取引先から届く請求書はPDF、レシートは紙、銀行の明細もPDF――そのたびに数字を手打ちしていないでしょうか。転記は時間を奪うだけでなく、打ち間違いという品質リスクの発生源です。実は今のExcelには、PDFや画像から表データを取り込む機能が標準で備わっています。
この記事では、Power QueryによるPDF取込と「画像からのデータ」機能の使い方、精度の限界、そして実務で必須の検品手順までを解説します。
方法①:Power QueryでPDFの表を取り込む
「データ」タブ→「データの取得」→「ファイルから」→「PDFから」を選ぶと、PDF内の表・ページが一覧表示され、プレビューを見ながら取り込む表を選べます。取り込み後はPower Queryエディタで不要行の削除・列名の設定・型変換ができ、同じレイアウトのPDFなら「更新」ボタンひとつで再取込できます。
- 向いている資料:データから生成されたPDF(銀行明細・販売システムの帳票・請求書データ等)。文字情報を持っているため精度が高い
- 向いていない資料:紙をスキャンしたPDF(実体は画像)。この場合は方法②か、OCR処理を挟む必要があります
毎月届く同形式のPDF明細は、Power Queryの整形手順を一度作れば毎月の取込が数秒になります(Power Queryの基礎は関連記事:No.98 Power Queryによる経理自動化)。
方法②:「画像からのデータ」で紙・スクショを取り込む
「データ」タブ→「画像から」→「ファイルからの画像」(またはクリップボードの画像)を選ぶと、画像内の表をOCRで認識してプレビューが表示されます。認識に自信のないセルは確認を促され、修正してから挿入できます。スマホのExcelアプリでは、カメラで紙の表を直接撮影して取り込むことも可能です。
精度を上げる撮影・画像のコツは次のとおりです。
- 真上から、影を作らず、表全体を大きく写す(斜め・湾曲は精度が大きく落ちる)
- 罫線がはっきりした表ほど列の分離精度が高い
- 手書き文字は原則期待しない(活字前提の機能です)
実務で必須の「検品」手順
OCR系の取込は「9割正しい」が前提です。1割の誤りを見つける検品をセットにしなければ、手打ちより危険になります。経理データの検品は次の3点で機械化します。
①合計突合 =IF(SUM(取込金額範囲)=原本の合計金額,"OK","差異あり!")
②件数突合 =IF(COUNTA(取込範囲)=原本の明細行数,"OK","行数不一致")
③型チェック =IF(COUNT(金額範囲)<COUNTA(金額範囲),"数値でないセルあり","OK")
OCRの誤認識は「1↔7」「0↔8」「,の位置」に集中するため、合計が合えば個々の数字もほぼ合っていると推定できます(合計の記載がない資料は電卓での原本合計を先に作ります)。日付・取引先名の誤りは並べ替えとフィルタで異常値を拾います(重複チェックは関連記事:No.196 COUNTIFの重複検出)。
使い分けの整理
| 資料 | 推奨方法 | 備考 |
|---|---|---|
| データ生成のPDF(明細・帳票) | Power Query | 毎月同形式なら「更新」で自動化 |
| スキャンPDF・紙・スクショ | 画像からのデータ | 検品必須。量が多いなら専用OCRソフトも検討 |
| 大量のレシート・領収書 | 会計ソフトのAI-OCR/スキャン機能 | 仕訳連携まで考えるとソフト側が有利 |
| CSVでもらえるもの | そもそもCSVでもらう | 最優先。取引先・銀行にデータ提供を依頼(関連記事:No.43 CSVの会計ソフト取込) |
実務の注意点・つまずきポイント
- 最善は「取り込まない」こと:紙やPDFをOCRする前に、データ(CSV・API連携)でもらえないか交渉するのが最も確実で速い改善です
- 機密資料のクラウド処理に注意:画像からのデータ取込はオンライン処理を伴う場合があります。マイナンバー等の高機密資料への使用は社内ルールを確認してください(関連記事:No.190 個人情報を含むExcelの安全な取扱い)
- 取り込んだPDFデータの保存要件:電子で受領した請求書PDFは、取込後も元のPDF自体を電子取引データとして保存する必要があります(関連記事:No.176 電子取引の事務処理規程)
- レイアウト変更で崩れる前提で組む:Power Queryの取込は相手のPDFレイアウト変更で壊れます。月初の取込時に検品3点セットを必ず通す運用にします
- 結合セル・小計行の混在は事前に整理:取り込み後の整形はPower Queryエディタで行い、手作業の整形を残さないのが再現性の鍵です
取込・整形の関連テンプレートのご案内
取込後のデータを仕訳形式に整えるための「仕訳整形テクニック集」(関連記事:No.36 仕訳整形テクニック)、検品の仕組みを組み込んだ各種管理表テンプレートを用意しています。転記ゼロ・検品ありの経理フローづくりにお役立てください。
まとめ
- データ生成PDFはPower Query、紙・スキャンは「画像からのデータ」と使い分ける
- 毎月同形式のPDFはPower Queryで「更新ボタン1つ」の取込に自動化できる
- OCR取込は検品(合計・件数・型の3点突合)とセットで初めて実用になる
- 最善は取り込まないこと。CSV・データ連携での受領を最優先で交渉する
- 取込後も元PDFの電子取引データ保存が必要。機密資料の処理ルールにも注意

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