「今期は利益が出たので決算賞与を出して節税したい」――決算対策の定番ですが、決算賞与を未払計上で当期の損金にするには厳格な3要件があり、ひとつでも欠けると翌期の損金に繰り延べられてしまいます。特に多い失敗が「通知はしたが支給日が1か月を超えた」「通知額と支給額が1円でも違った」というケース。せっかくの決算対策が税務調査で否認される典型パターンです。
この記事では、決算賞与を損金算入するための3要件を整理し、通知書・支給記録をExcelで管理するチェックリストの作り方を解説します。要件は「知っている」だけでは守れません。期日と証拠を仕組みで管理することがすべてです。
決算賞与を未払計上で損金にする3要件
使用人賞与を支給日前の決算期の損金にするには、次の3要件をすべて満たす必要があります。
- 要件① 同時期支給者への個別通知:支給額を、各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して、事業年度終了の日までに通知していること
- 要件② 1か月以内の支払:通知した金額を、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全員へ支払っていること
- 要件③ 当期の損金経理:通知した事業年度で未払賞与として損金経理していること
落とし穴になりやすい論点も押さえておきます。通知額と支給額は完全一致が必要で、1人でも減額・不支給があると(就業規則等の定めにより支給日在職者に限る取扱いをしている場合など)全体の損金算入が崩れるリスクがあります。また、役員への決算賞与はこの制度の対象外です(事前確定届出給与の手続きが別途必要)。要件の詳細は適用時に国税庁の最新の取扱いをご確認ください。
Excelでチェックリスト・管理表を作る手順
ステップ1:スケジュール逆算表を作る
決算日を入力すると、各期日が自動表示される表を作ります。
通知期限 = 決算日(例:3/31)
支払期限 = EDATE(決算日,1)(例:4/30)
支払期限までの残日数 = 支払期限-TODAY()
残日数のセルに条件付き書式で「7日以内は赤」の警告を設定し、決算作業のダッシュボードに置いておきます。資金繰りの都合で支払が1日でも遅れたら全額アウトという制度なので、支払資金の確保もこの表とセットで確認します(関連記事:No.16 資金繰り表の作り方)。
ステップ2:従業員別の通知・支給管理表を作る
氏名/通知額/通知日/通知方法(書面交付・メール等)/受領確認(サイン・返信)/支給日/支給額/一致チェックの8列で全員分を管理します。
一致チェック = IF(支給額=通知額,IF(支給日<=支払期限,"OK","期限超過NG"),"金額不一致NG")
1行でもNGが出たら全体に影響し得る制度なので、COUNTIFでNG件数を数えて表の上部に「全員OK/要対応○件」のサマリーを表示させます。
ステップ3:通知書のテンプレートを連動させる
管理表から氏名と通知額を参照して、A4の賞与支給通知書(会社名・支給予定日・金額・交付日)を印刷できるシートを作ります。通知の証拠が残る形(書面に受領サイン、またはメール送信記録の保存)で交付することが、調査時の立証力を決めます。口頭通知は「言った・言わない」になるため避けるべきです。
ステップ4:仕訳と申告への反映を確認する
決算時 :賞与 ×××× / 未払金 ××××
支給時 :未払金 ×××× / 預金・預り金(源泉・社保) ××××
なお、決算賞与に係る社会保険料の会社負担分は、原則として支給日(翌期)の属する期の損金になる点も混同しやすいポイントです。当期に落ちるのは賞与本体のみ、と覚えておきます。
実務の注意点・つまずきポイント
- 「支給日在職者のみ支給」の規程に注意:この定めがあると通知日から支給日までの退職者に支給しないことになり、要件①の趣旨に反して否認される考え方が示されています。決算賞与に限っては退職者にも通知どおり支給する運用が安全です。
- 資金が足りないなら無理をしない:1か月以内に全額支払えないなら、未払計上を諦めて支給期に損金化する方が傷は浅くなります。
- 節税効果と資金流出のバランス:賞与は税率分しか税金が減らない一方、現金は全額出ていきます。「税金を減らすために現金を減らす」構図の説明を経営者に必ず添えます。
- 源泉徴収と社会保険の手続き:賞与支払届の提出(支給後5日以内)と源泉徴収を忘れずに。管理表に手続き完了のチェック列を足しておきます。
- 従業員のモチベーション設計:節税「だけ」が目的の賞与は金額根拠が説明しづらくなります。業績連動の支給基準をあらかじめ持っておくと、金額の妥当性も従業員への説明も安定します。
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この記事の構成(期日逆算→従業員別の通知・支給管理→通知書の自動作成→手続きチェック)を組み込んだExcelチェックリストを販売しています。決算日を入れれば期日が自動計算され、全員分の通知・支給の一致確認がNG件数サマリーつきで管理できます。決算対策の実行管理ツールとして、事務所の顧問先指導用としてお使いください。
そのほかの決算対策は未払費用の総点検(関連記事:No.107 未払費用・未払金の計上漏れチェック)、短期前払費用(関連記事:No.65 短期前払費用の特例)もあわせてご覧ください。役員向けは事前確定届出給与の記事へ(関連記事:No.61 事前確定届出給与)。
まとめ
- 決算賞与の未払損金算入は「全員への個別通知・1か月以内支払・損金経理」の3要件すべてが必要
- 通知額と支給額は完全一致、支払期限は1日の遅れも許されない
- 役員賞与は対象外(事前確定届出給与の別手続き)
- 社会保険料の会社負担分は翌期の損金。当期に落ちるのは賞与本体のみ
- 期日逆算表と従業員別管理表で「知っている」を「守れる」に変える

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