法人を設立して登記が完了すると、達成感とともに気が緩みがちですが、本当の手続きラッシュは登記の後に始まります。税務署・都道府県・市区町村・年金事務所・(人を雇うなら)労基署とハローワーク――提出先は5系統、書類は10種類超、しかも期限バラバラ。中には期限を過ぎると数年単位で不利益が確定する届出(青色申告の承認申請など)が混ざっているのが怖いところです。
この記事では、法人設立後の届出を提出先別に整理し、設立日を入力すれば全期限が自動計算されるExcelチェックリストの作り方を解説します。期限の詳細・様式は改正されることがあるため、提出時は各機関の最新案内でご確認ください。
提出先別・届出の全体像
①税務署(国税)
- 法人設立届出書:設立から2か月以内(定款・登記事項の写し等を添付)
- 青色申告の承認申請書:設立から3か月以内と最初の事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで。失念すると初年度が白色になり欠損金の繰越に大打撃。最優先の届出
- 給与支払事務所等の開設届出書:開設から1か月以内(役員報酬を払うなら実質必須)
- 源泉所得税の納期の特例の承認申請書:常時10人未満なら。承認月の翌月支払分から適用
- (該当時)棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出、消費税関係の届出(インボイス登録申請を含む):設立時の資本金や事業計画により要否が変わる(関連記事:No.108 課税事業者判定/No.111 消費税届出書の期限管理)
②都道府県税事務所・市区町村
法人設立届(地方版)をそれぞれに提出します。期限は自治体により異なり(例:1か月以内等)、東京23区は都税事務所のみで済む等の地域差があります。登記だけでは地方には伝わらないため、忘れると均等割の通知が来ず、後でまとめて請求される事態になります。
③年金事務所(社会保険)
法人は社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務です。新規適用届は原則設立(適用事実発生)から5日以内、被保険者資格取得届・扶養の届出もあわせて提出します。役員報酬額が決まっていないと手続きが進まないため、設立直後に役員報酬を決める(期首3か月以内の決定ルールとも連動)のが段取りの要です(関連記事:No.9 役員報酬シミュレーション)。
④労働基準監督署・ハローワーク(従業員を雇う場合)
労働保険の保険関係成立届(成立から10日以内)・概算保険料申告(50日以内)、雇用保険の適用事業所設置届・資格取得届(それぞれ期限あり)。役員のみの会社では不要、1人でも雇ったら必要という切り分けです。
Excelチェックリストの作り方
ステップ1:設立日からの期限自動計算
設立日・事業年度終了日・雇用開始日(予定)を入力
青色申請期限 = MIN(EDATE(設立日,3)-1, 事業年度終了日) ※いずれか早い日の前日ベースで要確認
設立届期限 = EDATE(設立日,2)
社保新規適用 = 設立日+5
残日数とアラート = 期限-TODAY() → 14日前から黄、7日前から赤
「青色申請」の行は太字・最上段に固定し、このリストの主役であることを視覚的に示します。
ステップ2:提出先別のチェック表を作る
届出名/提出先/期限/該当判定(全社必須・雇用時のみ・選択制)/提出方法(e-Tax・eLTAX・電子申請・窓口)/添付書類/状態/控えの保存場所の8列で一覧化します。「該当」列のプルダウンで自社に関係ない行をグレーアウトできるようにすると、リストが自分専用になります。
ステップ3:設立後1年の「初めてカレンダー」を付ける
届出が終わっても、初年度は「初めての手続き」が続きます。源泉税の初回納付、労働保険の年度更新、算定基礎届、年末調整、償却資産申告、初回の決算・申告――これらを月別に並べた1年カレンダーをセットにすると、設立1年目の経理の全体像が見え、「知らなかった」の事故がなくなります(関連記事:No.30 申告期限管理表)。
実務の注意点・つまずきポイント
- 青色申請の期限だけは絶対に守る:救済がなく、初年度の赤字(設立費用で赤字になりがち)の繰越を失います。設立登記が完了したその週に出す、くらいの温度感が適切です。
- 資本金の設定と消費税・均等割の関係:資本金1,000万円以上は設立時から消費税課税、均等割も増えます。設立前の設計事項ですが、設立後でも現状の確認をリストに含めます(関連記事:No.101 法人成りシミュレーション)。
- 個人事業からの法人成りの場合:個人側の廃業届・青色取りやめ・消費税関係、資産の引継ぎ(売買・現物出資)の処理が別途必要です。法人成りチェック行をリストに追加してください。
- 電子申請の環境整備を先に:e-Tax・eLTAXの利用者識別番号取得、GビズIDの取得(社会保険の電子申請)を最初にやると、以後の全手続きが楽になります。
- 設立直後こそ経理の仕組みづくりを:届出と同時に、会計ソフトの導入・口座とカードの事業専用化・経理規程の骨格(関連記事:No.127 経理規程・マニュアルの作り方)を整えると、1期目の決算が驚くほど楽になります。
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この記事の構成(設立日からの期限自動計算→提出先別チェック表→設立後1年の初めてカレンダー)を組み込んだExcelチェックリストを販売しています。設立日を入れるだけで全期限がアラートつきで並び、該当判定で自社専用のリストになります。設立直後の方の伴走ツールとして、事務所の設立支援パッケージの一部としてお使いください。
役員報酬の決め方はこちらの記事を(関連記事:No.9 役員報酬シミュレーション)、インボイス登録の判断はこちらをご覧ください(関連記事:No.108 課税事業者判定フローチャート)。
まとめ
- 設立後の届出は税務署・地方2系統・年金事務所・労働系の5系統で整理する
- 最優先は青色申告の承認申請。失念の不利益が大きく救済がない
- 社会保険は社長1人でも加入義務。役員報酬の決定が手続きの前提になる
- 設立日入力→全期限の自動計算+該当判定で、自社専用のチェックリストにする
- 届出と同時に経理の仕組み(ソフト・口座分離・規程)を作ると1期目が楽になる

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