決算書では黒字なのに、口座の残高は心もとない——多くの社長が一度はぶつかる違和感です。
結論:利益は「発生」のルールで計算され、現金は「入出金」のタイミングで動くため、両者は一致しないのが正常です。ズレの正体は主に5つ。これを知っていれば「黒字なのに資金難」を事前に防げます。
目次
ズレの正体5つ
① 売掛金:売上は立ったが、入金はまだ
3月に100万円の仕事を納品すれば、3月の売上・利益になります。しかし入金が5月なら、2か月間は「利益はあるが現金はない」状態です。売上が伸びている会社ほど売掛金が膨らみ、現金が後から追いかける形になります。
② 在庫:払ったのに、費用になっていない
商品を仕入れた時点で現金は出ていきますが、費用(売上原価)になるのは売れたときです。在庫が積み上がるほど「現金は減ったのに利益は減らない」方向にズレます。
③ 借入返済:出ていくのに、費用にならない
借入金の元本返済は費用になりません(利息部分だけが費用)。月10万円返済していても、損益計算書にはほぼ現れず、現金だけが確実に減っていきます。黒字なのに苦しい会社の定番要因です。
④ 納税:利益の後から、まとめて来る
法人税等・消費税は、利益が確定した決算の約2か月後にまとめて納付します。利益が出た期ほど、翌期のはじめに大きな出金が待っています(納税資金の考え方)。
⑤ 減価償却:費用なのに、現金は出ていかない
唯一逆方向のズレです。設備を買った年に現金は出ていき、費用は数年に分けて計上されます。償却が進んでいる期は「利益は少なく見えるが現金は減っていない」状態になります。
「黒字倒産」はこうして起きる
典型パターンはこうです。
- 大口受注で売上・利益が急増(ただし入金は3か月後)
- 仕入・外注費の支払いが先に来る
- 前期の利益に対する納税が重なる
- 利益は出ているのに支払いに必要な現金が足りない
会社を止めるのは赤字ではなく現金不足です。損益計算書は「稼ぐ力」を、資金繰り表は「生き残る力」を示す——両方を見る必要があります。
対策:3つの習慣
- 資金繰り表を月1回更新する:入出金ベースで6か月先まで見る(作り方は)
- 月次で「利益と現金の差」を確認する:今月の利益と現金増減を並べ、大きくズレた月は上の5要因のどれかを特定する
- 入金サイトと支払サイトを意識する:請求を早く・回収サイトを短く・支払いは契約の範囲で標準的に。新規取引の条件交渉で決まる部分が大きい
毎月のチェック項目に落とし込んだものは一人会社が毎月見るべき数字5つにまとめています。
まとめ
- 利益と現金がズレるのは異常ではなく、会計の仕組み上当然
- ズレの5大要因:売掛金・在庫・借入元本返済・納税・減価償却
- 会社を止めるのは赤字ではなく現金不足。黒字でも倒産は起きる
- 損益(会計ソフト)と資金繰り表の両輪で経営を見る
