非上場株式(自社株)の評価額をExcelで概算する方法【類似業種比準・純資産】

非上場株式(自社株)の評価額をExcelで概算する方法【類似業種比準・純資産】

「うちの会社の株、いくらなんですか?」――事業承継の相談は、たいていこの質問から始まります。非上場株式(自社株)には市場価格がないため、相続税・贈与税の場面では財産評価基本通達に沿って評価します。この評価額が思いのほか高く、「換金できないのに税金だけかかる」のが自社株問題の本質です。対策は評価の現状把握からしか始まりません。

この記事では、原則的評価方式(類似業種比準価額・純資産価額)の計算構造を整理し、Excelで概算評価シートを組む手順を解説します。正式な評価は多くの判断論点を伴う専門業務なので、このシートは「対策の要否を判断する入口の概算」という位置づけです。実際の申告・対策実行時の評価は必ず専門家が最新の通達・数値で行ってください。

目次

基礎知識:評価方式は「誰が・どんな会社の株を持つか」で決まる

同族株主が取得する場合は原則的評価方式、少数株主なら配当還元方式(一般に低い評価)です。原則的評価は会社規模の判定によって次のように使い分けます。

会社規模評価方法
大会社類似業種比準価額(純資産価額との選択可)
中会社類似業種比準価額と純資産価額の併用(Lの割合0.9/0.75/0.6)
小会社純資産価額(類似業種比準×0.5+純資産×0.5との選択可)

会社規模は、従業員数・総資産価額・取引金額を業種(卸売・小売サービス・その他)別の基準に当てはめて判定します。また、土地保有特定会社・株式等保有特定会社などに該当すると原則として純資産価額評価になるため、判定の順序が重要です。

2つの価額の計算構造

類似業種比準価額:業績で決まる

類似業種比準価額 = A ×((b/B + c/C + d/D)÷ 3)× 斟酌率 ×(1株当たり資本金等/50円)
A:類似業種の株価 B・C・D:類似業種の配当・利益・純資産(国税庁公表)
b・c・d:自社の1株(50円換算)当たり配当・利益・純資産
斟酌率:大会社0.7/中会社0.6/小会社0.5

ポイントは、自社の「利益」の比重が実質的に大きいこと。利益が下がる年(役員退職金の支給年など)は評価が下がるため、対策のタイミング設計に直結します。類似業種の株価等(A・B・C・D)は国税庁が公表する最新データを使います。

純資産価額:資産の含み益で決まる

純資産価額 =(相続税評価ベースの資産 − 負債 − 含み益×法人税等相当額(37%))÷ 発行済株式数

帳簿価額ではなく相続税評価額に洗い替えるのが特徴で、昔から持っている土地の含み益がそのまま評価に跳ね返ります。含み益部分には法人税等相当額の控除(37%。改正あり得るため要確認)があります。

Excelで概算評価シートを作る手順

ステップ1:会社規模の判定シートを作る

業種区分(プルダウン)、従業員数、総資産価額、取引金額を入力すると、判定基準表(マスタ化)とのIF・VLOOKUP照合で「大・中(L=0.9/0.75/0.6)・小」が自動表示される仕組みにします。従業員70人以上は無条件で大会社、という先行判定も忘れずに組み込みます。

ステップ2:比準要素の計算シートを作る

直前期・直前々期の決算書と法人税申告書から、配当(2年平均)・利益(直前期または2年平均の選択)・純資産(帳簿ベース)を1株50円換算で計算する欄を作ります。国税庁公表の類似業種データ(A・B・C・D)は入力欄にし、「公表月・業種目番号」をメモする列を添えて出典を残します。

ステップ3:純資産価額の洗い替え表を作る

貸借対照表の主要科目を縦に並べ、帳簿価額/相続税評価額/差額の3列で洗い替えます。概算段階では、土地(路線価ベース)・建物(固定資産税評価額)・保険積立金(解約返戻金相当)の3つを直すだけでも精度が大きく上がります。評価差額に対する法人税等相当額の控除、営業権の検討などは数式化しつつ、概算である旨を明記します。

ステップ4:評価額サマリーと感度分析

1株評価額(中会社) = 類似業種比準価額×L + 純資産価額×(1−L)
自社株の相続税評価総額 = 1株評価額 × 保有株式数

最後に「利益が半分になったら」「役員退職金を支給したら」の感度分析行を設けると、評価引下げ対策の効果の桁感まで見える資料になります。ここまで見えて初めて、事業承継税制や株式の移転計画の検討が始まります。

実務の注意点・つまずきポイント

  • 特定会社判定を先に:株式等保有特定会社・土地保有特定会社に該当すると類似業種比準が使えません。資産構成の確認を評価の最初に行います。
  • 比準要素ゼロの会社:配当・利益・純資産のうち2要素以上がゼロの場合は評価方法が変わります(比準要素数1の会社等)。赤字続きの会社は要注意です。
  • 直前期末基準:評価は課税時期の直前期末データが基本。決算期をまたぐと結果が変わるため、対策実行のタイミングは決算期との関係で設計します。
  • 概算と正式評価の差を説明する:営業権、医療法人等の特殊類型、種類株式などは概算シートの範囲外です。顧客に見せる際は「±○割の幅がある入口試算」と必ず添えます。
  • 通達・公表データの更新:類似業種の株価は年数回更新され、評価通達も改正されます。シートのマスタは使用時点の最新に差し替えてください。

自社株評価 概算シートをご用意しています

この記事の構成(会社規模判定→比準要素計算→純資産洗い替え→サマリーと感度分析)を組み込んだExcel概算シートを販売しています。決算書2期分の数字を入力すれば評価額の概算と対策効果の桁感が表示され、事業承継の初回面談資料としてそのまま使えます。承継提案の起点ツールをお探しの事務所におすすめです。

評価引下げの定番・役員退職金の設計はこちらの記事を(関連記事:No.57 退職金の手取り計算)、財産全体の把握はこちらをご覧ください(関連記事:No.113 財産目録の作り方)。

まとめ

  • 自社株評価は「同族株主か」「会社規模」で方式が決まり、類似業種比準と純資産価額を使い分ける
  • 類似業種比準は利益の比重が大きく、純資産価額は土地等の含み益が跳ね返る
  • Excelでは規模判定→比準要素→洗い替え→サマリーの4シート構成で概算できる
  • 特定会社判定・比準要素ゼロ会社の例外を先に確認する
  • 概算は対策要否の入口。正式評価・対策実行は必ず専門家が最新の通達・データで行う
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次