経理規程・経理マニュアルのテンプレートと作り方【属人化の解消】

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「経理のことは○○さんしか分からない」――中小企業で最も多い経理リスクは、不正でもミスでもなく属人化です。担当者の退職・休職で経理が止まり、引き継ぎもできず、ルールは全部その人の頭の中。この状態を解消する道具が、経理規程(ルールの明文化)と経理マニュアル(手順の文書化)です。

とはいえ、大企業の分厚い規程集を真似ても中小企業では絶対に運用できません。この記事では、小規模企業が現実に回せる規程・マニュアルの構成と、承認権限・支払ルールの決め方、Excel/Wordテンプレートとして整備する手順を解説します。

目次

基礎知識:規程とマニュアルの役割分担

まず2つの文書の違いを押さえます。

  • 経理規程:会社としてのルール(誰が承認するか・いくらまで払えるか・締め日はいつか)。変更には社長決裁が要る「憲法」
  • 経理マニュアル:作業の手順(どのソフトで・どのボタンを・どの順に)。担当者が随時更新する「手引き」

この分離が重要なのは、ルール(規程)は安定させ、手順(マニュアル)は頻繁に更新するという更新頻度の違いがあるからです。混ぜて1冊にすると、手順の変更のたびに規程改定になり、すぐ形骸化します。

小規模企業の経理規程:現実的な構成

従業員30人以下の会社なら、次の6章・A4で5〜10ページ程度が現実的です。

  • 第1章 総則:目的、会計期間、会計処理の原則(会計ソフト・税抜処理等)
  • 第2章 勘定科目と帳簿:使用する帳簿の種類、証憑の保存ルール
  • 第3章 金銭管理:口座の管理者、印鑑・カード・ネットバンキングの権限、小口現金の扱い(廃止推奨:関連記事:No.128 小口現金の廃止手順
  • 第4章 支払・承認権限:金額帯別の承認者(後述)、支払サイト、経費精算のルールと締切
  • 第5章 月次・年次決算:締め日程、棚卸、決算スケジュール
  • 第6章 改廃:規程の改定手続き

核になるのは第4章の承認権限表です。例えば「1万円未満:担当者、10万円未満:経理責任者、10万円以上:社長、新規取引先との契約:金額問わず社長」のように、金額×取引種類のマトリクスで決めます。ポイントは、社長がすべてを承認する建前にしないこと。現実に回る権限設定でなければ、規程と実態の乖離がすぐ生まれます

Excel/Wordでテンプレート化する手順

ステップ1:規程本文はWord、権限表・別表はExcelで作る

条文形式の本文はWordで、承認権限表・勘定科目一覧・年間スケジュールなどの表類はExcelで作り、規程の「別表」として参照する構成にします。変わりやすい情報(担当者名・金額基準)を別表側に寄せることで、本文を改定せずに別表の差し替えで運用できます。

ステップ2:マニュアルは「業務一覧」から作る

マニュアル作成の第一歩は手順書を書くことではなく、業務の棚卸しです。Excelで業務名/頻度(日次・月次・年次)/実施タイミング/使用ソフト/所要時間/マニュアルの有無を一覧化します。この一覧はそのまま引継書(関連記事:No.130 経理引継書の作り方)の骨格にもなります。手順書は使用頻度が高く属人性の強い業務(月次の締め、給与計算、支払処理)から優先的に書き、スクリーンショット中心・1業務1ファイルで作ると更新が続きます。

ステップ3:チェックリストで運用を確認する

運用チェック(四半期に1回):
□ 承認権限表どおりに承認されているか(サンプル10件の突合)
□ 締切ルール(経費精算・請求書提出)は守られているか
□ 別表の担当者名・金額基準は現状と一致しているか
□ 新しい業務・やめた業務が業務一覧に反映されているか

規程は作った瞬間から古くなり始めます。四半期1回・15分の運用チェックをカレンダーに入れることが、形骸化を防ぐ唯一の方法です。

実務の注意点・つまずきポイント

  • 完璧な規程より運用される規程:初版は6章構成の骨格+承認権限表だけでも十分です。運用しながら育てる前提で始めます。
  • 実態に合わないルールは直ちに改定:守られないルールを放置すると「規程は無視してよい」という文化が生まれます。守れないなら変える、が原則です。
  • 職務分掌との関係:承認と支払実行を同一人にしない等の不正防止の視点は別記事で扱います(関連記事:No.129 経理の不正を防ぐ職務分掌チェックリスト)。規程の権限表とセットで設計してください。
  • 融資・調査での副次効果:経理規程の存在は、金融機関や税務調査での管理体制の心証にプラスに働きます。
  • 税理士事務所の活用:顧問先への規程整備支援は、記帳代行から一歩踏み込んだ付加価値提案になります。テンプレートを事務所標準として持っておくと提案が軽くなります。

経理規程・マニュアルのテンプレートをご用意しています

この記事の構成(Word規程本文6章+Excel別表:承認権限表・業務一覧・運用チェックリスト)を組み込んだテンプレートセットを販売しています。会社名と金額基準を書き換えるだけで初版が完成し、別表差し替えで運用できる設計です。自社の属人化解消に、顧問先への体制整備支援ツールとしてお使いください。

まとめ

  • 規程はルール(安定)、マニュアルは手順(頻繁更新)。分離が形骸化を防ぐ第一歩
  • 小規模企業は6章・5〜10ページ+承認権限表の構成が現実的
  • 変わりやすい情報(担当者・金額基準)は別表に寄せ、本文改定なしで運用する
  • マニュアルは業務一覧の棚卸しから。高頻度・高属人性の業務から手順書化する
  • 四半期1回の運用チェックで「守られる規程」を維持する
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