【2026年7月20日更新】85%超区分の資産計上期間・取崩期間の計算ロジックを精緻化し、受取人設定による給与課税の注記を追加しました(参考:国税庁タックスアンサーNo.5364-2)。
法人契約の生命保険の経理処理は、2019年の通達改正(いわゆるバレンタインショック)以降、「最高解約返戻率」によって資産計上割合が変わる複雑なルールになりました。契約ごとに区分が異なり、資産計上期間・取崩期間の管理も必要なため、「この保険料、いくら損金でいくら資産計上だっけ?」と毎月の仕訳で迷う経理担当者・会計事務所は多いはずです。
この記事では、定期保険・第三分野保険の経理処理ルールを判定表として整理し、契約管理台帳と仕訳自動計算をExcelで一元化する方法を解説します(2026年7月時点のルール。個別契約の処理は保険会社の経理処理案内・税理士への確認を前提としてください)。
基礎知識:最高解約返戻率による4区分
2019年7月8日以後契約の定期保険・第三分野保険(保険期間3年以上)は、最高解約返戻率により次の4区分で処理します。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上割合 |
|---|---|---|
| 50%以下 | なし | 全額損金算入 |
| 50%超70%以下 | 保険期間の当初4割の期間 | 支払保険料の40%を資産計上(60%損金) |
| 70%超85%以下 | 保険期間の当初4割の期間 | 支払保険料の60%を資産計上(40%損金) |
| 85%超 | 保険期間開始日から「最高解約返戻率となる期間」の終了日まで(その期間が5年未満なら5年、保険期間10年未満なら保険期間の1/2の期間) | 当初10年は「支払保険料×最高解約返戻率×90%」、11年目以降は×70%を資産計上 |
資産計上期間の終了後は全額損金となり、取崩期間に入ると資産計上額を均等に取り崩して損金化します。取崩期間は、50%超85%以下の区分では保険期間の75%経過後、85%超の区分では「解約返戻金額が最も高くなる期間」の経過後と、区分によって起点が異なる点に注意してください。なお、50%超70%以下でも年換算保険料30万円以下(1被保険者あたり・全保険会社合算)なら全額損金にできる少額特例があります。また、2019年改正前の既契約は旧ルール(長期平準定期の1/2損金等)のまま継続するため、契約日でルールが分かれる点が台帳管理を必須にします。
Excelで判定表+管理台帳を作る手順
ステップ1:契約マスタを作る
「保険会社/証券番号/被保険者/契約日/保険種類/保険期間/年払保険料/最高解約返戻率/適用ルール(新4区分・旧ルールをプルダウン)」を1行1契約で登録します。契約日で新旧ルールを自動判定させます。
適用区分 =IF(契約日<DATE(2019,7,8),"旧ルール",IF(最高返戻率<=50%,"全額損金",IF(最高返戻率<=70%,"40%資産計上",IF(最高返戻率<=85%,"60%資産計上","85%超・個別計算"))))
ステップ2:年次の仕訳額を自動計算する
契約ごとに「経過年数/資産計上期間内か/当年の損金算入額・資産計上額/資産計上累計/取崩期間の取崩額」を年次展開します。
資産計上期間・取崩期間は区分によって決め方が異なるため、契約マスタに「資産計上終了年」「取崩開始年」を契約ごとの入力項目として持たせ、年次展開の式はその値を参照する設計にします(当初4割の一律計算を85%超に適用してはいけません)。
資産計上終了年(入力):50超70%/70超85%=ROUNDUP(保険期間*0.4,0)
85%超=最高解約返戻率となる期間の終了年(5年未満なら5年。保険期間10年未満は保険期間の1/2)
取崩開始年(入力) :50超85%以下=保険期間*0.75経過後/85%超=解約返戻金が最高額となる期間の経過後
資産計上割合 =IF(区分="85%超",IF(経過年数<=10,最高返戻率*90%,最高返戻率*70%),固定割合(40%又は60%))
資産計上額 =IF(経過年数<=資産計上終了年,年払保険料*資産計上割合,0)
取崩額 =IF(経過年数>=取崩開始年,資産計上累計/取崩年数,0)
損金算入額 =年払保険料-資産計上額+取崩額
85%超区分は10年目までと11年目以降で係数が変わるうえ、資産計上期間・取崩期間も契約ごとの個別判定になります。保険会社が提供する契約ごとの経理処理案内の数値を「資産計上終了年」「取崩開始年」に転記して使うのが実務上最も確実です。月次仕訳に使う「今月の前払保険料・保険積立金・支払保険料の金額」を1画面で出せることがこの台帳の実用価値です。
ステップ3:解約・失効時の処理を組み込む
解約時は「解約返戻金−資産計上残高」を雑収入(または雑損失)に計上します。台帳に解約日と返戻金額を入れると差額が自動計算される欄を設け、資産計上残高の消し忘れ(よくある誤り)を防ぎます。名義変更・払済への変更も個別論点が多いため、変更履歴のメモ欄を必ず残します。
実務の注意点・つまずきポイント
- 「節税保険」の発想はもう通用しない:現行ルールは返戻率が高いほど損金性が下がる設計です。保障目的・退職金原資目的(関連記事:No.172 役員退職金の積立計画)など、加入目的を明確にした提案が前提です
- 複数契約の30万円判定は合算:少額特例は1被保険者あたり全保険会社合算で判定します。契約が分散していると見落としがちです
- 養老保険・終身保険は別ルール:福利厚生プラン(ハーフタックス)等はこの4区分とは別の取扱いです。保険種類の判定を最初に間違えると全部誤ります
- 受取人の設定次第で給与課税:死亡保険金の受取人が特定の役員・従業員の遺族のみである場合など、保険料が給与(役員なら定期同額給与の検討要)として扱われるケースがあります。全員加入か特定者のみかの別を台帳の項目に含め、契約時に必ず確認してください
- 保険会社の経理処理案内と突合する:各社が契約ごとの経理処理例を提供しています。台帳の計算結果と毎年突合してください
- 税制改正リスク:保険税務は改正・通達変更が繰り返されてきた領域です。新規加入・出口(解約・払済)の判断時は必ず最新の取扱いを確認してください
保険契約管理台帳のご案内
本記事の設計(契約マスタ→新旧ルール自動判定→年次仕訳額の展開→解約時処理)を組み込んだ「法人保険 経理処理管理台帳Excel」を用意しています。契約情報を登録するだけで毎月・毎年の仕訳金額と資産計上残高が一覧でき、顧問先の保険契約の棚卸しにも使えます。
まとめ
- 2019年7月8日以後契約は最高解約返戻率で4区分(全額損金/40%/60%/85%超の個別計算)
- 資産計上期間(当初4割)と取崩期間(75%経過後)の期間管理が必須
- 年換算保険料30万円以下の少額特例は全保険会社合算で判定
- 旧契約は旧ルール継続。契約日でルールが分かれるため台帳管理が実務の要
- 解約時は返戻金と資産計上残高の差額処理。消し忘れに注意

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