「在庫が多すぎる」「営業がすべての客先を平等に回っている」——リソースの使い方に濃淡がない状態を数字で正すのがABC分析です。売上や粗利の累積構成比で対象をA・B・Cにランク分けし、上位に集中し下位を簡素化する。考え方は単純ですが、Excelでの正しい作り方(と、やりがちな間違い)は意外と知られていません。
この記事では、累積構成比の計算からパレート図の作成、在庫削減・営業リソース配分への活用例までを解説します。
ABC分析の基本
「売上の8割は2割の商品が生む」というパレートの法則を前提に、構成比の累積で3ランクに分けます。しきい値は目的に応じて調整して構いません。
| ランク | 累積構成比の目安 | 管理方針の例(在庫の場合) |
|---|---|---|
| A | 〜70% | 重点管理。毎週発注・欠品厳禁・安全在庫を厚く |
| B | 70〜90% | 標準管理。定期発注・月次確認 |
| C | 90〜100% | 簡素管理。まとめ発注・取扱い中止の検討対象 |
Excelでの作り方
ステップ1:集計と降順ソート
売上明細から商品別(得意先別)の年間売上をSUMIFで集計し、金額の大きい順に並べ替えます。ここが並んでいないと累積構成比が意味を失います。Microsoft 365ならSORT関数で自動化できます。
商品別売上:=SUMIF(明細!商品コード,A2,明細!金額)
自動ソート(365):=SORT(集計範囲,2,-1)
ステップ2:構成比・累積構成比・ランク判定
構成比:=B2/SUM($B$2:$B$100)
累積構成比:=SUM($B$2:B2)/SUM($B$2:$B$100)
ランク:=IFS(累積構成比<=0.7,"A",累積構成比<=0.9,"B",TRUE,"C")
累積構成比は「先頭から当該行までの合計÷総合計」。ランクはIFSでしきい値判定するだけです。条件付き書式でA=緑・B=黄・C=グレーに塗ると一覧性が上がります。
ステップ3:パレート図を描く
- 「商品名・売上・累積構成比」の3列を選択→挿入→組み合わせグラフ
- 売上=集合縦棒(主軸)、累積構成比=折れ線(第2軸、最大値100%に固定)
- Excel 2016以降なら「挿入→統計グラフ→パレート図」でも一発作成可(細かい書式調整は組み合わせグラフのほうが柔軟)
数値例:在庫600品目のABC分析
| ランク | 品目数 | 売上構成比 | 在庫金額 | 打ち手 |
|---|---|---|---|---|
| A | 85品目(14%) | 70% | 1,200万円 | 欠品防止を最優先 |
| B | 160品目(27%) | 20% | 900万円 | 発注ロットの見直し |
| C | 355品目(59%) | 10% | 1,100万円 | まとめ発注・整理候補 |
典型的なのは「売上構成比10%のC品目が在庫金額の3分の1を占めている」という発見です。C品目の在庫を半減できれば550万円のキャッシュが生まれます。ABC分析の成果は表ではなく、この「打ち手と金額」まで落とし込んで初めて出ます。滞留在庫の扱いは棚卸記事も参照してください。(関連記事:No.84 実地棚卸の集計表)
活用パターン
- 在庫管理:Aは発注頻度を上げて1回あたりを小さく、Cはまとめ発注で管理コストを削減
- 営業リソース配分:得意先を粗利額でABC分析し、A先への訪問頻度を厚く、C先は電話・メール対応へ切り替え(関連記事:No.83 商品別・得意先別の粗利管理)
- 経理業務の効率化:経費科目や取引先を金額でABC分析し、チェックの濃淡(A=全件確認、C=サンプル確認)を設計する——事務所の月次監査にも応用できます
実務の注意点・つまずきポイント
- 評価軸は目的に合わせる:在庫削減なら「在庫金額」、営業配分なら「粗利額」、欠品防止なら「出荷頻度」。売上だけでランク付けすると薄利多売品を過大評価します。
- C判定=即廃番ではない:A商品の付属品・補修部品など、C品目でもA商品の販売を支えるものがあります。ランクは機械判定、最終判断は定性情報とセットで。
- 新商品はランク保留にする:発売直後の商品は実績が少なくC判定になりがちです。「発売6か月未満は判定対象外」のフラグを設けましょう。
- 期間は12か月が基本:季節性のある商売で3か月データを使うと、季節商品の評価が歪みます。逆に季節ごとの入替え判断には四半期別の分析を併用します。
- 定期的に更新する:ランクは動きます。四半期〜半期ごとに更新し、B→Aに上がった商品の欠品と、A→Bに落ちた商品の過剰在庫を早期に捕まえてください。
よくある質問
Q. 品目数が少ない会社でも意味がありますか?
20〜30品目程度でも、構成比の偏りを数字で確認する価値はあります。品目が少ない場合は商品ではなく「得意先×商品」の組合せで分析すると、粒度が細かくなり発見が増えます。
Q. ピボットテーブルでもできますか?
できます。値フィールドの設定で「計算の種類→比率の累計」を選ぶと累積構成比が一発で出ます。明細データが毎月増える運用ならピボット版のほうが更新が楽です。(関連記事:No.38 ピボットテーブルの経理活用)
Q. AとBの境目(70%・90%)に根拠はありますか?
法則的な必然はなく、経験則上の慣行です。重要なのはしきい値の精密さではなく、ランクごとに管理方法を実際に変えること。品目数が極端に偏る場合は「A=上位20品目」のように品目数で切る方法も実務的です。しきい値セルをマスタ化しておけば、自社に合う区切りを試しながら調整できます。
ABC分析テンプレートのご案内
明細貼り付け→自動ソート→累積構成比・ランク判定→パレート図・ランク別サマリーまで自動生成するABC分析Excelテンプレートをご用意しています。評価軸(売上/粗利/在庫金額/出荷頻度)の切替と新商品の判定除外フラグも組み込み済みです。
まとめ
- ABC分析は降順ソート→構成比→累積構成比→しきい値判定の4手順で作れる
- パレート図は縦棒+第2軸の折れ線(累積構成比)の組み合わせグラフで描く
- 評価軸は目的で変える。在庫は在庫金額、営業は粗利額が基本
- C判定=即廃番ではなく、補完関係・新商品などの定性判断を残す
- 四半期〜半期で更新し、ランク変動を欠品・過剰在庫の早期警報として使う

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