免税・課税の判定を誤るリスクがあります。過去分も総額に引き直して確認を。
- レポートの保存:モールの売上レポートは取得期間に制限がある場合があります。毎月ダウンロードして保存する運用をルール化しましょう(電子帳簿保存法の要件に沿った保存方法は関連記事参照)。
EC売上管理テンプレートをご用意しています
この記事の構成(モール別月次集計→入金照合→売掛金残高→仕訳サマリー)を組み込んだExcelテンプレートを販売しています。モールのレポート数値を月1回転記するだけで、実質手数料率の比較・入金差額の要調査リスト・期末売掛金までが自動で揃います。EC事業者の自計化にも、税理士事務所のEC顧問先の記帳整備にもお使いいただけます。
モールCSVの会計ソフト取込の実務はこちらの記事を(関連記事:No.43 CSVの会計ソフト取込)、売上レポート等の電子データの保存要件はこちらをご覧ください(関連記事:No.66 電子帳簿保存法の索引簿)。
まとめ
- ネットショップの売上は「総額計上」が原則。入金額を売上にすると過少計上になる
- モール×月のマトリクスで実質手数料率を比較すると、チャネル戦略の判断材料になる
- 入金照合は締めサイクル単位で行い、差額のある行だけ深掘りする運用が効率的
- 売掛金残高の式を回し、モール管理画面の未払残高と定期的に突合する
- 課税売上高の判定は総額ベース。免税判定・融資資料にも影響するため要注意

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