「役員社宅は節税になる」とよく言われますが、仕組みを誤解したまま導入すると、後から給与課税(源泉徴収漏れ)を指摘されるリスクがあります。
結論はシンプルです。会社が借りた(または所有する)住宅に役員が住み、役員から「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取っていれば、給与として課税されずに、会社が負担した家賃を経費にできます。 この記事では、その仕組みと「課税される・されない」の分かれ目を整理します。
※[令和7年4月1日現在法令等]に基づく国税庁タックスアンサーを参照しています。
目次
なぜ手取りが増えるのか:個人契約との比較
家賃15万円の部屋に住む役員を例に、個人契約と役員社宅を比べてみます。
| 個人契約 | 役員社宅 | |
|---|---|---|
| 契約者 | 役員個人 | 会社(法人名義) |
| 家賃の支払い | 役員報酬の手取りから15万円 | 会社が15万円を支払い、役員は一部(例:3万円)を負担 |
| 会社の経費 | ならない | 支払家賃と受取家賃の差額(例:12万円)が損金 |
| 役員の負担 | 税・社会保険料を引かれた後のお金で全額負担 | 賃貸料相当額の負担のみ |
個人契約の場合、15万円の家賃を払うには、税金や社会保険料を考えるとそれ以上の役員報酬が必要です。役員社宅にすると、住居費の大部分を会社の経費に移しつつ、役員個人の負担は賃貸料相当額まで下げられます。その分役員報酬を下げれば、所得税・住民税・社会保険料の負担も変わってきます。
※上記の「3万円」は例示です。実際の賃貸料相当額は物件の固定資産税課税標準額で決まります。計算方法は賃貸料相当額とは?計算方法と注意点をご覧ください。
給与課税されるかどうかの判断ポイント
次の順で判定します。
- 契約形態の確認:法人名義の契約か? 現金の住宅手当や、役員個人が契約した部屋の家賃を会社が負担する形は、社宅と認められず全額が給与課税
- 物件の分類:小規模な住宅か、それ以外か、豪華社宅か(判定基準は)
- 徴収額の確認:役員から受け取る家賃が賃貸料相当額以上か
| 受け取っている家賃 | 課税関係 |
|---|---|
| 賃貸料相当額以上 | 給与課税なし |
| 賃貸料相当額未満 | 差額が給与として課税 |
| 無償(タダで貸与) | 賃貸料相当額の全額が給与として課税 |
出典:国税庁タックスアンサー No.2600 役員に社宅などを貸したとき
よくある誤解:「家賃の50%を取ればいい」ではない
「社宅は家賃の半分を本人負担にすればOK」という説明を見かけますが、役員社宅では正確ではありません。
- 役員 × 小規模な住宅:固定資産税の課税標準額ベースの算式で計算した賃貸料相当額以上でよい。実勢家賃の50%より大幅に低くなることが多く、50%も取ると取りすぎ(メリットを捨てている)可能性がある
- 役員 × 小規模以外の借り上げ社宅:「会社が支払う家賃の50%」と「算式による額」の多いほう。ここで初めて50%が登場する
- 使用人(従業員):賃貸料相当額の50%以上でよい(家賃の50%ではない)
つまり「50%」が何に対する50%なのかがケースごとに違います。自社のケースの必要徴収額は社宅家賃はいくら徴収すればよいかで確認してください。
節税効果を打ち消さないための注意点
- 社会保険の現物給与:健康保険・厚生年金では、住宅の貸与は「現物給与」として標準報酬月額に影響する場合があります。都道府県ごとに定められた価額(畳1畳あたりの単価)で評価され、本人負担がそれ以上なら算入されません。税務と基準が別である点に注意し、加入手続きの際に年金事務所・専門家に確認を
- 個人事業主には使えない:社宅制度は法人の制度。個人事業主の自宅家賃は事業割合での按分(家事按分)の問題になる
- 敷金・礼金・仲介手数料:契約が法人名義であれば会社の支出として処理できるが、科目・償却の取り扱いは契約内容による
- 水道光熱費や駐車場:本人負担が原則。会社負担にすると別途給与課税の問題が生じ得る
まとめ
- 役員社宅の節税は「会社が家賃を払い、役員は賃貸料相当額だけ負担する」仕組み
- 法人名義の契約が大前提。住宅手当・個人契約の肩代わりは全額給与課税
- 「家賃の50%」は役員×小規模住宅には当てはまらない。算式で計算した額がライン
- 税務と社会保険で基準が違う点は要注意
本記事は一般的な税務情報の提供を目的としており、個別の判断は顧問税理士等にご確認ください。
