役員報酬を決めるとき、必ずセットで効いてくるのが社会保険料です。報酬の額面だけ見て決めると、「思ったより手元に残らない」「会社の負担が重い」となりがちです。
この記事では、役員報酬と社会保険料がどうつながっているのか、標準報酬月額と料率の仕組みを、令和8年度(2026年度)の数値と具体例で整理します。
本記事は一般的な解説であり、個別の判断を保証するものではありません。料率や等級は改定されるため、実際の手続きは最新の保険料額表や顧問税理士・社労士にご確認ください。
社会保険料は「標準報酬月額 × 料率」で決まる
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、実際の報酬そのものではなく、報酬を区切りのよいランクに当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて計算します。
社会保険料 = 標準報酬月額 × 料率
(健康保険料・厚生年金保険料は、会社と本人で半分ずつ負担)
報酬月額が多少前後しても、同じ等級の範囲内なら保険料は同じです。逆に、報酬が等級の境目をまたぐと保険料が変わります。
標準報酬月額の「等級」とは
標準報酬月額は、報酬月額に応じて等級に区分されています。たとえば報酬月額が29万円以上31万円未満なら、標準報酬月額は「30万円」として扱われます。
等級には上限があり、それを超える高額報酬は保険料が頭打ちになります。
- 厚生年金:上限の標準報酬月額が設けられており、それ以上報酬を上げても厚生年金保険料は増えません。
- 健康保険:厚生年金より上限が高く、より高額まで保険料が増えていきます。
つまり、報酬が一定額を超えると、増えた報酬に対して社会保険料の伸びは緩やかになるという性質があります(この点は手取りの記事で詳しく扱います)。
令和8年度の料率の目安
社会保険料の料率は毎年見直されます。令和8年度(2026年度)のおおよその料率は次のとおりです。
| 項目 | 料率 | 負担 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 全国平均 9.9% | 会社・本人で折半(各約4.95%) |
| 介護保険(40〜64歳) | 全国一律 1.62% | 会社・本人で折半(各0.81%) |
| 厚生年金 | 18.3% | 会社・本人で折半(各9.15%) |
健康保険料率は都道府県ごとに異なります(協会けんぽの場合)。上の9.9%は全国平均で、実際は加入する都道府県の料率を使います。厚生年金は全国一律18.3%で固定されています。
なお、雇用保険は原則として役員(使用人兼務役員を除く)は対象外です。一人会社の社長自身には、通常かかりません。
具体例:報酬月額30万円の社会保険料
報酬月額30万円(標準報酬月額30万円)の役員を例に、本人・会社それぞれの月額負担を計算します。協会けんぽ・全国平均料率で計算します。
40歳未満の場合(介護保険なし)
健康保険 300,000 × 9.9% ÷ 2 = 14,850円
厚生年金 300,000 × 18.3% ÷ 2 = 27,450円
─────────────────────────────
本人負担(月) = 42,300円
会社負担(月)も同額 = 42,300円
会社+本人の合計(月) = 84,600円
40〜64歳の場合(介護保険あり)
介護保険 300,000 × 1.62% ÷ 2 = 2,430円 を上記に加算
─────────────────────────────
本人負担(月) = 44,730円
会社+本人の合計(月) = 89,460円
年額にすると、40歳未満でも会社+本人で年間約101万円(84,600円×12)。報酬月額30万円(年360万円)に対して、これだけの社会保険料がかかる計算です。報酬を額面だけで考えてはいけない理由がここにあります。
保険料はいつ決まり、いつ変わるか
- 入社(資格取得)時:そのときの報酬で標準報酬月額が決まります。
- 定時決定(算定基礎届):毎年、原則4〜6月の報酬の平均で標準報酬月額を見直し、その年の9月分から適用されます。
- 随時改定(月額変更届):報酬が大きく変わり、標準報酬月額が2等級以上動いたときは、年の途中でも見直します。
役員報酬を期首に変更した場合、この随時改定で社会保険料も変わる点に注意が必要です。
一人会社で報酬を決めるときの注意
- 報酬を上げると、会社負担の社会保険料も同じだけ増える。実質的なコストは額面以上。
- 等級の境目をまたぐと保険料が変わるため、境界付近では数千円の差で負担が変わることもある。
- 厚生年金には上限があり、高報酬では保険料の伸びが鈍る一方、将来の年金額も上限で頭打ちになる。
- 健康保険料率は都道府県で違うため、自分の加入先の料率で計算する。
まとめ
- 社会保険料は「標準報酬月額 × 料率」で決まり、会社と本人で折半する。
- 報酬は等級に区分され、厚生年金は上限があるため高報酬では保険料の伸びが緩やかになる。
- 令和8年度の目安は、健康保険9.9%(全国平均)・介護1.62%・厚生年金18.3%。
- 報酬月額30万円なら、会社+本人で年間約100万円の社会保険料がかかる。
報酬の額面から社会保険料がいくらになるかは、等級表と料率を毎回確認する必要があり手間です。報酬を入力すれば標準報酬月額・保険料・手取りまで自動で出る仕組みにしておくと、報酬設計のたびに計算する負担がなくなります。
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参考(一次情報)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)令和8年度 保険料額表(都道府県別)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」「標準報酬月額・標準賞与額」
- 厚生労働省 雇用保険料率について(令和8年度)
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