未成工事支出金の期末振替はこう出す|計算手順・仕訳・検算方法を数値例で解説【建設業の決算】

建設業の工事台帳をExcelで作る方法【工事別原価管理と進行基準】

建設業の決算で、毎年いちばん手が止まるのが未成工事支出金です。

「期末に未完成の工事はどれか」「その工事にいくら原価がかかっているか」「前期末の残高はどう戻すのか」。 考え方そのものは難しくないのに、工事台帳が整っていないと金額が出せない。だから決算のたびに、 請求書の束と会計データを突き合わせる作業が発生します。

この記事では、未成工事支出金の期末残高を出すところから、決算整理仕訳、そして **「その金額が合っているかを1行で確かめる検算式」**までを、具体的な数値例で最後まで通します。

会計ソフトの入力方法の話ではなく、手元の工事台帳から決算の数字を作る手順の話です。

本記事は一般的な会計・税務の考え方を整理したものです。個別の適用可否は必ず一次情報および顧問税理士にご確認ください。


目次

目次

  1. 未成工事支出金とは(30秒で)
  2. なぜ期末に振り替えるのか
  3. 期末残高の出し方 ― 3ステップ
  4. 期中の処理方法で仕訳が変わる
  5. 数値例で最後まで通す
  6. ★合っているかを1行で確かめる検算式
  7. よくある間違い5つ
  8. 消費税の落とし穴(通達11-3-5)
  9. 完成工事原価報告書との関係
  10. Excelで回すなら何が必要か
  11. よくある質問

1. 未成工事支出金とは(30秒で)

未成工事支出金とは、期末時点でまだ完成・引渡しをしていない工事に投入した原価を、 費用ではなく資産として貸借対照表に計上しておくための勘定科目です。

一般の製造業でいう「仕掛品」に当たります。貸借対照表では流動資産に置きます。

似た名前の科目に未成工事受入金がありますが、こちらは中身がまったく違います。

科目 中身 BS上の位置
未成工事支出金 未完成工事にかかった原価(材料購入・外注のための前渡金や手付金を含む) 流動資産
未成工事受入金 未完成工事について受け取った前受金 流動負債

同じ工事について両方が発生することはよくありますが、相殺してはいけません。 片方は資産、片方は負債で、それぞれ総額で計上します。

なお建設業の財務諸表上の未成工事支出金には、未完成工事に要した工事費のほか、 材料購入や外注のための前渡金・手付金も含まれます (建設業法施行規則 別記様式第十五号の勘定科目の分類)。 前払いを「前渡金」に置いたままにしていると、決算書の金額と台帳の金額が合わなくなります。


2. なぜ期末に振り替えるのか

理由は一つ、費用収益対応の原則です。

中小の建設業では、多くの場合工事完成基準(工事が完成して引き渡した期に、 売上=完成工事高と原価=完成工事原価をまとめて計上する方法)を採っています。

すると、期をまたぐ工事ではこういうことが起きます。

  • 当期に材料費・外注費は出ていった(=お金は減った)
  • しかし工事は未完成なので、売上はまだ立たない

このまま原価を当期の費用にしてしまうと、売上ゼロ・費用だけの期ができ、 翌期は逆に費用の少ない高利益の期になります。実態と合いません。

そこで期末に、未完成工事の原価を費用から資産(未成工事支出金)へ移し、 完成した期に費用として戻す。これが期末振替です。

補足:進行基準が強制されるケース 法人税法第63条第1項では、①着手日から契約上の引渡期日までの期間が1年以上、②請負金額が10億円以上、 ③請負代金額の1/2以上が引渡期日から1年を経過する日後に支払われるものでない、 の3つをすべて満たす工事を長期大規模工事といい、工事進行基準が強制されます(法人税法施行令第129条)。 ②の10億円は、税抜経理方式なら税抜金額、税込経理方式なら税込金額で判定します。 中小の工務店ではまず該当しませんが、「該当しないことを確認した」記録は残しておくと安心です。


3. 期末残高の出し方 ― 3ステップ

未成工事支出金の期末残高は、次の3ステップで機械的に出せます。

ステップ1:工事を3つに分ける

決算日を基準に、台帳に載っている工事を完成引渡日で3つに仕分けます。

区分 判定 当期の決算での扱い
当期完成 完成引渡日が当期の期間内 完成工事高・完成工事原価に計上
期末未成 完成引渡日が空欄、または当期末より後 未成工事支出金(資産)に計上
前期完成 完成引渡日が当期開始日より前 当期の決算には計上しない

ここで基準になるのは引渡日であって、工事が物理的に終わった日でも、請求書を出した日でもありません。 検収書・引渡確認書の日付を根拠にするのが確実です。

ステップ2:「期末未成」の工事の原価累計を合計する

各工事について、着工から期末までに発生した原価の累計を出します。 当期分だけではなく、前期以前に発生した分も含めた累計である点に注意してください。

この合計が、そのまま未成工事支出金の期末残高になります。

ステップ3:前期末の残高と入れ替える

前期末の未成工事支出金は、当期に完成したか、期末も未完成のままかのどちらかです。 いずれにせよ前期末残高はいったん全額取り崩し、期末残高を新たに計上します。

洗い替え方式と呼ばれる処理で、実務ではこれがいちばん間違いが少ない方法です。


4. 期中の処理方法で仕訳が変わる

決算整理仕訳の形は、期中に原価をどう処理していたかで変わります。ここを混同すると二重計上になります。

方式A:期中は費用(完成工事原価)で処理している場合

中小企業でいちばん多いパターンです。請求書が来たら都度、材料費・外注費などで費用計上しています。 この場合、決算整理仕訳は2本です。

No 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1 完成工事原価 前期末残高 未成工事支出金 前期末残高 前期末残高の取崩(当期の原価へ)
2 未成工事支出金 期末残高 完成工事原価 期末残高 期末未完成分を資産へ振替

方式B:期中は未成工事支出金(資産)で処理している場合

原価が発生するたびに未成工事支出金に積み上げている場合は、1本だけです。

No 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1 完成工事原価 当期完成工事原価 未成工事支出金 当期完成工事原価 当期完成分を完成工事原価へ振替

方式Bでは、振り替えなかった残りがそのまま期末残高になります。

どちらの方式でも、決算後の未成工事支出金の残高とP/Lの完成工事原価は同じ金額になります。 違うのは経理の途中経過だけです。自社がどちらでやっているかは、期中の総勘定元帳を1枚見れば判別できます。


5. 数値例で最後まで通す

3月決算の工務店(当期=2026年4月1日〜2027年3月31日)で、期中に動いた工事が4件あったとします。

工事 着工日 完成引渡日 請負金額(税抜) 原価累計
A:○○様邸 新築 2026/2/20(前期) 2026/9/25 24,800,000 18,803,500
B:△△ビル 外壁改修 2026/6/1 2026/12/18 18,600,000 10,251,000
C:□□倉庫 新築 2026/10/1 未完成 62,000,000 21,880,000
D:◇◇店舗 内装 2026/1/15(前期) 2026/3/18(前期) 8,400,000 5,650,000

前期末(2026年3月31日)の未成工事支出金は 1,200,000円(工事Aの前期発生分)でした。

ステップ1:3つに分ける

  • 当期完成:A、B(完成引渡日が当期内)
  • 期末未成:C(完成引渡日が空欄)
  • 前期完成:D(完成引渡日が当期開始日より前)

ステップ2:期末残高を出す

期末未成はCだけなので、

未成工事支出金(期末残高)= 21,880,000 円

ステップ3:当期の損益を確定する

完成工事高    = 24,800,000 + 18,600,000 = 43,400,000 円
完成工事原価  = 18,803,500 + 10,251,000 = 29,054,500 円
完成工事総利益= 43,400,000 - 29,054,500 = 14,345,500 円(総利益率 33.1%)

工事Aの完成工事原価が 18,803,500円である点に注目してください。 このうち1,200,000円は前期に発生した原価です。前期末に資産へ振り替えておいた分が、 完成した当期に費用へ戻ってくる。これが未成工事支出金の役割そのものです。

決算整理仕訳(方式Aの場合)

No 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
1 完成工事原価 1,200,000 未成工事支出金 1,200,000
2 未成工事支出金 21,880,000 完成工事原価 21,880,000

★6. 合っているかを1行で確かめる検算式

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

未成工事支出金の期末残高は、次の恒等式で必ず検算できます。

当期発生原価 - 未成工事支出金の増減 - 当期完成工事原価 = 0

先ほどの数値例で確かめます。

当期発生原価  = 49,734,500 円
  (A 17,603,500 + B 10,251,000 + C 21,880,000 + D 0)

未成工事支出金の増減 = 21,880,000 - 1,200,000 = 20,680,000 円

当期完成工事原価 = 29,054,500 円

検算: 49,734,500 - 20,680,000 - 29,054,500 = 0 ✔

なぜ0になるのか。 未成工事支出金という勘定を1つの箱と見てください。当期に入ってくるのは「前期末残高」と「当期発生原価」、 出ていくのは「完成した工事の原価(=当期完成工事原価)」、残ったものが「期末残高」です。したがって

前期末残高 + 当期発生原価 = 当期完成工事原価 + 期末残高

が成り立ちます。検算式は、これを移項しただけです。

ただし無条件の恒等式ではありません。成立の前提は「当期に発生した工事原価が、 もれなく期末残高か当期完成工事原価のどちらかに行き着いている」ことです。 前期以前に引き渡し済みの工事について当期に原価が発生した場合(手直し工事、遅れて届いた請求書など)は、 その分を当期の完成工事原価に含めて集計してください。含め忘れると差額が出ます。

0にならないときの4つの原因

差額が出たら、ほぼ次のどれかです。この1行があるだけで、決算後の「原価がおかしい」を先に潰せます。

① 原価の入力漏れ・二重計上 請求書1枚が台帳に入っていない、または同じ請求書を2回入れている。 差額がちょうど請求書1枚分の金額なら、まずこれを疑います。

② 前期末残高の入力誤り 前期の決算書の未成工事支出金と、台帳から計算した前期末時点の未成工事原価が食い違っている。 期首時点で未完成だった工事は、前期以前に発生した原価も台帳に入っていないと合いません。 台帳を今期から作り始めた場合、ここで必ずズレます。

③ 完成引渡日の入れ忘れ・入れ間違い 実際は当期に引き渡したのに台帳の完成引渡日が空欄のままだと、その工事の原価が丸ごと 未成工事支出金に残り、完成工事原価が過少になります。差額が特定の工事の原価累計と一致したら、これです。

④ 前期以前に完成した工事の原価が当期に発生している 手直し工事や、遅れて届いた請求書など。この原価は資産(未成工事支出金)にも 当期完成工事の原価累計にも入らないため、そのままだと差額として残ります。 当期の完成工事原価(または完成工事補償費等)に計上して、集計に含めてください。


7. よくある間違い5つ

① 完成引渡日ではなく「工事完了日」で判定している

区分の基準は引渡しです。工事自体は3月中に終わっていても、引渡しが4月なら翌期の完成工事です。 検収書や引渡確認書の日付を根拠にしてください。

② 未成工事受入金と相殺している

前受金をもらっている未完成工事について、原価と前受金を相殺して差額だけ計上してしまう例。 企業会計原則の総額主義(第三 貸借対照表原則 一 B)に反する処理で、資産と負債はそれぞれ総額で計上します。

相殺すると総資産・総負債が同額だけ小さくなるため、経営事項審査のY点 (負債回転期間・総資本売上総利益率・自己資本比率)は実態より良く出てしまいます。 建設業許可業者は決算変更届で財務諸表を提出する義務があり(建設業法第11条第2項)、 評点の水増し=虚偽記載を疑われかねません。必ず総額で計上してください。

③ 前期以前の原価が台帳に入っていない

期をまたぐ工事は、着工からの原価累計が必要です。当期分だけを集計すると、 完成工事原価が過少になり、検算も合いません。

④ 販管費まで未成工事支出金に入れている

未成工事支出金に入るのは工事原価です。本社の役員報酬や一般管理費は入りません。 現場の共通経費を配賦している場合は、配賦基準を毎期継続して使うことが前提になります。

⑤ 消費税の処理を会計処理に引っ張られている

これは次の章で詳しく扱います。未成工事支出金として資産計上したからといって、 仕入税額控除も先送りになるわけではありません。


8. 消費税の落とし穴(通達11-3-5)

未成工事支出金で最も間違いが多いのが、消費税の仕入税額控除の時期です。

会計上は資産に計上していても、消費税は原則として課税仕入れをした日に控除します。 消費税法基本通達11-3-5にこう定められています。

事業者が、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について 未成工事支出金として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の 属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるが、 当該未成工事支出金として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の引渡しをした日の属する課税期間における 課税仕入れ等としているときは、継続適用を条件として、これを認める。

— 消費税法基本通達11-3-5(未成工事支出金)

つまり、

  • 原則:課税仕入れをした日(=材料の引渡しを受けた日、外注の役務提供を受けた日。請求書の日付ではありません)の属する課税期間に控除する
  • 例外:引渡日の属する課税期間にまとめて控除してもよい。ただし継続適用が条件

例外を選んだ年と原則に戻した年が混在すると、否認されるリスクがあります。 どちらを採っているかを社内で明確にし、毎期同じ処理を続けることが実務上の要点です。

インボイスの経過措置と重なると、さらにややこしい

さらに現在は、免税事業者からの課税仕入れについて経過措置が走っています。 控除できる割合が期間で変わるため、取引時期によって控除額が変わります。

取引の時期 控除できる割合
2023/10/1 〜 2026/9/30 80%
2026/10/1 〜 2028/9/30 70%
2028/10/1 〜 2030/9/30 50%
2030/10/1 〜 2031/9/30 30%
2031/10/1 〜 控除不可

※ 令和8年度税制改正大綱等で、当初予定(2026年10月から50%)からの見直しが示されています。

※ 同じ改正で、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一の免税事業者等からの課税仕入れの 合計額(税込)がその事業年度で1億円を超える部分にはこの経過措置が使えません(改正前は10億円)。 大口の外注先が免税事業者の場合は要注意です。

一人親方など免税事業者への外注が多い建設業では、ここが利益に直接効きます。 控除できなかった消費税は、税抜経理であれば原価に算入されます。 つまり工事ごとの原価も、この分だけ増えます。

工事台帳を作るときは、明細ごとに「適格請求書発行事業者からの仕入か/免税事業者からの仕入か」を 持っておかないと、正しい工事原価が出せません。


9. 完成工事原価報告書との関係

当期完成工事の原価が確定したら、それを費目別に並べたものが完成工事原価報告書です。 建設業法施行規則の別記様式第十六号として様式が定まっており、 建設業許可業者は決算変更届(事業年度終了届)で提出します。

区分は4つ、そこに内書きが2つ付きます。

区分 内容
Ⅰ 材料費 工事のために直接購入した素材・半製品・製品、材料貯蔵品勘定等から振り替えられた材料費(仮設材料の損耗額等を含む)
Ⅱ 労務費 工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金・給料・手当等
(うち労務外注費) 労務費のうち、工種・工程別等の工事の完成を約する契約で、その大部分が労務費であるものに基づく支払額
Ⅲ 外注費 工種・工程別等の工事について素材・半製品・製品等を作業とともに提供し完成を約する契約に基づく支払額(労務費に含めたものを除く)
Ⅳ 経費 材料費・労務費・外注費以外の費用(動力用水光熱費、機械経費、設計費、労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料など)
(うち人件費) 経費のうち、従業員給料手当、退職金、法定福利費及び福利厚生費

実務でつまずきやすいのが内書きの2つです。

  • 工種・工程別等の工事で、その大部分が労務費であるものへの支払(人工出しで受けている一人親方への支払いなど)は、 労務費に含めて記載することができ、含めた場合はその金額を**(うち労務外注費)として労務費の内書き**にします。 労務費に含めなかったものは外注費に残ります。どちらで運用するかは毎期そろえてください。
  • 人件費は「労務費」ではなく経費の内書きで、中身は従業員給料手当・退職金・法定福利費・福利厚生費です。

ここでいちばん間違えやすいのが法定福利費です。 労務費に入るのは「直接雇用の作業員に対する賃金・給料及び手当等」までで、 事業主負担の社会保険料などの法定福利費・福利厚生費・退職金は、 現場作業員に係るものであっても労務費には入らず、経費(うち人件費)に区分します。

工事台帳の費目を作る段階で、この2つの内書きを拾える設計にしておくと、 決算時に請求書を数え直さずに済みます。

なお決算変更届の提出期限は、毎事業年度終了後4か月以内です。 法人税の申告期限(原則2か月)とは別なので、決算作業の延長線上で片付けてしまうのが効率的です。

2024年の建設業法改正も押さえておく

令和7年(2025年)12月12日に全面施行された改正建設業法では、中央建設業審議会が労務費に関する基準を 作成・勧告し(勧告は同年12月2日)、通常必要と認められる材料費等 (材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金)の額を著しく下回る見積りが禁止されました(法第20条第2項)。 注文者がそこまで下げるよう変更を求めることも禁止です(同条第6項)。 契約段階では、通常必要と認められる原価に満たない金額での契約が禁止されています(法第19条の3)。

見積書には、工事の種別ごとの材料費・労務費と、法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金 (建設業法施行規則第13条の12)その他必要な経費の内訳、 さらに工程ごとの作業に必要な日数の記載が求められます(法第20条第1項)。

これらは完成工事原価報告書の4区分とは切り口が違うため、 台帳の費目に「4区分」と「内訳明示」の2軸を持たせておくと、どちらの様式にも1回の入力で対応できます。


10. Excelで回すなら何が必要か

ここまでの手順を毎期こなすために、工事台帳が満たすべき条件は5つです。

① 全工事の原価を1か所に、1明細1行で貯めていること

無料で配布されている工事台帳の多くは「1工事=1シート」です。この形だと工事が30件あればシートが30枚になり、 全工事を横断した集計ができません。未成工事支出金は「期末未成の工事だけを合計する」作業なので、 横断集計ができない台帳では毎回手作業になります。

② 工事ごとに完成引渡日を持っていること

区分の判定は完成引渡日で決まります。ここが台帳にないと、決算のたびに現場に確認する羽目になります。

③ 着工からの原価累計が出せること

期をまたぐ工事のために、当期分と全期間の累計を両方出せる必要があります。

④ 課税区分(適格/免税/対象外)を明細ごとに持っていること

経過措置で控除できなかった消費税を原価に算入するために必要です。

⑤ 検算式が入っていること

第6章の恒等式です。これが入っていれば、入力漏れ・前期末残高の誤り・完成引渡日の入れ忘れを 決算書を作る前に見つけられます。


上の5つを満たしたExcelテンプレートを用意しました

建設業の決算用Excelテンプレート

工事台帳 スタンダード

未成工事支出金の期末残高、当期完成工事原価、決算整理仕訳、完成工事原価報告書までつなげて確認できるExcelテンプレートです。

  • 工事コードを選ぶだけで、全工事の原価を1枚に集約
  • 完成引渡日から当期完成・期末未成・前期完成を自動判定
  • 未成工事支出金の期末残高と決算整理仕訳を自動出力
  • 第6章の検算式を内蔵。合わなければ「要確認」が出ます
  • 完成工事原価報告書の区分・内書きにも対応
  • Excel 2016以降で動作、マクロなし

Excelファイル本体は当サイトには添付していません。購入・ダウンロードは外部販売サイトで行います。販売ページ公開後にリンクを掲載します。


11. よくある質問

Q1. 未成工事支出金と未成工事受入金は相殺していいですか?

いいえ。未成工事支出金は流動資産、未成工事受入金は流動負債で、それぞれ総額で計上します (企業会計原則・総額主義)。相殺すると総資産・総負債が圧縮され、経営事項審査のY点が実態より高く出てしまいます。 決算変更届で提出する財務諸表ですから、虚偽記載を疑われないためにも総額計上が必須です。

Q2. 期末に未完成の工事が1件もない場合はどうしますか?

期末残高は0円になります。この場合でも、前期末残高を取り崩す仕訳(方式Aの仕訳1)は必要です。 残高が0だからといって何もしないと、前期末残高が資産に残り続けます。

Q3. 未成工事支出金に販管費は入れますか?

入れません。対象は工事原価(材料費・労務費・外注費・経費)です。 本社の一般管理費や役員報酬は販管費として当期の費用にします。

Q4. 消費税の仕入税額控除は、引渡しの期にまとめてもいいですか?

消費税法基本通達11-3-5により、継続適用を条件として認められています。 原則は課税仕入れをした日の属する課税期間です。年によって処理を変えると否認リスクがあるため、 どちらを採るか決めて毎期同じ処理を続けてください。

Q5. 検算式が合いません。何から見ればいいですか?

差額の金額を手がかりにするのが速いです。 差額が請求書1枚分に近ければ入力漏れ、特定の工事の原価累計と一致すれば完成引渡日の入れ忘れ、 どちらでもなければ前期末残高(=台帳に前期以前の原価が入っているか)を疑います。

Q6. 工事台帳を今期から作り始めました。前期末残高はどう入れますか?

前期の決算書の未成工事支出金の金額を入れます。ただしその場合、 期首時点で未完成だった工事の前期以前の原価も台帳に入れておかないと検算は合いません。 最低限、期首時点で進行中だった工事については、着工からの原価累計を一度入力しておくことをおすすめします。


まとめ

  • 未成工事支出金=期末時点で未完成の工事に投入した原価。流動資産に計上する
  • 期末残高は「工事を3つに分ける → 期末未成の原価累計を合計 → 前期末残高と入れ替える」で出せる
  • 決算整理仕訳の本数は、期中に費用で処理していたか、資産で処理していたかで変わる
  • 当期発生原価 - 未成工事支出金の増減 - 当期完成工事原価 = 0 で検算できる(前期以前完成分の当期原価は完成工事原価に含めること)
  • 消費税の仕入税額控除は原則として課税仕入れの日。引渡日にまとめるなら継続適用が条件(通達11-3-5)
  • 完成工事原価報告書(様式第十六号)の内書き2つ(労務外注費・人件費)は台帳の費目設計で決まる

未成工事支出金でつまずくのは、会計処理が難しいからではありません。 金額を出す元になる工事台帳が整っていないからです。 台帳の形さえ決まってしまえば、決算の数字は毎年同じ手順で出せるようになります。


参考・出典


本記事の内容は2026年8月時点の公開情報に基づく一般的な整理です。税率・控除・各種様式は改正されます。 個別の会計処理・税務判断については、必ず一次情報および顧問税理士にご確認ください。

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