発注書・注文請書のExcelテンプレートと下請法の記載事項

発注書・注文請書のExcelテンプレートと下請法の記載事項

発注書は「とりあえず品名と金額が書いてあればいい」と思われがちですが、取適法(旧下請法)の対象取引に当たる発注では話が別です。法律上、必要記載事項を満たした書面(3条書面)の交付が義務であり、記載漏れ自体が法違反として勧告・公表の対象になり得ます。令和7年改正で下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」へと変わり、2026年1月以降は新しい対象範囲・用語で確認する必要があります。

この記事では、必要記載事項を満たす発注書・注文請書のExcelテンプレート設計と、取引条件を管理台帳で一元管理する方法を解説します。

目次

取適法(旧下請法)の基本

まず自社の取引が対象かを確認する

対象になるかは「取引の類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託など)」と「両者の資本金区分(改正で従業員数基準も追加)」の組合せで決まります。自社が発注側(親事業者・委託事業者)に該当するなら、書面交付義務をはじめとする義務と禁止行為が適用されます。該当判定の基準は改正で変わっているため、公正取引委員会・中小企業庁の最新資料で確認してください。

発注書(3条書面)の必要記載事項

  • ①発注者・受注者の名称 ②委託した日 ③給付の内容(品目・仕様を特定できる程度に具体的に)
  • ④給付を受領する期日 ⑤受領する場所 ⑥検査を完了する期日(検査する場合)
  • 下請代金の額(算定方法による記載も可) ⑧支払期日(受領日から60日以内) ⑨支払方法
  • ⑩原材料等を有償支給する場合の内容・対価 など

特に重要なのが⑧です。支払期日は給付の受領日から起算して60日以内で定める必要があり、「月末締め翌々月末払い」は締め日と受領日の関係次第で60日を超えるおそれがあります。また2026年1月以降の取適法では、手形払等の禁止など改正項目の反映が必要です。施行後の最新資料に合わせて、支払方法・対象取引・従業員数基準を更新してください。

Excelテンプレートの設計

ステップ1:記載事項を「埋めないと完成しない」レイアウトにする

必要記載事項をすべて固定欄として配置し、空欄チェックの数式を入れます。

発行前チェック:
=IF(COUNTBLANK(必須項目範囲)>0,"未記入の必須項目があります","発行OK")
支払期日チェック:
=IF(支払期日>受領期日+60,"受領日から60日超(要修正)","OK")

「支払期日が受領日+60日以内か」を数式で機械チェックできるのがExcel化の最大の利点です。締め払いの場合は最も遅い受領日を基準に検算します。

ステップ2:取引条件マスタと連動させる

受注者ごとの支払条件・検査条件は取引条件マスタに登録し、発注書には取引先を選ぶだけで自動転記します。案件ごとに手入力すると、担当者によって支払サイトが揺れて60日超過が紛れ込みます。マスタ側で一度だけ適法性をチェックしておけば、以後の発注書は自動的に適法になります。

ステップ3:注文請書と発注台帳

  • 注文請書:発注書と同じ案件データを参照して自動生成(受注者の押印・署名欄を追加)。請書の徴取自体は義務ではありませんが、受発注の合意記録として有効です
  • 発注台帳:発注番号・発注日・受領予定日・支払期日・支払状況を一覧化し、支払遅延アラート =IF(TODAY()>支払期日,”遅延”,””) を設定。支払遅延は代金減額と並ぶ典型違反のため、台帳での期日管理が実効的な予防策になります

数値例:「月末締め翌々月5日払い」は違反か

受領日支払日経過日数判定
4月1日受領(4月末締め)6月5日65日60日超・違反リスク
4月30日受領(4月末締め)6月5日36日適法
同じ支払条件でも受領日によって違反になる例

締め払いの適法性は「月初に受領したケース」で判定するのが安全です。翌々月払いの条件は原則アウトと考え、遅くとも翌月末払いに設計し直す必要があります。この判定表をマスタに組み込んでおけば、条件設定の段階で違反を防げます。

実務の注意点・つまずきポイント

  • 「給付の内容」は仕様が特定できる粒度で:「デザイン一式」のような曖昧な記載は、やり直し(不当な給付内容の変更)トラブルの温床です。仕様書番号の引用でも構いません。
  • 金額を「算定方法」で書く場合はルールを明確に:単価×実数量方式の場合、単価と算定方法を書面で特定します。優越的な立場を背景にした一方的な単価引下げは、減額・買いたたきの問題になります。
  • メール・電子データでの交付も可能:受注者の承諾など一定の要件のもとで電子交付が認められます。電子交付した発注書の控えは電帳法の保存対象です。(関連記事:No.66 電子帳簿保存法の索引簿
  • 書類の保存義務は2年:発注書の控えと取引記録(5条書類)は2年間の保存義務があります。発注台帳とPDF控えをセットで保存してください。
  • 改正の適用時期・対象拡大を確認:取適法への改正で従業員数基準・手形禁止・対象取引の拡大などが行われています。テンプレートの条件チェックは最新の公取委資料と突き合わせて更新してください。

よくある質問

Q. 自社は資本金1,000万円ですが対象になりますか?

資本金区分は取引類型ごとに異なり、改正で従業員数基準も加わったため、「自社の資本金・従業員数」と「相手の規模」の組合せで個別に判定する必要があります。判定フローをExcel化しておくと、新規外注先が増えるたびに迷わず確認できます。

Q. 対象外の取引なら発注書は不要ですか?

法的義務はなくても、受発注条件の記録として発注書を出す実益は変わりません。フリーランスへの発注では、フリーランス取引適正化法により取引条件の明示義務が別途あります。外注管理全体の整理は外注費の判定記事もあわせてどうぞ。(関連記事:No.56 外注費と給与の判定チェックリスト

発注書テンプレートのご案内

必要記載事項の空欄チェック・支払期日60日ルールの自動検算・取引条件マスタ連動・発注台帳と支払遅延アラートまで組み込んだ発注書・注文請書Excelテンプレートをご用意しています。法改正時はマスタの差し替えで対応できる設計です。

まとめ

  • 取適法(旧下請法)の対象取引に当たる発注では、必要記載事項を満たす書面の交付が法律上の義務
  • 支払期日は受領日から60日以内。締め払い条件は月初受領のケースで適法性を判定する
  • Excelなら空欄チェックと60日ルールの検算を自動化し、記載漏れ・条件違反を発行前に止められる
  • 取引条件はマスタで一元管理し、発注台帳で支払遅延を監視する
  • 2026年1月以降は取適法として対象範囲・手形払等禁止・従業員数基準を最新の公取委・中企庁資料で確認する
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