小規模法人の資金繰り表の作り方|Excelで作る基本フォーマットと手順

「利益は出ているのに、なぜか口座のお金が増えない」——その正体は、利益(損益)と現金(資金)のズレです。このズレを見える化するのが資金繰り表です。

資金繰り表は、これから数か月の間にお金がいつ・いくら入って、いくら出ていくかを一覧にしたものです。小規模法人や一人会社こそ、これがあると安心できます。この記事では、Excelで作れる基本フォーマットと手順を解説します。

本記事は一般的な解説です。具体的な経理処理・税務判断は顧問税理士等にご確認ください。

目次

資金繰り表と損益計算書(P/L)の違い

両者は似ているようで、見ているものが違います。

損益計算書(P/L) 資金繰り表
見るもの 儲け(利益) お金の出入り(現金)
計上のタイミング 売上・費用が発生した時点 お金が動いた時点
売上を計上(未入金でも計上) 入金された月に計上

たとえば「3月に売上を計上したが、入金は5月」という場合、P/Lでは3月の売上ですが、資金繰り表では5月の収入です。黒字でも資金がショートするのは、このズレが原因です。だから利益とは別に、現金の動きを追う必要があります。

資金繰り表の基本構造

資金繰り表の骨格は、とてもシンプルです。

前月繰越(月初の現預金)
  + 収入
  − 支出
─────────────
= 翌月繰越(月末の現預金)  ← これが翌月の「前月繰越」になる

これを月ごとに横に並べていきます。収入・支出は、性質ごとに次のように分けると見やすくなります。

  • 経常収支:本業のお金の出入り(売上入金、仕入・経費・役員報酬・社会保険料の支払いなど)
  • 経常外収支:本業以外(固定資産の購入・売却、税金の納付など)
  • 財務収支:資金調達まわり(借入の入金、借入金の返済など)

作り方の手順(Excel)

1. 縦に項目、横に月を並べる

いちばん左の列に項目(前月繰越/収入/支出/翌月繰越)を置き、上の行に「○月・○月・○月…」と月を並べます。まずは今後3〜6か月を作れば十分です。

2. 収入の項目を埋める

  • 売上の入金予定(売掛金がいつ入るか。売上計上月ではなく入金月に入れる)
  • 借入金の入金、その他の入金

3. 支出の項目を埋める

  • 仕入・外注費(支払予定月に)
  • 固定費(家賃・通信・サブスクなど)
  • 役員報酬(毎月固定)
  • 社会保険料(会社負担+本人負担。報酬に対し会社+本人で約30%が目安)
  • 税金(法人税・消費税・源泉所得税などは、支払う月にまとめて入れる)
  • 借入金の返済(元本+利息)

4. 繰越を計算する

「前月繰越 + 収入 − 支出 = 翌月繰越」を各月で計算し、翌月繰越を次の月の前月繰越に引き継ぎます。Excelなら数式で自動連動させると、どこか1つ数字を直すだけで先の月まで再計算されます。

5. 残高の推移を確認する

各月の「翌月繰越(月末残高)」がマイナスや危険水準に近づく月がないかを見ます。ここが資金繰り表のいちばんの目的です。

具体例:3か月の資金繰り表

数値は説明用です。

                    7月        8月        9月
前月繰越          1,800,000  1,715,000  1,310,000
─────────────────────────────────────────
[収入]
 売上入金           700,000    600,000    800,000
[支出]
 仕入・外注         150,000    150,000    150,000
 固定費             250,000    250,000    250,000
 役員報酬           300,000    300,000    300,000
 社会保険料          85,000     85,000     85,000
 法人税                  0    220,000          0
─────────────────────────────────────────
翌月繰越          1,715,000  1,310,000  1,325,000

この表を見れば、「8月に法人税22万円の支払いがあり残高が一段下がる」ことが事前に分かります。分かっていれば、7月までに入金を前倒しする・支出を抑えるなどの手が打てます。

作るときの注意点

  • 入金は「売上月」でなく「入金月」に入れる。ここを間違えると資金繰り表の意味がなくなります。
  • 後から来る支払いを忘れない。法人税・消費税・源泉所得税、社会保険料、賞与、借入返済など、毎月ではない大きな支出を月に落とし込む。
  • 予測は保守的に。入金は遅め・少なめ、支出は早め・多めに見ておくと安全側に倒れます。
  • 実績との差を毎月見直す。予測と実績を比べ、ズレた理由を次の予測に反映すると精度が上がります。

毎月の数字確認とあわせて運用すると効果的です(「一人会社が毎月確認すべき数字」)。

まとめ

  • 資金繰り表は、現金の出入りを月ごとに並べて、月末残高の推移を見るための表。
  • 構造は「前月繰越+収入−支出=翌月繰越」とシンプル。Excelで数式連動させると楽。
  • ポイントは、入金は入金月に入れることと、後から来る大きな支払い(納税・社保・賞与・返済)を忘れないこと。
  • 予測は保守的に置き、毎月、実績と比べて見直す。

役員報酬・社会保険料・税は、資金繰り表のなかでも見落としやすい固定的な支出です。これらの金額を正確に出しておくと、資金繰り表の精度がぐっと上がります。


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参考

  • 日本政策金融公庫「資金繰り表」様式・記入例
  • 中小企業庁 中小企業向け 財務・資金繰り関連資料
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